中華CO2レーザーカッター 光軸調整編 「垂直方向の光軸調整で悩む」
どもどもYanでっす。
本日のお題は「レーザーカッターの光軸調整」でっす。
コレちょー大事。
CO2レーザーカッターの仕組み
CO2レーザーカッターはレーザーチューブから発射されるレーザーを3つのミラーと1つの集光レンズで素材の表面に照射してます。
入射角=反射角という反射の法則を使ってレーザーを素材に対して真上から照射しているのが上の図。これはあくまでも理想の図で、実際は部品の精度とか組付けの精度とかいろいろズレを生む原因が存在している。
僕の買ったやつは表面に彫刻するレベルでなら、かなりまともに見える感じで調整されてました。最初にテストでレーザー照射した時点で第三ミラー手前まではズレがなく届いている理想的な状態。
…に見えた。
しかし、どこまでの厚さまで切断できるのか試しているうちに、特定の方向の切断面が目視でも簡単にわかるレベルで傾いているが発覚。
上の写真は厚さ6mmのアクリル板を切断したときの切断面。
向かって左右がY軸方向の切断面でこっちはまったく問題なし。手前から奥方向がX軸方向の切断面。1辺20mmで切ってるんですけど、露骨にわかりますね。傾き。
とにかく情報取集!
レーザーの経路に何かしら問題があって傾いているのは確実。調整が必要というとこまで判明したので、情報収集開始。
情報少ないんですけど…
光軸調整について調べていくと、第一ミラーから神経質なまでにミラーの中心にレーザーを当てるように調整して、最後はノズル先端の中心からレーザーが出てればOKというような情報が多く登場します。でもこれ実践しても解決しないことの方が多いような???
それとも巷で出回ってる中華CO2レーザーカッターは、ネットで見かける情報通りの調整でも改善しちゃうような、いい加減な調整しかされてないってことなのかな?切断面がそもそも滑らかじゃないとかいうレベル?
僕のケースでは、これでは改善しませんでした。
状況を整理してみよう
・第一ミラーで反射したレーザーはY軸と平行に第二ミラーに当たっている
・第二ミラーで反射したレーザーはX軸と平行に第三ミラーに当たっている
ここまでは大丈夫。下の図のように第一ミラーから第三ミラーまでのレーザー経路を真上から見た状態では問題なさげ。
集光レンズのあたりで問題が起きてるんじゃね?
レーザーカッターについてというよりはレンズについて調べていくと、日本語でもたくさん情報が出てきます。関係ない情報も多かったけど、どういうことかはだいたい分かりました。
集光レンズから先でレーザーが斜めになる原因は主に2つ。
・集光レンズに対して斜めにレーザーが当たっている
・集光レンズの中央からズレた位置にレーザーが当たっている
ほとんどの場合この2つの原因どっちも当てはまりそう。
僕のケースはX軸と平行に切断すると断面が傾いて、Y軸と平行に切断すると傾きがないことから、集光レンズの手前側にレーザーが当たっている、あるいは手前から奥へ傾いて当たっていると推測。見た感じ、第三ミラーの入り口の円の真ん中をレーザー通ってるんです。ヘッドの部品は削り出しパーツぽいのでそこまで精度低くはなさそうなんですが、Y軸と平行にズラせるので動かしてみようとしたら今までの予測が間違っていることに気が付いてしまいました…。
ヘッド傾いてるやん!!!!
ヘッドは金属プレートに垂直になるように取り付けられてるんですけど、このプレートがどうみても傾いてる。プレートもよくよく見ると切り出したままバリ取りもせずに塗装してあるだけっぽい。さすが中華クオリティ。バリは金ヤスリで取っておきます。プレートは曲がっていないので、原因はプレートの取り付け部?
ボルトを外してみてビックリ。X軸のレール上にガントリープレートがあるんじゃなく、レールの下側にレールを挟む車輪を保持する強度のある部品があって、レールを挟むように手前と奥に細い真鍮スペーサーが上に伸びていて、このスペーサーにプレートを載せて固定しているという、かなり無理やりに見える固定。スペーサー3本の上面を水準器で水平を確認すると、明らかに奥側の1本が高い。
スペーサー下側は溶接とかされている訳じゃなくて、ネジ込まれてるだけなので、手前のスペーサー2つを外して下にワッシャを数枚かませて水平にしてみます。
コレは失敗。
第三ミラーの位置が第二ミラーから反射されてくるレーザーの経路よりもだいぶ高くなってしまってノズル先端からレーザーが出てきません!
