“システム開発経験なしの担当者が院内システムの構築に取り組んだ2年間の話” kintone AWARD 2021 登壇内容
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
トップバッターの清水雄司と申します。
"システム開発経験なし"
"兼任の担当者"
これが私の立ち位置になります。
本日はこんな私の2年間を13分間にぎゅっと凝縮してお話いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
「医療を通じて安心して生活できる社会を創造する」
これが当法人の理念です。
患者様やご家族は医療に関わることなので、不安を抱えていらっしゃることが多いです。
なので、当法人の理事長は「治療の前にまずは安心をお届けしましょう」というメッセージをいつも発信しています。
さて、皆さん、在宅医療をご存知でしょうか?
白衣の男性が当法人の理事長、伊谷野先生です。
このように、ドクターが患者様のご自宅で訪問診療などをご提供し、24時間365日、ご自宅での療養生活をサポートしています。
これからの在宅医療を取り巻く環境
"少子高齢化"
この流れから自宅療養者は増え、在宅医療という選択肢もますます増えていくのではないかと思っています。
在宅医療業界の特徴です。
掲載した図のように1人の患者様に関係する事業所や事業者が非常に多いことが特徴です。
例えば、医師や看護師といったような医療職、それからケアマネジャーやヘルパーといった介護職。
これら連携する関係者情報をデータベース化していきたい。
そういう風に考えていました。
ところが、4年前に他社システムを導入して失敗しています。
しかもこの失敗、私がきっかけを作っているんです。
というのも、私は4年前、別の企業に勤めていまして、有名な CRM システム、これを導入していました。
で、理事長にご相談をいただいたときに、そのシステムを紹介して、クリニックが導入して、運用がうまくいかなかった、と。
私はご紹介したあとにたいしたフォローもできなかったので、心苦しく思っていたこともあり、また理事長の考えに共感していたので、今の医療法人社団 双愛会に転職をして、システム担当としてもリカバリーをしていきます。
他社システムでは、やりたいことを実現するなら、追加費用が必要とのことでした。
これはちょっと厳しいな…ということで、更新期限の1ヶ月以内に、他社システムを継続するのか?それとも kintone を新規導入するのか?
こういう選択肢を作りました。
「 kintone は本当に現場主導でできるのか?」
こんな挑戦がスタートしていきます。
"導入相談カフェ"
"電話サポート窓口"
初動は、サイボウズさんのサポートをフル活用させていただきました。
そして、kintone アプリは3日後に完成しました。
他社システムのときは2ヶ月くらいかかっているんです。
また、理事長はこういう風に言ってくれました。
「いいですね!」
「まずは最低限、実績一覧を出せるならそれで十分なんです。ここから修正していきましょう」と。
非常に有り難い言葉だったのですが、ここに現場主導のシステム開発のヒントがあるな、と思ったんです。
"小さく作って、素早く軌道修正"
満を持して、2ヶ月、3ヶ月かけて作るシステムよりも、最低限の要件を満たして、2日後、3日後、7日後といったように、まずは出してみてから素早く軌道修正するほうが、当院には向いていました。
また、チームの声を反映させて、アプリがどんどん変化していきます。その過程を職員も見ているので、その後の定着もいいんじゃないかな、という手応えを感じたんです。
これは私にとって小さな成功体験でした。
「あっ、kintone プロジェクト楽しいな」と。
なので、現場の要望を聞きにいくんだと動いていきます。
有り難いことに、どんどん要望は集まっていきます。
で、できることから即解決です。実際、kintone ならできるんです。
ただ、あれ?と。結構残ったなーみたいな未解決案件も出てきました。
例えば、Aアプリを更新したら、Bアプリのフィールド、これが自動更新できなかったんです。
こういったものがだんだんだんだん増えてきて、
kintone 導入から半年くらいです。私にこういう感情が芽生えてきたんです。
孤独感です。
kintone 自体が悪いわけではないんです。ただ、私が kintone を思いっきり使いこなしているかというと、そういうわけでもなかったんです。
本当にこれであっているのか?
他に手段はないのか?
誰かにこのモヤモヤを共有できないのか?
