映画『新聞記者』

2019年7月に書いた記事が下書きに残っていたのでアップします。


 見る前に熱い応援文をいくつか見た。興味を持ったが腰が引けた。映画館まで足を運ぶ後押しをしたのは横川良明の「強いメッセージ性を持ちつつ、説教臭くならず、エンタメに仕上がっているところがいい」という一文だ。肩の力が抜けた。
 実在の新聞記者のノンフィクションを原案に作られたフィクションである。瞬間的に実際の事件を連想させる描写があるためフィクションであることを忘れそうになる。説得力を持たせているのが隙のない配役がされた俳優陣である。
    ただただまっすぐな吉岡(シム・ウンギョン)の目線は、彼女の生き方にブレがないことを伝えてくる。対して杉原(松坂桃李)からは彼の葛藤、高揚、絶望という心情の揺れが判りやすく伝わってくる。松坂桃李を映画館で見るのはシンケンジャー以来なのでその演技力に驚き、そして強く引き込まれた。
 誰よりも目が離せなかったのは杉原の上司・多田(田中哲司)だ。感情を封印したような表情の彼は、政府の意向そのものに見える。私にとって彼は誰よりもその心情を知りたい存在だった。一度だけ顔をゆがめて動けない状態の多田がいた。その表情の理由がラストにつながる。
 ラストシーンで吉岡をみつめる杉原の表情からは彼のこれからの道は見えない。その先は観客の想像力で決まる。神崎(高橋和也)のようになるのか、多田のような道をたどるのか。私は妻(本田翼)が別の道を一緒に探ってくれたらいいなと思う。
    あっちだそっちだという感想や意見をたくさん見た。偏った情報が多くてこの映画は少し損をしていると思う。この役者たちの熱量を映画館で体感しないのはもったいない。あっちかそっちかこっちかなんて、見て自分が感じればいい。

https://twitter.com/fudge_2002/status/1147301927035609088

https://natalie.mu/eiga/news/319837

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