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背中のブレーキ

航空自衛隊千歳基地に着陸するF-15戦闘機。背面にあるスピードブレーキが開いています。

F-15J Eagle、68-8874

スピードブレーキ、または エアブレーキなどと言われ、開くと抗力(空気抵抗)が増して航空機は減速します。


▲ F-15 Speedbrake(Wikimedia Commonsの図を使用)

スピードブレーキは、F-15の背中のこの場所にあります。

オリジナルのスピードブレーキは、約2平方メートルの面積で最大35°まで開くものでした(写真とは異なる)。しかし、それでは減速に十分な抗力が得られなかったため、面積を約3平方メートルに、展開角を最大45°にそれぞれ拡大して今の形態になっています。

F-15を撮影していて、同じ形でも異なるスピードブレーキの種類があることに気付きました。

▲ 複合材(ハニカム構造)のスピードブレーキ

ひとつは裏面がスッキリしているこれ。アルミ合金のハニカム構造で表面はグラファイト/エポキシの複合材なのだと(Graphite-epoxy skin with aluminum honeycomb core)。

▲ リブ構造のスピードブレーキ

ほかに、裏面がリブ構造のタイプ。リブ(小骨)がある方が丈夫そうです。もう少しだけ後ろ側から見たのが次の写真。

▲ リブ構造

軽量で強度の高い炭素繊維複合材を軍用機に初めて本格的に採用したのが F-15のスピードブレーキなのだそうです。

驚いたのは、どんな速度でも(つまり超音速でも)開くことができるということ(can be deployed at any speed, including supersonic)。それってすごいな! エアブレーキを展開したとき後ろ側に発生する渦が垂直尾翼に悪影響を与えそうだけど、高速でも大丈夫なのかな?

ネットで見つけた情報によると、2005年に2件、F-15のスピードブレーキの損傷があったようです。1件目は整備後の試験飛行でスピードブレーキの一部が破断。もう1件はその数週間後、スピードブレーキに複数の亀裂が入ったという事例でした。

そんなことがあって、ここからは私の想像ですが、リブ構造のスピードブレーキに改修されているのではないかと思います。着陸時の使用だけなら比較的速度が遅いため、複合材の強度で問題ないはず。短期間に全機を改修する必要性は薄いと考え、いまだに未改修機が残っているのかなと…。


▲ 複座の F-15DJ、12-8074

ここからは、スピードブレーキとは別の話。

現在、F-15J/DJは日本で約200機運用されているそうです。長年使用されているF-15戦闘機ですから、後期生産機に対してはこれまで近代化改修を行ってきました。その改修を終えた単座のF-15Jのうち68機に、新たに「能力向上」改修を実施することが発表(2022年2月4日、防衛装備庁)されました。そのほかのF-15J/DJは、ステルス戦闘機F-35A/Bに置き換えられる計画のようです。

▲ 千歳基地に着陸する F-15J

いつか戦闘機が不要になる未来を想像しようとしても、そのような世界を思い浮かべることすらできない今日この頃。歪んだ野心にもブレーキを。


※ 写真はすべて千歳基地周辺で、やぶ悟空撮影

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