だんだんこんな感情が芽生えていきました。
これはよくないなと思いましたので、改めて情報収集を開始しました。
そしたら、私にとって転機とも言えるイベントに出会えたんです。
それが、理事長と参加した2年前のこの場所 " Cybozu Days " です。
で、私はここに来て、本当に良かったと思っています。
なぜなら、医療業界で kintone を使っている方々に出会えたからなんです。
当日は、とても参考になる話を聞けました。
特に同じ在宅医療クリニックの事例は、課題が同じだなと思ったんです。しかも、すでに数年前からシステム化に着手している、と。理事長とも「 kintone いいですね!」と話していました。
我々はこのとき、kintone を促進させていくという覚悟を決めることができたんです。
ではこれからどうやって学習をしていくか?ということになるのですが、kintone 界隈、kintone コミュニティには、有益な情報がたくさんあります。
その中で私は4つに分類して、学習を進めていきました。kintone 事例、標準機能、データベース、カスタマイズです。
有り難いことに動画コンテンツも増えているので、時間・場所を選ばすに学習していくことができました。
また、どのように身に着けていったかです。
すごくなくてもいいので、小さくてもいいので、アウトプットに挑戦する。これに尽きます。
アウトプットを意識していると、必要なインプットも見えてきます。これを繰り返していくと、できることの引き出しが増えていきます。
同時に私は、残っていた未解決案件。これにも着手していきます。
だんだんとやりたいことが分類できてきて、すべて解決できたんです。
これは、もちろん私の知識が向上したということもあるのですが、それ以上に連携サービスの力も大きかったんです。
その連携サービスは Customine といいます。
ノーコードでカスタマイズできるサービス…しかもできることがたくさんあります。
そこで、kintone の活用事例として、当院の緊急往診の取組みをお話いたします。
緊急往診、患者様の急変対応を行います。当番制で緊急往診の専用ルートを確保して、24時間365日、緊急出動ができる体制をとっています。
この超緊急時だからこそ、正確性、効率性を追求していきたいと考えています。
もともと我々は Google 製品を活用しています。
で、これだけでもある程度の問題はクリアできていたんです。
ただ、これからもっと、さらに良くしていきたいと考えたときに、kintone で3つの課題を設定しました。
それぞれ説明していきます。
1点目、点在している情報の集約
我々は Google スプレッドシートを使っています。
色々なファイルを開いて、色々なところに入力をして、色々な情報を閲覧して…そんな状態でした。
それを kintone でひとつにまとめたんです。
そうすると、患者様のカルテ ID を入力したときに、救急受付で知りたい情報が関連レコード一覧でパッと出てきます。
救急受付の人も、まとまっていて、見やすくて、わかりやすいと言っていました。
本当にまとまると強かったんです。
2点目、バラツキなく入力
Customine には入力補助がいくつかあり、とにかく便利です。
例えば吹き出しヘルプを設置することで、ちょっとした確認はわざわざマニュアルを開く必要がなくなりました。
また、特定の選択肢を選んだときに、次のアクションのヒントがポップアップで表示されます。
このように、入力者がリアルタイムに気づける仕様になりました。
人が迷わなくなる。
そんな入力サポートが実現できたんです。
3点目、関係者に更新情報を共有
我々は Google Chat を使っています。
これだけでも非常に便利なんです。
ただ、問題は2つあると思っていました。
ひとつは、Chat 情報は蓄積しにくいことです。
もうひとつは、わざわざ Chat 情報を手入力していることです。
なのでこれを、kintone のレコードを保存したときに、Customine を使って、Google Chat に必要な情報を自動通知させる、こういう仕様にしました。
また、ここが大きなポイントなんですが、既存使用で慣れていた Google Chat を使っています。
そのため、新たな教育コストとか定着させるためのコストが大幅に削減できたと思っています。
このように、"小さく、素早く" 現場のアイデアをノーコードでカタチにすることができてきました。
また、成果も出ています。
さきほどお話した取組みで、救急受付1人あたりの作業時間が月22時間減少しました。
そして、費用対効果です。
Customine のような連携サービスを込みに考えても、費用対効果は抜群に良かったです。
これをもし、他社システムをそのまま継続してやっていたとしたら、おそらく費用は2ケタ違っていたんじゃないかなと思っています。
しかも今回は、システム構築の内製化につながっているのも、大きな価値となりました。
3点目。
クリニックとして掲げていた経営指標が、昨年に比べて大幅に向上しています。
患者様やご家族は医療に関わることでもあるので、不安を抱えていらっしゃいます。
なので、我々のサービスを通して、"ご安心"いただけたか?…その目安の指標として、"ご自宅のお看取り数"を掲げています。
この指標が大幅に向上したということは、緊急往診チームのバックアップによって、それぞれの主治医がひとつひとつの診療に、より集中できるような体制になってきていると考えています。
これから先は、医療介護連携に kintone をもっと使っていきたいと考えています。
当院と他の介護事業所や他の医療機関との地域連携やタスクシェアリングの取組みとしても活用していければと思っています。
最後におまけの kintone 事例をお話させてください。
今から3ヶ月前の8月です。地域に非常事態が発生しました。
本来であれば入院でもおかしくない症状の方含めて、コロナウイルスに感染した自宅療養者の方が地域に一気に増えていきました。
また、写真のように、往診は1件ごとに防護服に着替え直して対応をしていきます。
緊急かつ通常とは違う対応が必要な状況です。
このような事態に対して、当院では急遽、コロナ専門ルートを開設して、翌営業日から受け入れを開始しました。
実は、これはさきほどお話した緊急往診チームのオペレーションを一部転用することで、早期に受け入れを進めていくことができました。
後日、地域の関係者の方から「早期に受け入れをしてもらえて助かりました」というお言葉をいただています。
また、現場の最前線で診療をしていた理事長からは、「なんとか対応できたのは、状況に応じて即座に kintone 構築などで後方支援してもらったおかげです」と。
8月…連日の猛暑で、防護服を着て汗だくで、リスクの高い往診対応をしていたことを知っているので、このように言ってもらえて嬉しく思いました。
kintone は、元々使っているアプリに必要な項目を加えて、カスタマイズをして、運用をしていきました。
この事例のポイントは2つです。
医師、看護師、医療事務で集まった多職種のチームで構築できたこと、
また、1時間で実装まで完了できたことです。
ただ、ここに1時間で実装完了と書いていますが、
実際は2年間なんです。
2年前…この Cybozu Days に来たり、院内・院外問わず色々な方に教えていただいたり、あがきながら、試行錯誤したような…そんな2年間がぎゅっと1時間に凝縮できたかなと思っていまして、私自身このような大きな変化に対応できたことを嬉しく思っています。
なので、最後に私なりの kintone をまとめました。
「 kintone …変化に強いツール、変化を楽しめるツール」です。
変化に強い kintone のようなシステムを使いながら、これからも自分たちの可能性にフタをせずに、変化を楽しんでいきたいと思います。
それでは、以上で私の発表を終わりにいたします。本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
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登壇後、写真を頂きました。ありがとうございます。
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