下の図よりさらにひどいズレだったってことですね。
第三ミラーのあるヘッド部分はY軸と平行に移動させることはできるけど、高さを調整する機能はありません。第二ミラー、第一ミラーに関してもレーザー経路を上下に平行移動する術はありません。ミラーの位置が上下に平行移動してもレーザーが反射するポイントがズレるだけでレーザー経路は変化ないわけで…。
レーザー経路を上下に動かすにはチューブの設置位置を動かす必要があるんですが、調整できるようなチューブマウントではないんですよね…。上方向にズラすので、マウントの下にワッシャ入れて高さ調整する予定でしたが、僕の買った機械、第一ミラーの調整ネジとかホットボンドで固定されてるんです。調整してあるから動かすなってこと?
チューブいじったら第一ミラーも調整しないとならないので、こっちはあまり手をつけたくない感じ。
という訳で別のアプローチを考えます。
レーザーの高さが固定されてるなら、ヘッドを下げればいいじゃない!
幸いスペーサーは真鍮製。さほど固い金属じゃないのでヤスリでも削れます。このスペーサーを短くしてヘッドの高さを低くしてしまおうという作戦。
それにしてもスペーサーは3本とも40mmのやつで長さ同じなのになんでこんな傾いてるんだろと、X軸周りを測定してみたら…
X軸のレールがX方向には水平だしY軸とは直角になってるんですが、Y方向で手前が低くなってました!イメージとしては下の図みたいな感じ。
レールそのものの傾き修整はちょっと厳しいので、当初の方針通りスペーサーの加工でヘッドプレートを低く水平にします。
あまり削りすぎてしまうとプレートがX軸レールの上をこすってしまうのでまずは高くなってる奥側だけ削って水平にして様子を見ることに。
奥側だけ削って水平を出してプレートを載せると、ヘッドが想像以上に上に上がってます。
第三ミラー入り口の穴のかなり下の方にレーザーが当たってしまってるんですね。さっきも出したこの図。
まさにこの状態でした。今度はY軸方向の切断面で傾きが…。
これはミラーの中心から上か下にズレてレーザーが当たってるせい。僕の場合はミラーの中心より下にレーザーが当たってて集光レンズの中心からX軸プラス方向にズレて当たって傾いてる。
ミラーを平行に下に下げてあげればいいんだけど、ミラーの高さを低くするにしても、限界まで下げても全然下げたりないので、ヘッド保持プレートを保持してるスペーサーを3本とも削ってヘッドごと下げるしかなさそう。
後でミラーの位置を高くするのはワッシャをかませるなりすれば可能なので、思い切ってX軸レールに当たらないギリギリまで下げてしまうことにします。
奥側は2mm削った上にさらに2mm削ったので都合4mm、手前は2mm削った状態でギリギリになりました。
ヘッドまで取り付けて確認するとギリギリ入り口の円の真ん中くらい。これ以上はチューブの高さを高くするしかなさげ。
第三ミラーの中心付近にレーザーが当たっていると仮定して、垂直に真下に向かうように第三ミラーを調整します。
といってもヘッドの集光レンズは直接見えないのでノズル先端にテープを貼ってテスト照射。
テープに開いた穴の位置がノズル先端の穴の中央にくるように第三ミラーの角度を調整します。
そしてノズルの長さを変えて再度テスト照射。テープに開いた穴の位置とノズルの長さの変化から、どちら方向にレーザーが傾いてしまっているかを確認して第三ミラーを調整します。
X軸と平行方向にスポットの位置がズレているのであれば、第三ミラー上でも書いたように第三ミラーにレーザーを当てる位置が高いか低いかになってます。上の図のように、ノズルを伸ばしてテスト照射したらスポットが左にシフトした場合、まず第三ミラーのネジで調整を試みます。
ネジでのミラー調整について
ミラーは第一から第三まで上の図のような調整ネジが3つついています。この調整方法を誤解している人が多いので、正しい使い方を説明します。
レーザーがX軸のプラスマイナス方向に傾いている場合、上の中央の図でいう赤いラインを軸にしてミラーの傾きを調整します。正しい使い方は赤いネジ1つで調整するんですが、緑と青を使って調整するという間違った使い方が結構流布してるんですね。それぞれ軸が存在しているので1つのネジでいいというのを覚えておきましょう。
3つのネジを駆使して、ノズルを伸縮させてもスポットの位置が中央からズレないようにします。ノズルの中央からは少しズレているけど、ノズルを伸縮させてもスポットの位置は動かないというのであれば、OKです。そのままの状態で使いましょう。
調整していて、どの角度にミラーを調整してもダメという場合は第三ミラーの中心にレーザーがあたってません。Y軸と平行方向のズレである場合は第三ミラーというかヘッドそのものを手前か奥に平行移動します。X軸と平行方向のズレの時は第三ミラーを上か下に平行移動します。ミラーの上下は調整ネジを3つとも同じ量だけ締めたり緩めたりすることで可能ですが、上方向はそれなりに移動量があっても下方向は少ないです。これ以上ネジじゃ下げられないとなったら、ヘッドそのものを下げる努力をしましょう。
物理的にヘッドそのものが下げられない場合(僕のようにすでに限界まで下げてるケース)はレーザーチューブを平行に上に持ち上げてあげる必要があります。頑張れ!
