カフェとマッチングアプリと100万円のセミナー
読書をしようとカフェへ出かけた。熱いドリップコーヒーを注文し、窓際のカウンター席に腰掛ける。
私のすぐ左隣には20代半ばから20代後半ぐらいに見える女性、さらに女性の左隣には30代ぐらいの男性が座っていた。この男女はペアらしい。
横から会話が聞こえてくる。
(15秒の沈黙)
「ん?」
何かぎこちないぞ。
でも、雰囲気は決して悪くない。むしろ、相思相愛のように見える。お互いコミュ障ゆえに会話がはずんでいない感じ、なのかな。
(30秒の沈黙)
共通点がなく話題に困っている様子。どうやら初対面のようで、誰か知人の紹介というわけでもなさそう。想像するに、マッチングアプリか何かだろうか。
(15秒の沈黙)
(45秒の沈黙)
(30秒の沈黙)
1、2回会話が飛び交うごとに沈黙を挟むのがとても気になる。
(30秒の沈黙)
親戚からの、鬼滅からの、野球!
何なんだ、この会話は。
(70秒の沈黙)
おい、せっかく話題に乗っかってくれたのに何で黙るんだよ!
というか、初対面の20代の女性とデートするときに、王さんとか長嶋さんの話するのやめれ。
(90秒の沈黙)
…だんだん、コミュ障の男性から100万ぐらいもらって、セミナーを開きたい気分になってきた。
「へー」じゃねえよ、誘えよw
(70秒の沈黙)
だから、誘えってw
だから、「へー」じゃねえよw
人類の課題は圧倒的にコミュニケーションだということが判明しました。
(18秒沈黙)
初対面の成人男女が、中学の頃の合唱コンクールや運動会の話をカフェでしている。
(17秒の沈黙)
会話をしているときの雰囲気は「いい感じ」とさえ言える。そして、突然の沈黙。…まったく意味がわからない。
全体を通じて一体何の会話、何の時間だったのか。彼の尋常じゃない会話力の低さが理解できない。とんでもない球が飛んでも来ても、ものすごく前向きなノンバーバルで食らいついていく彼女のスタンスもまた理解できない。
今日出会ったこの男性のモノマネをするためだけに、マッチングアプリに登録したいとさえ思った。
合理性では決して説明のつかない人間という生物、実に面白い。日常の一挙手一投足がエンターテイメント。家を出たら、私はだいたい笑いをこらえている。
こんにちは、うえみずゆうきです。もし気に入っていただけたら、応援していただけると嬉しいです。更新のモチベーションになります。