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知財人材がこれからのキャリアを構築するにあたって必要なマインドセット


自己紹介

私は大学卒業後、一貫して知財に関わりを持って仕事をしてきました。

とはいえずっと企業や特許事務所にいたわけではなく、「①特許庁審査官 ⇒ ②事業会社知的財産部 ⇒ ③コンサルティング会社」と転職を繰り返してきました。

知財人材としては珍しいキャリアと思いますが、狙ったキャリアではなく私なりに情報の網を張りどうするべきか常に考え動き続けた結果です。

私は転職後も複数の転職サイトに登録して知財求人をウォッチングし続けています。定期的にキャリアアドバイザーとも会っています。

新しい波が来たら飛び移れるように、知財に関する求人情報を自分事として長年捉え続けてきたのです。


知財人材の求人動向

私は知財人材の求人情報を見てきましたが、特にこの数年で知財人材求人の動向が大きく変化していることを肌で感じます。

単に、知財に関する求人が大学TLOやコンサルティング会社など多様化したというだけではありません。

根拠を明示するのは難しいのですが、従前からあった事業会社や特許事務所の一部求人内容に変化を感じます。求人票に人材募集背景が詳しく掲載されている傾向があるリクルートビズリーチからは特に変化を感じます。

どのような変化かというと、求人背景の欄に「事業収益拡大のため」の類の記載が入っていたり、「経営企画経験」を求める知財人材の求人が目につくようになりました。

事業会社の求人で「知財戦略コンサルタント」と件名に入っている例もありました。これまで外注していた機能を自社で担おうとする動きでしょう。

また、私が初めて転職をした6年前、知財関連の求人の多くは「年収400~1,000万円」のレンジに収まるものがほとんどでした。

しかし、近年の経営に関する貢献が求められる知財人材の求人は「年収800~1,200万円」程度の比較的高いレンジの条件が提示される傾向があります。

もちろん知財人材求人の多くが翻訳、調査、権利化、知財戦略立案、知財管理に属する求人であることは変わりません。しかし知財人材に求められる価値が変わりつつあることを求人内容から感じています。

あるキャリアアドバイザーは「スタートアップの知財求人は増えている傾向がある。以前は外部の特許事務所に任せていた知財機能を自社で持とうとするのは、それだけ経営層が知財を経営に活かそうというマインドに変わりつつあるのかもしれない」と聞きました。


知財人材に求められる価値の変化

この記事では、知財人材に求められる傾向が変化する中で、知財人材がどのようなマインドを持って今後のキャリアを築いていくべきか一つの考えを提示したいと思います。

知財人材求人の変化から、知財人材に求められる価値が「事業の潤滑剤」から「事業の種作り」に変化しつつある時代であると言えます。

「事業の潤滑剤」とは、事業計画や研究開発計画がスムーズに進むように、研究開発成果を特許権等で権利化したり、他社の特許を侵害しないように侵害予防調査を実施することです。

しかしここ数年は「IPランドスケープ」というワードの流行りが示すように知財人材の価値として事業の種作りが求められる傾向が強まっています。

事業の種作りとは事業計画や研究開発計画を立案する段階から知財人材が関わることで事業計画や研究開発計画に知財の観点を入れ込んで新たな価値を提供することです。

既にある計画の遂行から、事業計画の立案自体に絡んでいくことが求められる傾向がでています。

そして、事業計画の立案に貢献できる知財人材はまだ少ないのが実情です。


経営に知財の知見を活かすためには

知財人材が事業の種作りで価値を発揮するには、知識や経験に加えてマインドを変える必要があります。

「事業の潤滑剤」としての価値を示すためには、既に道筋が立てられた事業計画や研究開発計画がつつがなく遂行されるためにどうすればよいかというマインドがあれば十分でした。

特許事務所であれば、クライアントから上がってくる発明報告書に沿ってヒアリングして明細書を書いて出願し特許査定を得る。

知財部員であれば、発明発掘をして事業に沿う形で権利化し必要に応じた権利行使をしていく。

一方、事業の種作り」を行うには、知財人材は率先して事業に関わっていくマインドセットが必要になります。

特許事務所の担当者からすると他人事のように聞こえるかもしれません。事業会社はまさに「事業の種作り」から伴走できるパートナーを社内外に求めています。


知財人材はどうやってマインドセットすべきか

私は知財人材が経営の知見を身に着けるため知識や経験に加えて「知財人材が経営マインドを持つこと」が特に大切と考えています。

経営の知識を身につけるためにはいくつかの方法があります。

書籍やWebコンテンツを通じて学ぶ」ことは最も手軽かつ有効な方法です。書籍のコストパフォーマンスの高さは言うまでもないことですし、最近はYoutubeやUdemyなどで有料・無料問わず質の高いコンテンツを通して学ぶことができます。

「社会人大学院に通う」ことを思い浮かべる方もいるでしょう。

ただし学んだ知識を業務で実践するという行動に移すには、知識習得だけでは不十分です。学んだ知識を活かして事業を作っていくマインドがなければ絵にかいた餅です。

事業会社の経営企画や知財を扱うコンサルティング会社などに異動・転職する」ことは、知財人材が経営マインドを手にするには適しているでしょう。なぜなら、経営に貢献することがミッションであり、自身でマインドを整えるまでもなく事業の種作りを実践する環境が整えられているからです。

しかし急に異動や転職と言われても敷居が高いのが実情です。

そこで現在の所属で事業の種作り」を行うマインドセットのために有効なことが、「小さなアクション」を行うことです。

「小さなアクション」は、例えば中期経営計画や四半期報告書の参照などが挙げられます。会社HPの事業コラムや製品紹介、社長のブログ、日経記事でも構いません。知財人材自身の仕事に関連した事業に関する情報であればなんでも構いません。

知財人材が事業背景を理解しようとしたマインドを持って仕事に取り組むと、日々の業務で小さな変化が生じてきます。

はじめは小さな変化です。

ヒアリングの際の事業状況に関する一言のコメントかもしれませんし、明細書作成の際のクレームの小さな提案かもしれません。

しかしそういった小さな積み重ねが、知財人材が普段接点を持つ相手の信頼感を獲得することに繋がっていきます。

①小さな行動でマインドが変わり、②マインドが変わると行動が大きく変わります。そして③行動が変わると周囲の見る目が変わり、④周囲の見る目が変わり、知財人材や知財部、特許事務所の価値が向上します。

まずはクライアントや自社のHPに経営されている中期経営計画をちょっと見てみるのはいかがでしょう。Googleで「〇〇社 中期経営計画」と検索すればすぐに見れます。関連事業をざっと目を通すむだけなら5~10分程度です。

知財人材の一人一人が、「事業の潤滑剤」から「事業の種作り」にマインドを変えて取り組んでいくことで、知財人材全体の価値が挙がっていくことを一知財人材として期待します。







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