僕はヘッドを限界まで下げることでなんとか納得できるレベルの状態まで持って行けました。
まとめ
ぶっちゃけ第一、第二ミラーのど真ん中にレーザーを当てて反射させる必要はありません。レーザー経路がY軸とX軸と平行になっていて、第三ミラーの中心にレーザーを当てることが最優先。設計通りに寸分の狂いもなくミラーやレールが組み立てられていれば調整していけば各ミラーのど真ん中にレーザーが当たるはずだけど、そこまで精度の高い部品や組立でもないのが中華クオリティー。
ネットでいろいろ情報を漁っていると、ミラーやノズル先端にマスキングテープを貼ってテスト照射して穴の位置でどこにレーザーが当たっているか見る方法がたくさん紹介されてます。でもマスキングテープってすぐに焦げて煤が出るのでミラーが汚れやすいんです。そこでミラーを汚さないテープ紹介します。僕は透明の梱包テープ使ってます。これだとマスキングテープと違って燃えにくい。マスキングテープよりは穴が開き難いので、少しだけレーザーを強くしてあげるのがポイント。
これだとノズル先端に貼り付けると糊にノズルの形で跡がつくので、貼ってレーザー照射して剥がせばノズルの真ん中から出てるのか端に寄っているのかはすぐにわかります。マスキングテープだとミラーの手前に貼るのは問題なくても、ノズル先端は難しいので特にオススメ!
最後に一から調整する場合の一般的な手順を書いておきます。
前提条件
・ヘッドのノズルチューブがベッドに対して垂直なこと
X軸、Y軸が直角に交わってなくてもミラーの角度を変えればそれぞれの軸に対して平行なレーザー経路にはできますが、第三ミラーから先のノズルチューブに関してはベッドと垂直でないと切断面が傾きます。ここだけはしっかりと確認した上で調整しましょう。でないと最初からやりなおしになります。
光軸調整の一般的な手順
①レーザーチューブから第一ミラーの中心にレーザーがあたるようにレーザーチューブの高さを調整する。レーザーチューブは水平になるようにすること
②第二ミラーの入り口の中心にレーザーがあたるように第一ミラーの傾きを調整する。Y軸原点と一番遠いところでレーザーの当たる位置にズレが出ないようにする
③第三ミラーの入り口の中心にレーザーがあたるように第二ミラーの傾きを調整する。X軸原点と一番遠いところでレーザーの当たる位置にズレが出ないようにする
④③で調整して第三ミラーの入り口中心からどうしてもズレてしまう時はヘッドの水平位置、高さを調整可能ならヘッド側で調整する
ヘッド側の調整で上手くいかない場合はレーザー経路第三ミラーの入り口中心にくるようにレーザーチューブの位置を調整する(特に上下は真ん中にくるようにする)
⑤ノズル先端にテープを貼りレーザー照射。ノズルを上下させてテープに開く穴の位置を確認し移動していたら第三ミラーから集光レンズに傾いて照射されているので第三ミラーの調整をする
⑥⑤の調整後ノズルを上下させてレーザー照射してもテープにあく穴の位置がズレなければ調整完了
⑦⑥で調整しきれない場合は第三ミラーの中心にレーザーが当たっていないので①からやり直し
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