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ブロッコリーをめぐる異変

絵とはまったく関係ない話です。
かなりどうでもいい話なので興味のない方は読み飛ばして結構です。

個展を終えて東京から帰ってきたら近所のスーパーのブロッコリーが1個300円を超えていて、手が出なくなってしまいました。

しかも小さい! 2024年3月14日

私は緑黄色野菜を摂るために毎日のようにブロッコリーを食べていたのですが、ブロッコリーの値段は去年のいつ頃までか158円くらいで、それからじりじりと上がっていきました。

2023年12月9日

12月9日にはまだ216円だった。

…いや、そこじゃなくない?
そうです、この日が初めてでした。私がこれを見たのは。
ブロッコリーの値札が、「ブッコロリー」になってる!
わははははは。

初めてこれを見たときは笑いました。
可笑しくないですか、ブッコロリーって。
「ブッコロ」という不穏な響きの後に、コロリ、と転がっていく可愛らしい音が続くことで微笑みを誘います。
子供みたいなまちがい。そう思いました。

けれども、何日経ってもその値札は修正されずそのままでした。
私はだんだん不安になってきました。
店員は気づかないのか?それともこれは間違いではなく、ブッコロリーというブロッコリーとは別の野菜なのだろうか?
そういえばこの間のは、ブロッコリーより少し青臭い気がした…

そんな訳あるかいな。
もう一つの可能性は、店員がわざとこれをやっているということである。
値札の作成が何を使っているか知らないが、どんなソフトでも今はブロッコまで打ち込めば予測変換でブロッコリーが出てきそうなものだ。
ブッコロリーに間違う可能性は低い。
店長が何日も見過ごすというのもおかしな話である。とすると、これを実行しているのは店長なのかもしれない。
田舎のスーパーで店長がわざとブッコロリーと書いて喜ぶ。何のために…?
それとも店長は物心ついてからずっとブッコロリーだと思い込んでいるのだろうか。私は店長が誰か知らない。

このことを誰かに言おうにも、周りには客も店員もいつも誰もいないのだった。
人口4千数百人の小さな町のスーパーでさえ、だからこそ、レジは数年前からすでにセルフレジとなっており、店員を見かけることが少なくなっている。

1週間後、新たな展開が訪れた。

2023年12月16日

2023年12月16日。棚には従前の「ブッコロリー」が並ぶ。一方、

2023年12月16日

床には山積みの広告の品、「ブロッコリー」が!
ついに「ブッコロリー」に対抗する勢力、正統「ブロッコリー」派が「スーパーみ○○み」内に現れたのだ!
がんばれ、ブロッコリー派!
しかも安い!即買いだ!たしか、ふた球は買ったと思う。(いっぺんにたくさん買っても黄色くなってくるから買いだめできないのが残念だ!)

そして、しかし、さらに2週間後の12月30日。

2023年12月30日

ガーン。正統派は駆逐され、お買い得品も「ブッコロリー」になってしまった!
やはり店長だったのか。ブッコロリー派は。
いつまでわれわれ大迫町民はブッコロリーを食べ続けなければならないのか…
そうして2023年が終わった。

明けて2024年。
相変わらずブッコロリーはブッコロリーのままだった。
もう正直どうでもよくなってきた。
隣のツルハドラッグでは、正しく「ブロッコリー」を売っているのでそちらを買えばいいのだ。しかも安い。

ところでここに来て私は、この事態が始まってから初めて「ブッコロリー」でGoogle検索をしてみたのである。
ブッコロリーという言葉がすでに世の中に流通していないのかと。
そして…あったのだ。ブッコロリーが。
それはあるバンドの音楽アルバムのタイトルだった。
もちろん、ブロッコリーを前提にした造語に違いない。
あと何か、キャラクターっぽいものもあるようだった。
それ以上は検索しなかった。
そして途端に興ざめした。

ブッコロリーが面白かったのは、ブロッコリーの間違いだからであった。
それが、何かの引用であると思うと急につまらなく感じた。
たとえ間違いではなくとも、値札を書いた人物がブッコロリーという言葉を編み出したのなら面白いが、すでに流通している言葉を引用したのかもしれないと考えるとそこにはオリジナリティが感じられず、ただただ興ざめするのであった。
今度誰でもいいから店員に言おう。

その機会はほどなく訪れた。
いつもと違う午前中に店を訪れた時、まさにブッコロリーを並べている若い男性店員に出くわしたのである。
私は彼が並べたばかりのブロッコリーを一つ手に取り言った。
「これ、間違ってますよ。ブッコロリーって」
「あ、ブロッコリーですよね」彼は事もなげにそう言った。
これでいい。

それから数日後。私はもちろんブロッコリーを買いにいった。
そして…
何も変わっていなかった。
私はあきらめた。この町の未来を…

2024年2月23日


そして3月になり、季節外れの寒さと雪に見舞われた東京から帰ってきたら、ブッコロリーはブロッコリーに戻っていた。

3ヶ月に及んだブロッコリーをめぐる異変はこうしてあっさりと終わった。


追記:
最近ブロッコリーは400円を超えてしまい、全く手が出なくなってしまった。
ブッコロリーでもいいから200円以下に戻って欲しい。
こうなってみて気づくのは、私にとっては正しい名称よりも価格の方が切実な問題だったということである。
かくなる上はこれからは畑でブロッコリーを栽培しようと思う。

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