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中島さんとイモトさんのエベレスト登頂を見たかった

私は極度の運動音痴で体力もなく、よってアウトドアやレジャーを避け続けた人生を送ってきた。
マラソンや登山など持久力が試されるものは以ての外。誰にも強制されず、ただ好きでそれを趣味や生業にされる方々には尊敬の念しかないし、むしろどんなところが魅力なんだろうと興味を惹かれた。

そんな私の好奇心を満たしたのが、『世界の果てまでイッテQ』の登山企画。
イモトアヤコさんの奮闘と、彼女を支えるプロの方々の仕事ぶりを見るのが大好きだった。その登山企画で中島健郎さんの存在を知った。
イッテQでの登山では、体力はあるものの登山素人(途中から玄人レベルになってくるのだけど笑)のイモトさんのことを考えた事前訓練や高度順応が行われていた。アタックの際も「安全に山から帰る」ことを第一の目的としていた。

無茶な登り方はしない。

そんなチームメンバーにいらっしゃった中島さんが滑落事故だなんて。山は何があるか分からないというけれどまさか彼に限ってそんなはずは無いと信じられない自分がいた。

そんな混乱の中、救助打ち切りのお知らせがあった。

私は、登山企画を通じて知った中島さんのお人柄だけを見てそう感じていただけで、もしかしたら私の知らない何かがあるのかもしれない。
救助打ち切りのお知らせを見た日から、平出和也さんのインタビュー記事を読み漁り、お2人が過去に出演されたドキュメンタリーを観た。

でもお2人のことを知れば知るほど、
前人未踏の地へ足を踏み入れることと、安全に山から帰ることを絶妙なバランス感覚で成立させていることが分かり、尚更このお2人が何故…という疑念が拭えずにいた。

そんなとき、登山家で山岳ライターの大石明弘さんの記事を拝読した。

登山家であり親しい間柄だからこそ分かる今回の挑戦の難しさ、出発前に交わされた会話、救助打ち切りに対する無念さ、、読みながら大石さんの辛さが伝わり涙が出てきた。

そして、【なぜあの平出さんと中島さんが…?】という疑問は大石さん自身も感じられていた。
その問いに対して、大石さんは
【山頂にはフォーカスできず、クライマーとしての「スイッチ」が入らないなかで今回の遭難が起こってしまったのでは】と推測されている。
趣味が仕事になり、有名になり、多くの人の期待を背負うようになればなるほど、純粋なただ登りたいという気持ちのスイッチを入れ時を自分のタイミングだけで調整することが出来なくなるのかもしれない。
それが答えなのか、誰にも分からないけれど
「あの二人が、なぜ、どうして」とグルグル答えのない問いを繰り返していた私にとって、大石さんの出された答えは腑に落ちるものだった。

普段登山をしない運動音痴の私が何故ここまで今回の件に心を揺さぶられたのか。
自分でもまだよく言語化できずにいる。
中島さんのお人柄が好きだったこと、
まだ39歳、私と年齢も近く小さいお子さんもいて
まだまだこれからという時だったこと、
人生は思わぬ形で幕を閉じることがあるということ、、世の中には【絶対に〜】ということは無いのを思い知らされたからだと思う。

数々の偉業と素晴らしい景色を見せてくれたお2人に感謝と敬意を。
そして私は彼らのように心の底からこれをしたいと渇望するほどの【なにか】をまだ見つけられていない。それを見つけて、形にしていこう、そう思った。






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