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PPP的関心【まちづくり=不動産ビジネス。横浜市大・研究会RAYARD MIYASHITA PARK視察】

このPPP的関心でも過去に「公園」を取り上げたことが何度かあります。
今回はメンバーとして参加させてもらっている横浜市立大学のPPP公的不動産マネジメントによるまちづくり研究会の2022年度活動の一環として、PPP手法で再整備された公園をPPPの民間側事業社である三井不動産のご担当部署の方にご案内いただきながら公園を訪問しました。
本日の記事は視察時の備忘録的に。*写真は公園の様子(矢部撮影)

今更ですが…宮下公園とは

渋谷区立宮下公園は昭和初期に整備され、その後1964年東京オリンピックを契機とした道路整備事業の一環として立体公園(駐車場+空中公園)に整備され、さらにその後2000年前後にはスポーツ公園として再整備されました。
しかし、基本的な構造は”前の”東京オリンピックに整備されたものであって老朽化は顕在化した課題となっていました。それに加え東日本大震災を契機とした都市部の一時避難(滞留)空間整備の必要性や公園施設としてバリアフリー化の要望、さらには渋谷駅周辺地域全域に及ぶ再開発プロジェクトが進展したことが相まって、宮下公園のいわば再々整備事業としての再開発が始まりました。

PPP手法による都市公園の再整備

新・宮下公園の再整備にあたってはPPP(公民連携)手法が取られました(参照:宮下公園等整備事業に関する公募型プロポーザル実施要項概要 及び渋谷区・三井不動産によるグランドオープン時リリース)。

宮下公園の土地を定期借権契約を締結して渋谷区が事業者に貸し、その上に商業施設と屋上を公園とする一体の建物を民間が公園と駐車場の再整備と商業施設を一体で建築(立体都市公園制度による*注)、完成後の建物所有は渋谷区と事業者を区分所有権利者としていて、いわば公民合築型共有建物を整備した公民連携です。ちなみに、区分所有建物の屋上に位置する「公園」は、専用使用権(→敷地や建物の共用部分の一部について「特定の区分所有者のみ」が使用できる権利)が設定され、渋谷区が運営(実際の運営は指定管理制度による民間委託)する形式となっています。

*注)立体都市公園制度 (リンク174P参照)
主な対象施設:既存都市公園の地下、建物の屋上、人工地盤上が対象
概要:適正かつ合理的な土地利用を図る上で必要がある場合には、都市公園の下部空間に都市公園法の制限が及ばないことを可能とし、都市公園の区域を立体的に定めることができる制度

印象に残ったこと。PPP⊇PFI

まずは、PPP手法による整備という選択は、行政が公園施設の更新を目的としてPFIによるハード整備事業施策あるいはPark-PFIによる賑わい創出施策に偏らずに、宮下公園が地域に果たす機能や役割を「総合的に」刷新するための選択だったのではないか、という点が印象に残りました。
*今回は事業者さんからのレクだけで渋谷区に直接話を聞けていませんが、要項を見ても都市公園としての機能装備と施設更新と賑わい創出とを総合的に期待している点でもそのように考えられそうです。

繰り返しになりますが、行政「目的」として老朽化施設の更新や都市機能の向上(レジリエンス強化)だけに集中したかったのであればPFI手法を用いた施設整備でも良かったのかもしれませんが、そこをあえてPPP手法での整備を選択した意味は何か。それは民間の力をより効果的に引き出したかったということではないかと思います。それは民間事業者にとっても行政の方針や意向に従っているだけでは事業的な旨味も減少する点で同じだと思います。

改めて。まちづくりは行政による不動産ビジネス"でもある"

各地で行政マンの皆様にお話しさせていただく機会がある際、よく言っていることは「まちづくりは行政による不動産ビジネス"でもある"」ということです。背景を簡単に言えば、自治体の自主財源は地域の価値(固定資産税や都市計画税の基盤)と地域の価値がもたらす魅力に惹かれて集まってくる活力ある市民(個人住民税の基盤)で構成されているわけで、つまりは地域を魅力的にする=域内の不動産を効果的に利活用することで地域経営の基盤を安定化させるという循環を理解しているか?ということです。

そうした観点で今回の取り組みを見ると、行政にも民間にもどちらにとっても新宮下公園は不動産ビジネスとしてwin-win関係であったという点も印象的です。
定期借地権で渋谷区が得る地代は従来の通常使用対価を上回る地代(詳細な数値は省きますが)であると考えられることは目に見える行政の利益だと思います(それ以外にも公園の付帯設備の整備を民間資金で実現(付帯設備は民間整備後に譲渡を受ける)できたことなども大きな利益だと思います)。
一方で、民間事業者にとっても取得可能な不動産として市場に出回ることはない土地(立地)で開発事業が行えることは大きな利益以外の何者でもないわけです。
このwin--win関係の実現に向けて、土地は行政が所有したまま定期借地として市場に開放しつつ、その借地の上に官民が区分所有者となる区分所有建物を整備するという、行政側の「不動産事業」による利益の取り方への理解が深かったことは要因の一つではないかと思いました。


以下は参考。以前のPPP的関心の記事から「公園」に関連した記事を再掲。


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