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個人的2021年アルバムベストランキング

初めまして。音楽好きのYと申します。
記念すべきnote初投稿は自己紹介を兼ねて個人的2021年ベストアルバムランキングにします。

私が日常聴く音楽は年代、国籍、ジャンルそれぞれ雑多であり、音楽変遷について書き始めるとそれだけで長文になってしまいそうなので割愛しますが、2020年の一連の変化をきっかけに音楽の趣向が変化しました。
それまでの自分が音楽に求めていたのは、一言で言えば刺激。それが癒しや安らぎを求めるようになり、アンビエント作品を聴く機会が増えました。
そして音楽情報を得るツールとしてTwitterアカウントを作ったことも大きく影響しました。音楽好きの人と会話する機会は皆無だった日常生活から、多くの音楽好きの方のツイートに触れることで格段に音楽の幅が広がりました。

そんな2021年の新譜から個人的ベストアルバムを選んでみました。
僭越ながら順位もつけさせていただきましたが、あくまでも私のお気に入り順であり、クオリティをジャッジしたのではないことをご承知おき下さい。
それでは30位から順に一言添えながら紹介させていただきます。
(不慣れなためサブスクのリンクが上手く貼れず、ジャケ写のみです)


30. Kabza De Small, DJ Maphorisa, Tresor「RUMBLE IN THE JUNGLE」 

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数年前にSingeliというタンザニアの音楽の奇抜ぶりに度肝を抜かれて以来、アフリカのダンスミュージックは気にかけています。日本の地方都市でアフリカ音楽シーンの全容を追うのは至難の業ですが、中でもホットな南アフリカ共和国の最新クラブミュージックの一つAmapianoの中心人物、Kabza De SmallとDJ Maphorisaの動向はチェックするようにしています。そんな彼らの今年のアルバムがこちら。Amapianoを十二分に堪能できるアルバムです。

29. Little Simz「Sometimes I Might Be Introvert」


2021年Twitterのタイムラインで最も話題になっていたアルバムの一つ。情念を一句一句に注入するようなLittle Simzのラップの迫力たるや、これだけ壮大なオーケストラサウンドと旋律のないラップで対峙できるというのは余程のパワーです。余りの迫力に身震いさせられ、そうかと思うと繊細な曲に心を奪われる。終始圧倒され心を揺さぶられ続けるアルバムです。


28. Faye Webster「I Know I’m Funny haha」


アトランタを拠点に活動する23歳のFaye Websterの4枚目のアルバムはペダル・スチール・ギターの入ったカントリー・ミュージックをベースにした親しみやすいサウンドで、隣で歌っているような彼女の素朴で自然体な歌声は繰り返し聴きたくなる魅力を持っています。


27. Pearl & The Oysters「Flowerland」


フランス系アメリカ人デュオ、Pearl & The Oystersの3作目であり「フロリダ三部作」の最終作とのこと。浮遊感たっぷりのドリーミーなサイケポップは素っ頓狂な明るさや煌びやかさがどうにも刹那的。現実逃避を手伝ってくれます。


26. Weedie Braimah「The Hands Of Time」


ガーナ生まれニューオリンズ育ちのパーカッショニストWeedie Braimahのソロデビュー作。既に数々のコラボレーションでキャリアを積んでいる彼の奏でるアフリカの伝統的打楽器の演奏はとにかくパワフル。このアルバムは参加ミュージシャンも豪華で、トランペット奏者Christian Scottはこの作品の演奏でグラミー賞にノミネートされています。


25. パソコン音楽クラブ「See-Voice」


DTMユニット、パソコン音楽クラブの3rdフルアルバム。とにかく音が爽快で気持ちいいのですよね。特設ホームページにはこのアルバムに込めた想いが綴られていて、読んでから聴くと一層奥行きが広がります。


