【小説】潮騒と残滓に苛まれる季
前話
ただ、真っ直ぐな道が伸びていた。まだ残っている僕の足跡を辿って歩いて行けば、いずれ街に着く。月が落ちて出来上がった大きな砂漠の下には、まだ見つかっていない多くの命が埋まっている。手の付けられていない今、それらが回収されることは無いのだろう。
人から人へ移り行く感染症、白月症。あらゆるものの色を認識できなくなる病を恐れ、丘区を中心にして人は外へと消えていってしまった。
誰も、色を失いたくなかった。鮮やかな世界を手放したくなかった。それは至極当たり前の考えで、両親