書いてみてる短編小説①

前回、「物語を書いてみたら分かるかもしれませんね」と最後のほうに書いたんですが、自分で確かにそうかも〜と思ったので、小説を書きはじめました。

記憶力も想像力も乏しいものだから、あるものでやりくりしなくてはならず、大変です。太宰の『女生徒』をもとに、ある人の1日を書こうと思っているんですが、朝起きてから家を出るまでを書くのに2日もかかりました。書けたとこまで載せます。
書き上がるのはいったいいつになるんだろうか。そもそも書き上がるんだろうか。
プロットみたいなものもないので、白紙の地図で山登りをしている気分です。まだ一合目だ。

【創作】数学教師①

冬の朝は嫌だ。寒すぎる。布団から一瞬でも出るとすべての幸福を一回忘れてしまう。暖房を入れて、暖まるのを待つ間、しんと動かない空気の粒子をなるべくかき混ぜないようにそっと動いて、食パンをトースターに放り込む。牛乳を小鍋に入れ、火にかけて眺める。微かに振動する白を静観する。次第にたちのぼる湯気で空気が柔らかくなってくる。ふちがプツプツとしたら火から取り上げて、中学生のころ誰かにもらったマグカップに入れる。トーストにジャムを塗り、皿に乗せて朝食とする。ここは都内のワンルーム。家賃7万円。

部屋が暖まってきたので着替える。パジャマを脱ぎ捨て、昨日アイロンをかけたシャツを着て、上からニットのカーディガンを羽織り、気づいたら3年も履いていたスラックスを履く。

わたしの頭は美しい直方体をしている。いつからこうなったのかは思い出せない。友達がおらず、親も淡白であったわたしには幼い頃の写真が少ない。思春期にはすでに直方体であった。最近のわたしの頭はSNSを開けばみることができる。人はわたしの顔がこれ以上ないほど長方形をしているのをみると、「美しい!」とか「直角だ!」とか言って写真を撮り、「みんなに自慢していいですか?」と聞いてSNSにアップする。わたしはSNSのアカウントを持っていないから、ほとんどみたことはないのだが。これまで出会ってきたわたし以外の人はみな、両親を含めて曲線の頭をもっている。造形に多少の違いはあるものの、似たような感じである。どうしてわたしだけが直方体なのか、思春期にはずいぶん悩んだけれど、悩んでどうにかなるものでもないし、最近は諦めてしまった。
思春期に苦しかったのは服である。角に引っかかってしまうから、前開きの服しか着ることができない。Tシャツなども、ものすごく頑張れば着られるけれど、伸びてしまう。当時は指定されたものを着る必要があったが、今は前開きの服を着ればいいのだから、ものすごく頑張る必要もない。大人っていいなと思う。
歯を磨いて顔を洗い、簡単に化粧をする。水が冷たいので嫌になる。少し緩んでいた毛穴がギュンと閉まる。
都営の電車に乗って職場まで行く。ラッシュが嫌で冬は日の出と同じ頃に家を出る。思っているよりも空が赤く染まっていて眩しい。今日もつつがなく終えられるように祈りながら、寒さに背中を丸めて歩く。

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