環境法の特徴2/基本科目の掘り下げが可能

不法行為法を深掘りできる

司法試験対策の民法において,「不法行為」はあまり深くやらない方が多いと思います。特に,共同不法行為の辺りになると,力尽きてしまうため,一通り触れて終わりという方も多いのではないでしょうか。

一方,環境法を勉強すると,その分野についても丁寧に学ぶことができるため,当該分野に関して民法で学習する必要がなくなります。むしろ,司法試験民法の求められるよりも高めのレベルで学習するため,仮に民法で当該分野が出題された場合には,すぐに答案をまとめ上げられるだけの実力が身につけられます。

例えば,以下のような事例をみてください。

【事例2】Xが居住している地域では,近隣で操業しているA工場およびB工場(A工場とB工場とは別の株式会社が運営している。また,資本提携や技術共有なども行っていない。)から排出されるばい煙および近隣の国道を通過する自動車の排ガスにより,大気汚染が深刻化しており,Xら周辺住民に健康被害が生じていた。なお,Xらの健康被害は,各工場から排出されるばい煙および近隣国道を通過する自動車の排ガスが積み重なったことが原因となって生じたものであり,各工場からのばい煙や自動車の排ガスのみでは生じなかったものとする。

環境法では,このような場合にXは,誰を被告として,どのように損害賠償請求を行うのかを検討することが求められます。このケースであれば,因果関係の有無や,その証明について司法試験の民法や民事訴訟法での学びよりも深く掘り下げておく必要があります。

また,共同不法行為に関する民法719条をどのように解釈するのかも問題となります

深掘りするメリット/基本科目との重複部分がある

民法や民事訴訟法について,少し掘り下げて学習し,かつ,その分野を環境法学習で済ますことができるのは,時間短縮に繋がります。上記で紹介したほかにも,民事訴訟法や行政法における当事者適格の問題や,民事訴訟法の差止訴訟については,司法試験の基本7科目と範囲が重なっています

環境法は一見たくさんの学習項目があるように見えますが,他の基本科目と重複する部分があるため,その部分を環境法的に少し掘り下げておくと,他の基本科目のレベルを上げて終わらせることができるというメリットがあります。

参考文献

環境法的に不法行為の因果関係や共同不法行為を学ぶ際には,吉村良一『公害・環境訴訟講義』(法律文化社)68頁〜85頁が参考になります。他の環境法の基本書を用いている方も,この部分はコピーして持っておくとよいと思います。

また,民法の演習書だと,米村滋人「因果関係の立証」(沖野眞巳他『民法演習サブノート210問』(弘文堂)第151 問[301頁])が勉強しやすいと思います[※2020年1月3日23時30分追記]

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