黄金比


美しさと深い関係にあるといわれる「黄金比」、 雪の結品や花といっ た自然の美しさにひそむ「シンメトリー」など、機能を追求する過程で デザインされた人工物がもつ美を「機能美」という

顔の美しさを表現する際によく使われる要素として、 黄金比. 対称 そして平均顔の三要素がある。ここでは、その第一の要素である黄 公比と、その他の比率について考え,続く二つの章で残りの要素につい それぞれを考察する。黄金比には、誰しもが感じうるとされる客観 的な美的価値があり、誰しもが美しいとする生物学的な信号となってい る可能性がある?

ここで問題として扱う黄金比は, 通常のアスペクト比(矩形形状の長 辺と短辺の比)のごく一部であることを,はじめに注記しておく、 アス ペクトとは,外観,様相,あるいは見方という意味であり語源はラテ ン語の「見えるもの」を意味する言葉であるので,アスペクト比は、正 確には「目に見える面の縦横比率」という意味になる。そして、この比 率により,美感覚や安定感が生まれるのである。

古代ギリシャ以来, 縦横比として,黄金比,白銀比,白金比は最も美 しくバランスの取れた比率として考えられ、 人間の美に対する認識にお いて、重要な役割を果たした。 そして,多くに研究者がこれらの比率が 美的な安定感を与える理由について研究してきた、 小川は、縦横比に関 する美的な安定感の程度(美的安心度)を安定性の尺度と規則性の尺度 の積として表されると仮定した情報エントロピーを導入し、不安や期待 の程度を議論している)。

縦横比として美を感じ, 安定性を認められている代表的な比が黄金比 であり、その比は1:1.618となる。紀元前に古代ギリシャで発見されて 了動l面門が最も美しいと感じる比率とされており, ミロの ビーナス,モナ·リザ, 凱旋門,サグラダファミリア、名刺、なとで使われている。この比率を身体に適応した場合、 たとえばミロのビーナスでは, 床からへそまでを1とすると、床から頭頂までが1.1618であるので、か かる造形美は、審美感情を満たす手がかりともなる. そして、 健康美と も見て取れる。顔への応用に限定すると、モナ·リザの場合は、顔の輪 郭の縦横比が1:1.618であることで、美人と一般には認識されている。

トロント大学やカリフォルニア大学サンデイゴ校での研究結果は、興 味がある。眼-口間隔と眼間間隔による魅力度を調査したところ 口間隔が顔の全長の約36%眼間間隔が顔の幅の約46%の比率が一。 魅力を感じたという結果を得て, 「新しい黄金比」と名付けた。 美人と される顔を対象に, 顔の高さ/目と口の距離が0.36 で, 両眼の間隔/顔 の幅が0.46とされた報告であるしかし、 新しい黄金比として, これ らの比率をそれぞれ0.380と0.495とすべきという意見もある。

さらに、顔パーツ別の比率をみると, 頭から顎: 頭の幅, 頭から瞳 孔:瞳孔から唇,鼻先端から顎:唇から顎, 鼻先端から顎: 瞳孔から鼻 先端、鼻の幅:唇から顎,両目の外側の距離:頭髪の生え際から瞳孔、 唇の長さ:鼻の幅のそれぞれの比が1:1.618であれば, 黄金美が証明 されたことになるが, いまだ顔パーツ別の詳細にわたる検討はなされて いない。

歯科においても,審美歯科では特に理想的な美的比率が重要視されて いる。ただし,歯列は歪曲し, 奥歯に進むほど唇で見えにくくなるの で,審美の対象は前歯, しかも上顎前歯となる。美容歯学の分野でも, スマイル·ラインの確保は, 補綴治療やインプラント治療の最終段階 で、きわめて重要な点であると同時に, 歯科衛生士の間ではスマイル作 戦が盛んであり、重要な患者教育の一環として実施されている. 審美歯 科医のレビンによると, 上顎前歯2本を対象とした場合,歯ぐきから歯 の先端までを1とすると, 2本分の歯の幅は, 1.618 と黄金を示すと美し い歯として見える.上顎中切歯の縦横比が黄金比になるように見え
ると完全なスマイルが具現できる。さらに, 中切南と倒切歯の幅の比 であると、理想的なスマイルと考えられている")。 や,犬歯を含む前3本の幅と小臼歯から唇の端までの比なども黄金比

特定された縦横比に美を感じるの 上述の黄金比だけでなくは かにもある。白銀比とは1:1.414となる比のことで, 別名を大和比と も呼ばれている。日本の木造建築に古くから使われている比率で、 法隆 寺金堂や五重塔,仏像, あるいはA4用紙などがある。 その他、1: 1732の比を示す白金比とか, 1:3.303の比を示す青銅比などがある。 業あるいは美的意識や美的感覚に国際性を期待するのは愚である。 美 はいたって個人的な事案であり、また社会性も帯びている。そのため、 欧米人に認める美的安定度としての縦横比と日本人の好むそれとは、必 ずしも一致する必要はない.そして,人々の好みは文化,時代,世代に よっても変遷するし、 国民性にも反映される". 小川は、そのなかにはあっても自然や芸術の分野で最も美しく完璧な縦横比である黄金比、白銀比,自金比のいずれもこの美的安定度が比較的高いことを示した"。
ここに,興味あるデータがある. 中村”のデータに基づいて、 羊 田1-15は縦横比1から段階的に2.5の10の異なる比を示して、 日本人が どの比率形状を好むかを棒グラフに整理した。その結果, 18%近くで一 番人気のあったのが1.43比で、 これは白銀比である、次が、 17.5%の日 本人が好ましく感じた1.0 の正方形であり, 第三番目が欧米人の間では 一番人気の黄金比で,日本人の間では15%であった。

顔の魅力に関する議論では, 顔の比率以外にも対称性や平均性につい ての議論も必要である。

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