日記 2015/11/13 - 2015/11/16

ホストマザーへのお土産にチョコレートを買う。支払い時、カードを見た店員が、アイルランドから来たの?とびっくりしていた。ダブリンで働いていると答えると、ちょっと黙ったあと、僕も昔4年くらい住んでたよ、ダブリンはどう?と聞かれる。

「うーんまだ住んで二ヶ月だけど悪くない、でもロンドンに比べて小さいかな」「その小ささがいいんじゃない?僕は好きだった、ロンドンは大きすぎるから。」

私はダブリンよりロンドンの方が好きかなぁ、実は昔ロンドンに住んでて…、と言おうとしたところで、後ろに待っているお客さんがいたのでそこで切り上げた。

その夜はホストマザーのSiggiさんと近所に住む仲良しのEricと三人で晩ごはんを食べた。三年ぶりに会ったSiggiさんは、思っていたよりずっと元気でほっとした。相変わらず忙しそうで、みんな11月生まれだからお祝いが続いて大変なのよ、と予定がぎっしり詰まったカレンダーを見せてくれた。カレンダーが昔と変わっていなくて懐かしかった。

庭にある手作りのブッタ像!を見せてもらう。Siggiさんの友達は飼っている犬が死んだとき、そのブッタ像に向かって20分くらい犬の幸せをお願いしていたそうだ。ブッタってそういう感じじゃないよね、でも確かにこれは何かに祈ってる感じがするからいいかもしれないね、と笑いながらブッタを見ていた。

Siggiさんは、最近のインテリアはどれも似ていてつまらない、みんな同じボックスを持っている、と言う。Ericは、ミニマルなデザインが流行っているからね、僕は悪いことじゃないと思うけど、と話していた。家を買ったらどんな家具を置きたいだろうかと考えながら、私は黙々フィッシュパイを食べていた。

翌日は近くのおしゃれカフェでブランチする。店内の雰囲気、黒い板に白い文字のメニューボード、ヒゲを生やしている店員、バナナローフやチョコレートキャラメルケーキといったメニュー。ありとあらゆるものがパリで行ったカフェと似ていて、東京にもあるよね、ダブリンにもあるよ、世界のhipsterカフェはどこも似てるよね、と笑うけれど、そこに来ているお客さん、私たちだって似ているんだろう。

旅行中、やっぱりパリには住みたくないと言い出して、この話を今するのはやめようと言われるのを何度も繰り返した。パリのことが悲しいと、誰に言うでもなくつぶやくのを聞いた。この人が今こうやって目の前にいるのはなんて奇跡的なことなんだろうと、幸せな気持ちではなく、暗く悲しい気持ちで思った。

最終日はTateにThe World Goes Popを観に行く。ポップアートはなんて暗いんだと思う。表はとびっきり明るいのに裏は底なしに暗い、と思った人たちのことを考えていた。今の私はどうだろうか。

気付けば黒い服ばかりを買っている私が、珍しくロンドンでは真っ赤なカーディガンを買った。今は少しでも、明るい服が着たい。