第1話 聞き分けられない音
セクション1 クイズ
...
...
わかりましたか?答えはrです。
納得できない人はこの言葉を声にだして読んでみて下さい。
『ただならぬ(ta-da-na-la-nu)』
歯ぐきに当たる舌の場所がほとんど動かないんですね。5回読んで確かめてくださいね。 rを発音する時は舌が歯ぐきに触れずに宙に浮いてるので、rだけが仲間外れということになります。
続いて<セクション2>で苦手なひとが多いrを訓練してみましょう。
セクション2 音グループ①
r を理解するにはコツがあります。「うぅーーら!」と声に出してみましょう。円い口先を力一杯突き出して「うぅー」と言いましょう。舌が歯ぐきに引っ付く直前の『―(ら!)』がrにだいだい近い音です。ら!の直前の伸ばし棒がrですよ。
単語のrightとwriteが同じ音だけど、wが頭につくのは偶然じゃないんですね。
口の体操です。うさぎの前にはっきりとwをつけて (w-)rabbitと100回練習してみて下さい。「うぅーー(ら!)びっと」。
rとlが全然違うってことがだんだん分かってきませんか?
『聞き分け』と『しゃべり分け』は両輪です。『聞き分け』は自動的・感覚的である一方で、『しゃべり分け』は意識的・理論的なものです。その両者を行ったり来たりするとマスターへの道を進んでいけます。これは野球の素振りのようなもので回数を重ねることで正しいフォームが自動化されていきます。
続く<セクション3>ではr以外の(t,d,l,n)に関する話をします。
セクション3 音グループ②
最初のクイズで仲間外れはrでした。その一方でt, d, n ,lは仲間です。
「仲間です。」っていうのは凄く大切です。(1回目)
「仲間です。」っていうのは凄く大切です。(2回目)
2回もしつこいって?
「仲間」なので区別しづらいんですよ。もっと正確に言うと、区別できなくても当然です!?
アメリカ人がテキトーに早口で喋ったら、ほぼ違いが無いと考えて下さい。
わかりやすく言い切ります。t, d, n ,l はぜんぶたった一つの音 [ſ]と考えてください。(専門家のひとで読んでくれている人はいますか?厳密には正確ではないですね?保険として言い訳しておきます。)
よくある例ですがpuddingは日本では「ぷりん」です。海外のレストランでお水を頼むときは決して「うぉーたー」なんて言ってはいけませんよ。カッコつけてこう言いましょう。「water(わら)」
聞き分けられないとは、どういうことなのか。<セクション4>で考えます。
セクション4 会話を聞くということ
原語で洋画やドラマを観るひとは、これらの音は聞き分けようとしないで下さいね。彼らの口からは事実として [ſ]が発っせられてれています。
どれだけ英語の耳を鍛えようとしても、電車の中で向いの席の日本語会話を一語一句聞くようなことに挑戦してると捉えて下さい。それでも日本語だと会話が盗み聞けような気がするのは、内容がだいたいは想像できるからです。
つまり必要なのは日常会話を繰り返し、英語体験の蓄積からくる「脳内補正力」のほうです。
<セクション5>では海外ドラマで出会った嘘みたいな本当のケースです。面白いですよ~。さあ、It’s party time!(いっつ・ぱーりたいむ)
セクション5 テレビドラマから
90年代にNHKでも放送されていた往年の人気ドラマ、「フルハウス」からの1シーン。
朝ごはんのリビングです。おもちゃが付いてるシリアルとか子供は喜びますよね。7才のステファニーちゃんが箱の中に腕を突っ込んで、人形を探してゴソゴソしてます。怪訝そうにお姉ちゃんのD.J.がしゃべりかけるのですが…
D.J.: Stephanie, what are you doing?
Stephanie: I'm looking for the giant glow-in-the-dark dinosaur.
英語が苦手な読者のために吹き替え版を並べますね
(姉)ステファニー、何やってんのよ
(ステファニー)暗闇で大きくなる巨大恐竜さがしてるの
…
…
違和感を覚えたひとは大正解です。暗闇で大きくなる人形なんてありませんので(笑)、吹替え版が間違っています。水に浸けて膨らむスポンジのおもちゃだったらあるかもしれません。
glowは光る; grow は大きくなるという罠です。lとrで見事に変化を遂げました。
<セクション6>でこの背景を想像します。
セクション6 カバーできなかったのか?
強調しておきますが<セクション5>でみた恐竜のおもちゃのシーンは僕の創作なんかではありません。本当に吹き替え音声のままです。気になるひとはDVDで確認してみて下さい。シーズン2のビーチボーイが登場する回の冒頭部分です。
ここまでを熱心に読んでくれてありがとうございます。
<セクション2>でlとrを何度も練習してくれましたか?違いが分かるようになったかたは日本人なのによく頑張りました!体得おめでとうございます。
それでも残念ながら日本人には、lとrが難しいひとがいるのが現実のようです。
翻訳のプロフェッショナルが間違ってしまいました。作業の手もとに元音声しか届いてなくて納期も短かかった。そんな絵が目前に浮かみます。ゆっくりと時間さえ取れていれば、頭の中で恐竜の映像を浮かべられていたかもしれません。そうしたら、一旦聞き違えていたとしても挽回できてました。
この逸話で示したかったことです。lとrの違いが分かる人はどうぞ笑い飛ばしましょう。こんな珍事件もあるんだと。でもlとrの聞き分けができないひとは悲観しなくていいです。プロでもミスを防ぎきれませんでした。
<セクション7>で音に向き合う心構えをいいます。
セクション7 リスニングの心構え
最後に全体を振り返りましょう。
現実問題としてt, d, l ,n は聞き分けられません。だって[ſ]としかしゃべってないですから。
それに半数の日本人にはlとrが聞き分けられません。これに関してはバットの素振りのごとく、僕は訓練だと思います。でもlとrの判断が速くなってきても、ネイティブと同じ反射神経とはいかないでしょう。
...どちらも詰まるところは脳内補正になるので、1音が聞こえないことは認めてしまいましょう。
あなたのせいではないので、たくさんの英会話に触れることで予測変換力を磨きましょう。
そして脳内スクリーンにちゃんと動画を映せてますか?これって実はすごく単純なことで、右から左に受け流さずに集中して話を聞くってことだと思いませんか?本当のリスニング力とは英語の総合力です。
「聞き分けられない音」はあります。
第1話 聞き分けられない音
おわり//
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