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母逝きて 悲しき想ひ 纏われば 走り出づれど なほ振り切れず
蒼穹(そうきゅう)に 母との景色 おぼゆれば 雨は降れども なほ思い出づ
道すがら LARK*のかほり 漂ひて 逝くまで吸った 母浮かべたり *煙草の銘柄
メッセージ 打てばただちに かえす母 今は待てども 既読はつかず
自転車を 逝きし母より 譲り受け おりん代わりに ベル鳴らしたり
母が撫で 抱いて愛した 猫の背に 香りを探す 顔をうずめて
母逝きて 厄年呪う わが心 四十迎えて 未だ戸惑う
祭壇に 母の名示す 花が咲く 枯れてくれるな 永遠(とわ)にながらえ
食卓に 座りて憶(おも)ふ 母の味 コンビニの飯 ただ味気なく
近影に 言葉かけるも 返事なく 抱きしめ願う 母在りし日を
代えがたき 兄(あに)弟(おとうと)と 擦れ違い 今は母亡き 擦り細る糸
母逝きて 愛でたる猫は われを噛む 痛みては知る 彼の悲しみ
線香と 花の香りが 満つる部屋 母との日々よ 胸を占(締、閉)めるな
遺されし われ浮かべるは 作り笑み 笑み尽くりたる 父が哀しき