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技術者から弁理士独立に向けたキャリア

大学卒業して、設計開発者として10年、20年とキャリアを積み、気づけば40代。

会社内でのこの先もある程度見えてきたそんな頃、将来の選択肢の一つとして聞く「弁理士」。

独立も可能であり、これまで培った技術者としての経験が活かせる。人生100年計画と言われるこれからの時代、定年退職後も自分の城を持って長く働けるかもしれない。

…しかし、年齢的にこれから独立に向けたキャリアチェンジが可能なのだろうか。

今回は、40代からの知財へのキャリアチェンジの選択肢と可能性について整理しようと思います。

知財へのキャリアチェンジとして選択肢として挙げられるのは、以下のようなパターンでしょうか。

転職しての特許事務所勤務、独立しての特許事務所経営、異動/転職での企業知的財産部勤務、定年退職後の大学や公的機関のTLO等勤務、特許庁任期付審査官・・・

他にも、コンサルティング会社勤務、大学教員などもあるかもしれませんが少ないパターンかと思うので割愛します。

以下では、それぞれの進路の要件などについて一覧整理してみます。

弁理士キャリア一覧

弁理士資格を活かして将来的に独立を目指すのに一般的な道である「特許事務所勤務」。

少し求人を検索されると、「知財未経験者:35歳頃迄」という記載を見かけることがあると思います。

採用年齢に上限がある理由ですが、特許事務所での業務の習得には時間を要するため、未経験者であれば習得が早くが求められることが背景にあります。

特許事務所の業務は、技術者出身であれば、「特許出願の明細書作成」が主な業務になりますが、明細書作成には、技術知識の他に、法律や基準に基づいた書き方のノウハウを習得する必要があります。

また、明細書作成には向き不向きがある程度はっきりしているため、若いうちであれば、仮に明細書作成が向いていないと分かった後でも人生の軌道修正が効くということも背景としてはあります。

では、40代の技術者であれば、弁理士資格を取っても特許事務所への転職や独立が不可能かというとそうとも限りません。

現在、多くの特許事務所では人手不足であり人材の奪い合いの状況です。

そのため、未経験者であっても学歴(理工系修士以上)、技術者としての経験、英語力(TOEIC800程度)があれば、40代であってもポテンシャルを見込んで採用する事務所はあるでしょう。

それでは、見事特許事務所へ転職を果たした場合のその後について検討してみます。

プラン1(特許事務所へ転職⇒独立)

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転職してもおそらく収入は年功序列のメーカー勤務より落ちます。さらに、慣れない明細書作成業務を習得しながら弁理士試験の勉強を進めるのは並大抵ではありません。

少なくとも3~4年のプライベートを捨て、家族の時間を犠牲にする覚悟と理解が必要になります。

また、無事独立を果たしたとしても、経営がうまく軌道に乗るには少なくとも数年が必要になります。

このように、プラン1(特許事務所へ転職⇒独立)かなり金銭、肉体、精神的に大変なので、私であれば正直避けたいと考えます。

そこで、次に特許事務所への転職以外の道について検討してみることとします。

プラン2(特許庁任期付審査官⇒特許事務所⇒独立)

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プラン2のメリットは、特許庁の採用試験と内部昇任試験にパスし、一定期間(審査官昇任後7年間、つまり特許庁入庁後最短9年)在籍すれば、弁理士試験を受けることなく弁理士資格が取得できることです。そのため、特許庁勤務においても業務習得に専念しつつ、家庭やプライベートも両立した時間を確保できるでしょう。

プラン2のデメリットとしては、特許庁の任期付審査官は、あくまで臨時での採用のため、募集人数や募集有無が決まっておらず、数年後に募集があるかも不確定な点です。

プラン2も良いのですが、よりリスクを少なくし、将来独立を目指す途として、プラン3(知財部へ異動⇒定年・独立)を検討してみます。

プラン3(知財部へ異動⇒定年・独立)

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プラン3は定年まで企業に所属しながら、弁理士試験、知財部への異動を経て、知財業務の経験を積むプランになります。

そして、将来的な独立にむけ必須となり、企業で習得が難しい「明細書作成の経験」ですが、3つの方法で習得を目指します。

①弁理士会等の研修を受け、明細書の書き方を習得。

弁理士会等などが定期的に研修(有料)を開き、第一線で業務を行う弁理士が講師となって、明細書作成の研修を行っています。こういった研修の開催に網を張っておき、何度も受講することで経験を積んでいきます。知財部に所属していれば、業務に関係する研修として、会社が受講料を負担してくれる可能性もあります。

②知財部の中で、明細書を作成する機会を自ら作り出す。

多くの企業では、明細書作成は特許事務所に外注し、知財部員は特許事務所員が作成した書類のチェックに留まり、自らは明細書を書いていないのが実情です。

しかしながら、自発的に明細書の骨子案という形で作成し、その内容を特許事務所に送付するという活動も可能です。

ただし、多忙な知財部業務をこなしながら明細書作成を行うのは、評価には繋がりにくい上にかなりの負荷がかかるので相当大変です。

可能であれば、明細書作成を知財部内での研修にしてしまうことや、期首目標で目標として定めるなどして、明細書を作成せざるをえない環境を自ら作り出すことも一案です。

③副業で明細書作成をさせてくれる事務所を探す

③はかなりイレギュラーです。未経験者を副業で雇う事務所はほぼ皆無と思いますが、①、②で経験を積んだ上であれば検討してくれる事務所もあるかもしれません。ただし、所属企業の副業規定や上司に依りますし、本業との兼ね合いや秘密保持の観点からも気を付ける点は多くあります。ただし、私の知人でも所属企業から副業許可を取ったうえで明細書作成を行っている知財部員もいらっしゃるので不可能ではないでしょう。これから副業解禁の動きは加速しますからダメ元でも動いていくことで道が開けるかもしれません。

このような①~③の手段を用いながら、明細書作成の経験と社外ネットワークを確保しつつ、企業知財部で定年を迎え、それまで安定した給与を得て退職金も確保した上で、弁理士資格を活かして独立という道が開けます。

リスクヘッジとしては、仮に独立して経営が経ちいかなくとも、事業が貴社知財部での経験と弁理士資格を活かして、大学TLOの任期付き職員などの道もまだ残されている点です。

上記したプランはあくまで一部で人それぞれ状況が異なるので一概にどのプランが良いとは定まりませんが、参考になれば幸いです。





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