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二元論は身を滅ぼす

 好きな人ができた。同じ講義を取っていて、頭が良くて、明るくて、気遣いができるので、今までどんな男の子にも惹かれなかった私が 嘘みたいに彼の虜になってしまった。嗚呼…こうやって私は凡庸な人間となってゆくのです。これからは家事を覚えて結婚を視野に入れて、子供を作ってママ友との齟齬に苦しみます。だから芸術の道はあきらめて、音楽は聴くだけの身になって、絵は自己満足で描いてインターネットになんか放出しません。TOEICの勉強をして、Adobeのアプリを使いこなせるようになることは後回しにします。

ピピーッッ!!!二元論警察です!!!!!あなたは今「恋愛をする」という事項を「まともな人」というカテゴリに入れて、エンターテインメントへの道を閉ざすべく言い訳をしようとしているのです!!!!!

 好きな人ができてもnoteは書いていいらしい。好きな人ができて、至極自分勝手に彼と結婚をした後の生活に思いを馳せても良いらしい。私は好きな人ができた後もアトリエ付きの部屋を構想して良いらしい。好きな人がいるからと言って、必ずしも就職を検討する必要はないらしい。

 私はこれを知らなかったのだ。恋愛に傾倒したら、就職をして、安定した生活を手に入れることを検討しないといけないと思っていた。だって相手の子だって、慶應まで来てふらふらしている女の子となんてお付き合いできないでしょう。だから恋愛は、私とは無縁のものだと解釈していた。

 私は教育に関わる将来像を自らに望んでいて、教育とエンターテインメントの架け橋になれれば…なんて大仰なことを構想している。そのために何をすべきか、たくさん考えて、教職を取って、もともと院に進むつもりだったけれど 最近は就職をしたほうがいいかもしれない、というような気持へと変化があった。目標が大仰でも、本当は本当に何をすべきなのかわからなくて迷うことばかりで苦しい。こんな大仰なことばかり考えていたら恋愛なんてできないし。恋愛に傾倒したとして、彼との二人きりの秘密は私の目標を達成するのには役立たないし。だからどちらかをあきらめなくちゃいけない。

ピピーッッ!!!!二元論警察!!!!!!二度目なのでゴールド免許剝奪です。あなたは自らの人生の目標を言い訳として、恋愛に対するゲートを意図的に閉ざしているのではないですか??

 だっていざ好きな人ができてみたら、その子のことばかり考えて ほかの女の子に同じように笑いかけていたらどうしようとか、もしお付き合いができてもお互いに忙しくて冷められちゃったらどうしようとか、そんなことに脳みそのリソースを割くようになってしまって まるで頭が霧に包まれるようになってしまったのだ!でも同時に、本当に私は教育に携わりたくて、今の日本のシステムじゃあ学校で苦しみを覚える子供が出てきてしまうということにひどく心を痛めてしまって、そういう苦しみと恋愛感情が潮の満ち引きみたいに押し寄せる。こんなの二元論に逃げ込むしかない。どちらかを諦めて必死にならなくちゃ。どちらも手に入れて素敵な人生にしなくちゃ。これも二元論。最悪です。

 最悪だから、ちゃんと考えて、私はどっちも叶えられる人生にしたい。

 好きな人ができて、私にもいろんな感情がグラデーションになって存在していることが分かった。教育に真摯な先生方を目の前にして気持が改まった。前を向く友人を見て負けていられないと思った。好きな人と目を合わせるとドキドキすることも、この数か月で初めて知った。
 だから、このグラデーションを無理に二色に分けたくない。世の中に白と黒を塗りたくれたらもっと息がしやすいかもしれないけれど、ちゃんと灰色に名前を付けて、淡い色もどす黒い色もしっかりと焼き付けなきゃいけない。二元論は身を滅ぼさないけれど、私が私に納得するために、二元論には別れを告げなくてはならないのだ。


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