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飛行機らしきもの

栗山町の日出ひのでクラシックパークに展示されている「カルマンギア」のことを少し前に紹介しました。

その敷地内に、こんな骨組みが野ざらしになっていました。


▲ 超軽量動力機

一見、ウルトラライト とか マイクロライト と言われる超軽量動力機のようです。

エンジンが吊り下がっていて、その軸は2枚プロペラにつながっています。燃料タンクやマフラーも見えます。

座席が横並びに2つ、その間に操縦桿が出ています。右席の足元には、冒頭写真の計器パネルが固定されています。右は高度計、左は速度計でしょう。まん中はエンジン計器かもしれません。


▲ エンジン周辺(一部画像処理)

よく見ると、靴と靴下が干されたまま。まぁ、それは気にしないことにして…。

この機種は何だろう?

点火プラグコードが2本、下の方に見えているので、2気筒エンジンです。始動用の(リコイル)スターターハンドルが付いています。袋が被されているのはキャブレターでしょう。シングルキャブのようで、そこからエンジン内部に水や埃が入らないよう保護されています。赤く錆びた筒状のものは、排気マフラーです。

エンジンからドライブシャフトが後方に伸び、ベルトを介して回転数を落として木製プロペラを回します。

銘板が貼ってあるので拡大して見ると…

▲ エンジン(一部画像処理)


Eipper aircraft inc.
Model MX II

とあります。これで検索してみると…、出てきました。「Quicksilver MX II」。クイックシルバー機だったんですね。超軽量動力機ではかなりの有名どころ。「Eipper」とは、Dick Eipper氏の名前なのだそうです。

登録番号もはっきり読み取れ、「JR-XXXX」(Xは数字)です。国土交通省のwebサイトには、「航空局に登録されている機体のうち、機体の所有者若しくは管理者の氏名又は住所が不明となっている機体の一覧」というのが掲載されており、その中にこのJR番号も入っていました。この機体は、変更登録や抹消登録の手続きが行われていないようです。

その一覧の機数がやたらと多いので、数えてみたところ、

・舵面操縦型の超軽量動力機:388機
・体重移動型の超軽量動力機:104機
・パラシュート型の超軽量動力機:59機
・ジャイロプレーン:46機
・自作航空機:24機

が「所有者若しくは管理者の氏名又は住所が不明となっている機体」です。必要な手続きを知らないのか、知っていても手続きしないのか、この登録の仕組みはほとんど機能していないようです。

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Quicksilver MX(マニュアルの図より)

さて、「クイックシルバーMX」って、こんな機体です。「ASSEMBLY AND PARTS MANUAL」の図から、一部を切り出して加工しました。

エレベーターとラダーがありますので、ピッチとヨーの制御ができます。主翼にエルロンは付いていませんがスポイラーがあるのでロール制御は可能です。この「Quicksilver MX」を2人乗りにした機体が「MX II」です。

エンジンは、ネットに掲載されている写真や図と見比べてみると、ROTAX 503 のようです。ロータックスはオーストリア製のエンジンで、超軽量動力機によく使われています。空冷2ストロークの2気筒、排気量は500ccで シングルキャブレターの場合は 46馬力(6500rpm)の出力です。

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クイックシルバー(quicksilver)って どんな意味かと思ったら、水銀(Mercury, Hg)のことなんですね。知りませんでした。水銀は、常温で液体という唯一の金属です。クイックシルバーという言葉には、自由に姿を変えてどこへでも素早く飛んでいける…みたいなイメージがあるのでしょうか?


Eipper Quicksilver MX IIWikimedia Commons


※ 特記のない写真は、2023年7月、やぶ悟空撮影


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