24. Silas Short「Drawing」


シカゴを拠点に活動するギタリスト・ヴォーカリストのSilas Shortのデビュー作。松浦俊夫さんのラジオ番組「TOKYO MOON」冒頭でこのアルバムの一曲目「Cloudy June」の導入部が流れ、オーガニックなヴォーカルにすっかり惹きつけられてしまいました。心地良く侘び寂びの効いたネオソウルです。


23. James Francies「Purest Form」


現代ジャズの王道を突き進む若き真打、ピアニストJames Franciesの2作目。アグレッシブなアドリブで魅せる従来のジャズの形態を重視しつつ、現代ジャズの風情もしっかり取り込んでいる優等生的な作品です。ハイブリッド作品が増えている現代ジャズにおいて、こういう作品はむしろ新鮮に感じます。


22. Hiatus Kaiyote「Mood Variant」


心地良くハイセンスなネオソウルを聴かせてくれるHiatus Kaiyoteの6年振りの新作。バンドとしては紆余曲折の末リリースに辿り着いた作品のようですが、ジャズやファンクの香りも漂わせた造詣の深いサウンドは流石の完成度です。


21. Marisa Monte「Portas」


ブラジルMPBのベテラン、Marisa Monteの10年ぶりのスタジオアルバムは、不安漂う世相に照らされた陽だまりのよう。抜群の抱擁力で暖かく優しく包んでくれます。この作品も海を挟んだリモートでの録音体制を余儀なくされたようですが、そんな苦労は微塵も感じさせない流石の仕上がりです。ブラジル人女性画家によって描かれたジャケットも音楽のパワーを余すとことなく表現しています。


20. ヒプノシスマイク-D.R.B.- Rhyme Anima「Straight Outta Rhyme Anima」


音楽原作キャラクターラッププロジェクト、ヒプノシスマイク。声優さんがラップするよ、という所からスタートし、今ではコミカライズ、舞台、アニメ、3Dと巨大プロジェクト化しています。楽曲提供者も次から次へとビッグネームが飛び出し、最近は誰が来ても驚かない…嘘です、毎回一人静かに驚きを噛み締めています。
フルアルバムは本作が2枚目で、アニメで使われた曲を収録した作品のためキャッチーな曲が並びますが、声優さんの滑舌の良さとキャラクターの特徴をラップに落とし込む技術は流石プロです。


19. Arooj Aftab「Vulture Prince」


パキスタン出身で現在NYを拠点に活動するArooj Aftabの作品。オバマ元大統領のプレイリストに入っていたことで注目を浴び、グラミー賞にもノミネートされています。民族音楽の雰囲気を感じさせつつも所謂フォークソングのような聴きやすい曲が多いので、ワールドミュージックを普段聴かない人にも馴染みやすそうです。


18. Brendan Eder Ensemble「Cape Cod Cottage」


「引退した歯科医エドワード・ブランクマンが1970年頃に無名ながらも作曲していた作品」という独特すぎるコンセプトの作品ですが、音楽自体は自然体の緩やかなオリジナルジャズ。ジャケットに描かれた可愛らしい海辺のコテージで静かに暮らす老人のさりげない日常を描いたような風光明媚な作品です。


17. Floating Points, Pharoah Sanders, The London Symphony Orchestra「Promises」


46分にわたる壮大なミニマルミュージックは圧巻の一言で、御年80歳のPharoah Sandersの音色は人間国宝というか生きる化石というか、神の領域に足を踏み入れているような神々しさ。2021年のジャズおよびアンビエント業界でそれぞれ大きな話題となっており、後世に語り継がれる作品になりそうです。


16. Bluno Pernadas「Private Reasons」


ポルトガル出身Bluno Pernadasの最新作。自身はジャズ・ギタリストですが、本作のサウンドはジャケットのように色彩豊かなドリーミー・エレクトロポップ。所々にジャズやラテン、更にはクラシック的な要素も盛り込み、飽きさせません。最近のジャズは混沌としたサウンドが好まれがちなので、こういうほんわか温まるようなサウンドはホッとします。


