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Dr.Martensとあたし

正直に言おう、あたしはあんまりファッションに興味がない。あんまり、というのは、あんまりって意味だ。可愛い服を見たら「可愛いな」って思うし、オシャレな人を見たら「素敵だな」って思う。オシャレだよね、とかの、丁寧なリップサービスも丁寧に受け取ってしまう。リボンとか掛けて、心の奥に丁寧にしまっておいてしまう。

でも、ブランドに興味あるとか、自分に似合う服探すとか、そういうのはほぼない。ほぼ、というのは、ほぼって意味だ。こんなことしてると、終わらなくなるので、以下略。

そんなあたしだけれど、唯一ファッションでアイデンティティを持ってるのが、ドクターマーチンだ。

 イメージ的に言うと、大学生が最初に買う革靴か、メンヘラが履いてる厚底ブーツって感じだろうけど、あたしはちょっと違う。父親が、ボロボロの、もう履けないようなドクターマーチンを、箱に入れて、靴箱にずうっと保管してたのだ。「革靴はな、一生ものだから」と。愛されてた。きちんと愛されている、気配がした。その靴は、履き潰されていた。磨かれてなくても、誇りがあった。埃もあったけれど。あたしはそれを見て、あたしも、ゴツイ革靴を履き潰すお姉さんになりたい、と思ったのだ。(後に、父は流行ってたから買っただけで、Timberlandも持っていたことが判明する。そっちも、ボロボロだった。余談だけど、そのTimberlandは、いま弟が履いている。可愛い、うちの弟。)

それからずーっと、「いつかDr.Martensを買うんだ」と祈っていた。買えるようになったら。似合うようになったら。大人になったら。お姉さんになったら。言い訳ミルフィーユ。たまに公式サイトを眺めたり、電車の中でドクターマーチン履いてる人をガン見したりしてた。もう、簡単には手が出せなくなっていた。憧れている期間が長すぎたからだ。その期間に、Dr.Martensはダサいとか、ロックスターが履いてたとか、そういう歴史もネットで読み漁ってた。新作が出ると、「ああ、可愛い」と思いながら、見ていた。恋みたいだ。

全部ひっくるめて、Dr.Martensが好きだった。1足も持ってなかったけど。

社会人1年目、冬。ちっぽけだけど、初ボーナスが出て、同棲してた彼氏は、Switchを買った。二人でやった。あたしはそんなに稼いでなかったので、支払いとかしたら、二、三万くらいしか残らなかった。本でも買おうと思っていた、ら。Twitterに、Dr.Martensの新作が流れてきた。黒いブーツ。よく見ると、複雑な色をしている。黒の塗装の下に、カラフルな塗装がされていて、履いていくうちに黒塗装が落ちて、色の塗装が出てくる。色の塗装はオンリーワンで、その人だけの靴になる。そういう靴だった。

あたしは、通勤で使ってた電車に乗って、池袋のDr.Martensの路面店に入った。これの25センチ下さい。と言って、履いて、帰った。確か3万ちょっとした。めちゃくちゃに、可愛かった。それと同じくらい重かった。鉛が着いてるのかと思うくらい重いし、ふくらはぎをぎゅうぎゅう締め付けてくる。店員さんが、「革は柔らかくなるので大丈夫です」と言っていたけれど、全然大丈夫じゃなかった。でも、誇らしかった。あたしはこれを、履き潰すのだ。この子と一生生きていくのだ。

あたしは毎日ドクターマーチンを履いた。雨の日も履いた。履いている日はインスタのストーリーに毎日靴をあげた。可愛くて可愛くて仕方なかった。ぼうっと眺めている日もあった。毎日履けば当然革は柔らかくなったし、重さにも履きなれた。スニーカーなんかを履くと、軽すぎて驚くようにすらなった。


買った日に上げた、インスタのストーリー


あたしは、Dr.Martensが好きだ。
これはたぶん、偏愛。そして、運命。

これからもずっとDr.Martensが好き。
靴がボロボロになっても、あたしがヨボヨボになっても、誇りを持ってDr.Martensを履き続けるババアになる。

4足目のドクターマーチンで靴擦れしなくなったので、こんなことを書いてみた。お付き合いありがとう。またね。

4足目。白ステッチが可愛い。


お読みいただきありがとうございます。あなたの指先一本、一度のスキで救われています。