残り物を突っ込んでカレーを作る。
カレーは鬱に効くと昔何かで読んで、元気がなくなるとすぐカレーを作る。本当かどうかは知らないけれど、おまじないみたいなもので、これさえ食べればちょっと元気になると信じている。元気な時だってカレーは好きだからいつも作っていて、そしたらだんだん適当になってきて、最近では残り物を突っ込んで一回限りの味を作ろうとか思いながらカレーを煮込んでいる。今日はかぼちゃの煮物、エッグローストの残りを突っ込んだ。甘いけどちょっとピリピリして、身体がじんわり温まって気持ちよかった。
生きていると色んなことがあって、自分のコントロールできないところで突然に目紛しく何かが変わったり、どこか心を痛めたり、それでも何もなかったかのように毎日を進めていったりする。どうして私は普通に生きられないのかとため息をついて、それで私はなんて傲慢なんだと思ったりする。普通なんてない。生きていくのはそれぞれに大変で、私はただそのほとんどを見ることがないだけなのに。
それでも時々、どうしようもなく疲れる。ありとあらゆることが嫌になり、ただただ寝ていたくなる。些細なことがきっかけになることも、何もないのに突然始まることもある。そういう時に私はカレーを作る。事実かどうかはどうでもよく、根拠もいらない。私はただ食べると元気になるというおまじないが欲しいのだ。それは正しくないことかもしれないけれど、だって正しいことは私を救ってくれるんだろうか。
残り物を突っ込んでカレーを作る。ため息ばかり付いている日々でも、出来たカレーは何事もなかったかのように美味しくて、そのことが私をとても安心させる。それに頼って生きている、28歳の秋。