15. Anushka「Yemaya」


UK発女性シンガーとプロデューサーによるデュオ、Anushkaはジャズ・ブレイクビーツ・ディープハウスといったUKクラブミュージックの系譜を受け継ぐサウンドを展開。ジャイルス・ピーターソンが発掘したというのも頷けます。タイトルはナイジェリアに居住するヨルバ族の精霊の名前だそうで、何処となくスピリチュアルなテイストも漂わせています。こういう音、好きなんですよね。


14. Makaya McCraven「Deciphering The Message」


ジャズドラマー・プロデューサーMakaya McCravenがブルーノートの音源をベースに新たなレコーディング音源も取り入れながら最新のサウンドにリミックス。単なるリミックスに留まらない新鮮な仕上がりとなっていて、あの曲がこうなるのかというシンプルな驚きを与えてくれます。サンプリング元曲と交互に聴くとこれまた面白い。


13. Cleo Sol「Mother」


SAULTのヴォーカルCleo Solのソロアルバム。今年母になった彼女の優しさと安らぎで包まれている作品です。最近は所謂ベッドルーム・ミュージックの良作がたびたび話題になりますが、作り手も聴き手もそういう作品を求めたくなるような世相ということでしょうね。以前だったらここまでリピ聴きしなかったかもしれません。


12. Space Afrika「Honest Labour」


広大な宇宙と瞑想する心の深淵は音楽で表現すると表裏一体で、渦をなす音の揺らぎがやがて無へと誘導していき、この上ない癒しを施してくれる。そんな近未来的サウンドを提示するのがマンチェスターを拠点に活動する二人組、Space Afrika。ジャンルでいうとディープ・ミニマルになるらしいですが、こういう音楽はあまり難しく考えずに身を委ねるのが正解でしょうかね。


11. Jaubi「Nafs at Peace」


パキスタン出身のメンバーを中心とした4人組、Jaubi。ギターとドラムスにサーランギーという弦楽器とタブラという打楽器を加えた編成で、フルートとキーボードのゲストミュージシャンが加わってオリエンタルな香りの漂う音楽を聴かせてくれます。サブスクやSNSによりこういうニッチな音楽に容易に辿り着ける現在の環境は素晴らしいですね。


10. L’Rain「Fatigue」


偶発から生まれた叡智の集合体のようなアルバム。一つのコンセプトの元に構想を練られた作品というよりは、溢れ出して止まらないアイデアの一部を羅列したという印象です。L’rainはブルックリン出身Taja Cheekの個人プロジェクトだそうですが、数年後には途轍もなく壮大な音楽を生み出すのではなかろうか。末恐ろしい作品です。


9. Jamael Dean「Primordial Waters」


ジャズピアニストであると同時にラッパーJasik、ビートメイカーJira><としても活動してきたJamael Deanの正式なデビューアルバム。バンド演奏によるジャズサイドと、その音源を元にミックスしたヒップホップ/ビートサイドの二部構成という、彼だからこそ成立する画期的な作品です。ジャズサイドはそのピアノプレイも勿論聴き応え十分ですが、ブルックリンの女性シンガーSharada Shashidharのヴォーカルがオーガニックで絶品です。ビートサイドはアグレッシブなヒップホップでちょっと同一人物とは思えません。


8. Parvyn「Sa」


メルボルンのThe Bombay RoyaleというサイケデリックバンドのヴォーカリストParvynのソロデビューアルバム。彼女自身はインド〜パキスタンにまたがるパンジャーブ地方にルーツを持つらしく、一曲目「Jara」がとにかく強烈なインパクトで、一時期そればかり脳内で反芻していました(笑)。この曲も「TOKYO MOON」で知った曲。彼女について日本語で書かれた情報は皆無であり、自力でこの曲に辿り着く可能性はゼロに等しく、松浦俊夫さんの選曲に感謝です。


