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転ばぬ先のサンプル

「わたし、付き合うなら絶対B型の男がいいです。」

部活の後輩とご飯を食べていたら
聞いたことない切り口から恋バナが始まった。

とりあえず「ナニソレ。」と相槌。

「わたしがAB型だから、B型の人間がいいんです。
B型の血が、AB型と一番相性いいんですよ。」


「ドラキュラか!」
みたいなよくわからないツッコミをしたと思う。

(コイツ、男を血液型でカテゴライズしてんのか…?)
とちょっと引いた。

そもそも血液型とか星座とか
占いやら霊視やら姓名判断やらの
スピリチュアルの類が僕は苦手だった。

「最初に付き合ったB型の人とは2年続いたんです。A型の人も2人付き合ったことあるんですけど、両方1ヶ月で別れたんですよ。サンプル2つ取ってダメだったんだからだいぶ信憑性あります。」

お前倫理観どうなってんだよ!
データで恋愛するなよ!恋愛でデータ取るなよ!
男で卒研するなよ!

言いたいことは山程あったけど、自分の中で【サンプルを取る】という言葉が妙に引っかかっていた。
倫理観の観点ではなく、人間の行動理念的な面で。


最近、学生時代の同窓会の幹事を務めることになり、10年前通っていた高専のクラスメイト40人全員と連絡した。

・その日のうちに即レスポンスがある人。
・2日後くらいに「返信遅くなってごめん!」という常套句と共に返事が来る人。
・既読はつくけど返事がない人。
・既読すらつかない人。

の大体4パターンに分類された。

そして出席者の統計を取ると、ほぼ全員「その日のうちに連絡が取れた人」が同窓会に来るという結果になった。

返事があまりにも遅い人、返事がない人は学生時代に未練が無いんだろうな。と勝手に腑に落ちた。

もちろん、予定があってごめん!という子や、その日も仕事!の超多忙エリートもいたけど、高専時代にノートの貸し借りをしたり寮で同部屋だった子から返事が無かったのは結構堪えた。

年末の今でも未だに連絡はこない


ここで「サンプルを取る」という話に戻る。

倫理観が邪魔して、どうも友人をモルモット扱いしているように思えてしまうけど。勘弁を。

物事へのリアクションや日々の振る舞いを
無意識のうちに、脳は"パターン"として
自分の中に取り入れる。

姿勢がいい人を見ると、育ちが良さそう。
笑いのツボが同じ人は、仲良くなれそう。
連絡がない人や遅刻する人は、信頼できない。
と思う。そしてパターンとして登録される。

脳内で勝手に他人をふるいに掛けて、
小さな言動1つで失望したり信頼したりするのだ。
それは「経験」であり「備え」である。



昨年、仲の良かった親友と急に連絡が取れなくなった。

彼女は元々職場が一緒で、他愛も無いことで笑えたりするお互いに居心地のいい相手だった。と思う。

お互い転職して彼女は大阪、自分が鹿児島に引っ越してからも、連絡は取り合っていた。
恋愛感情こそ無かったので、「男女の友情」って
成立するのかも、とすら思ってしまっていた。

ネジの外れ方が似てるな、という点で意気投合して、特にコロナ禍はよく連絡を取り合っていた。

お互い知識ゼロで競馬に行ったり
グランデサイズのコーヒー券を贈りつけてきたり
LINEスタンプを一緒に作ったりもした。
本当に、いい友人だった。

ある日、急にLINEに既読がつかなくなった。
喧嘩したわけでもコロナに感染したわけでもない。
電話も出ないし、試しに手紙を書いてみても返事はない。
SNSのアカウントは全て削除されていた。

病んでるのかな、大丈夫かなぁと思い心配している頃に、ちょうど元職場の友人の結婚式に呼ばれ、大阪に行く機会があった。

友人の結婚式前に彼女の家に行った。
すごく驚いた顔をされた後、
「なんで来たの?」と怒られた。

約半年ぶりの会話だった。
体調が悪いのか、大きな悩みでもあるのか
僕がなにか気に触ることを言ったのか。

またバカな話をしたい、ずっと友達でいたい
どうしたらいい、とちゃんと伝えた。

いつか君に嫌われるのが怖いから連絡を絶った

と言われた。


そして
「すごく楽しかったけど、しんどいからもう連絡してこないでください。」
と言われた。

こういう人との別れ方もあるのか。
と途方に暮れた。
なにそれ?とちゃんとイライラもした。
ニコ・ロビンかおめぇは。

ONEPIECE 41巻

今思えば、仕事や人間関係で病んだり
配偶者がいる男とのやり取りに罪悪感を抱いたり
直感的に【魔が差した】だけのことだったのかも知れない。
誰にも会いたくない!という時期は誰にでもある。

ただ、「うるせぇ!一緒に行こう!」と言えるルフィのような主人公パワーは僕にはないので、「幸せに暮らしてください」と一言添えて僕らは別れた。
他人の自己嫌悪に付き合えるほど、僕は余裕がある人間じゃない。

それ以降、連絡をすることはなく、自分の中に「パターン」の1つとしてインプットされた。

仲の良かった友人との離別パターンの1つ。
"嫌われたくないから先にいなくなる"
もう二度と御免だ。


長々と書いてきたが、言いたかったことは1つ。

他人に期待するな


…ということではない。


経験やパターンの積み重ねで
人間関係は形成される

ということだ。

信頼していい。期待してもいい。勘違いしていい。
ただ、パターンを知っておくと、
最終的に自分が楽なのだ。

会話や行動一つ一つに一喜一憂して
ヒトという生き物との関わり方を
"サンプル"をとって覚えていっている最中だ。

サンプルが多いほうが方程式を作りやすい。
こういうパターンか。と憂うことなく済む。

人生は早く上がればいいわけじゃないから
手札は多いほうがいい。


付き合うならB型!と言っていた後輩は
悔いのない恋愛をできているだろうか。

同窓会の連絡がとれなかったクラスメイトは
別の世界で充実した日々を送っているのだろうか。

急に別れを告げられた親友は
僕のことをたまに思い出したりするのだろうか。


「なんだかんだでO型の人と結婚しました!」

「返事返さなくてごめん!南米に出張してて…」

「あのときはごめん。私がおかしかった。」

例えばそんなことを言われる日が来るとしても
別にもう僕はなんとも思わないだろう。


今後に活かせるサンプルとして

「そういうパターンもあるのか」

と少し嬉しく思いながらも
頭の中が書き換えられるだけだ。



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