7. Fabiano Do Nascimento「Ykytu」


ブラジルのギタリストFabiano Do Nascimentoのギターソロアルバム。ギターのみでここまで芳醇なサウンドを展開するとは素晴らしい。豊かな音楽性と緻密な構成力、そして高度な技術がなければ成し得ないことです。ブラジル音楽よりもアルゼンチンフォルクローレを思わせるメロディは優しくもあり何処か物悲しくもあり、郷愁の念を掻き立てます。


6. 土岐麻子「Twilight」


コンスタントに良作をリリースする土岐麻子の最新作は「黄昏時を優雅に過ごせる曲」というコンセプトに沿った、2021年版シティ・ポップの王道といえそうなチルな楽曲が勢揃いしています。曲毎に異なるプロデューサーを迎えているのも興味深く、同じコンセプトで土岐麻子という才人をどう魅せていくかというアプローチの違いを楽しむのも一興です。


5. Unknown Me「Bishintai」


国内4人組アンビエント・ユニット、Unknown Meの4作目となる1st LP。「電子頭脳と共に旅をする都市生活者のための環境音楽」「心と体の未知の美しさを探求するイマジネイティブ・サウンドスケープ」というテーマなのだそう。例えて言うなら人里離れた現代美術作品を展示するアートな建物のBGMで流れていそうな、孤高の異次元エレクトロサウンド。文字通り心・美・体を追求した結果の産物と言えるでしょう。休日のお昼寝タイムに最適な1枚です。


4. Nala Sinephro「Space 1.8」


ロンドンを拠点にUKジャズシーンで活動するカリブ系ベルギー人、Nala Sinephroのデビューアルバム。作曲、プロデュース、エンジニア、レコーディング、ミキシングを全て自分でこなし、自身はモジュラーシンセやペダルハープを演奏しているとか。その作品は独自性に溢れたスペーシーな近未来的アンビエントサウンドで、参加ミュージシャンもUKジャズシーンを支える第一人者が勢揃いしています。多様化を極めるUKジャズの中でも一際個性的な一枚です。


3. kid fresino「20, Stop it.」


日本人のヒップホップがここまできたかと唸らされたkid fresinoのアルバム。キレッキレの高速ラップナンバーからカネコアヤノ・長谷川白紙など独自の世界観をもつミュージシャンとのコラボ曲まで、彼の音楽性の幅広さに驚かされます。このアルバムがリリースされた時はTwitterのタイムラインが彼の顔で埋め尽くされました。現代のヒップホップシーンを強烈に引っ張っている彼の今後の活躍が楽しみです。


2. Becca Stevens & The Secret Trio「Becca Stevens & The Secret Trio」


アルメニア出身のウード奏者、トルコ出身のカーヌーン奏者、マケドニア出身のクラリネット奏者という、ボーダレスな21世紀だからこそ成立するアンサンブルは聴いたことのない、それなのに何故か望郷の念を掻き立てられる摩訶不思議な音楽を生み出しました。Becca Stevensはジャズをベースに幅広く活躍するシンガーソングライターで、元々フォーク調のトラディショナルソングとも相性が良く、今回の中東の音色も彼女の声が最適解と思えてなりません。奇跡のコラボという言葉は安易に使われがちですが、こういうのこそ奇跡のコラボだと思うのですよね。


1. Clara Presta「Pájara」


アルゼンチン出身のシンガーソングライター&ピアニスト、クララ・プレスタの初ソロアルバムが今年のマイベストアルバムです。
アルゼンチンフォルクローレからフォーク、インディー・ロック、ジャズ、クラシックなど様々なジャンルを内包してブラッシュアップしたボーダレス、ジャンルレスな音楽。何より透明感溢れる澄みきった音が本当に美しい。心が浄化されます。
日本では中南米の音楽というとブラジルのボサノヴァやジャマイカのレゲエの方が親しまれていますが、アルゼンチン音響派と呼ばれるMono Fontanaを始め、こういう美しい音楽を生み出すアルゼンチンにも豊かな音楽の土壌がありそうです。


拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、来年も音楽を楽しんでいきましょう。


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