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3Dプリンター トラブルシューティング⑦ ベッドに定着しない、途中で外れる

どもどもYanでっす。

今回の症例はコレ!

FDM方式の3Dプリンタ使いなら誰でも経験するトラブルと言ってもいいベッドへの定着問題。特にエンクロージャーのついてない低価格帯のプリンタは自動でベッドとの距離を補正してくれる仕組みがついてないため、レベリングの難易度が高くて定着に悩まされがち。

原因

・ノズルとベッドの距離
・ベッドが汚れている
・1層目のプリント速度が速すぎる
・気温が低すぎる

主な原因はこれくらいかな?それぞれ説明していきます。

ノズルとベッドの距離

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ノズルとベッドの距離が適切に調整されていないとベッドに上手く定着しません。近すぎるよりも遠すぎる方が影響が大きくなりがち。FDMプリンタではZ軸をホーミングしたときのベッドとノズル先端の距離は0.1mm程度が良いとされています。上の図はノズルとベッドとの距離と1層目のプリントのされ方。

適切な場合はノズルから出たマテリアルがベッドに押し付けられて少しだけ横にはみ出し、隣のラインとの接合を強くします。

これが遠すぎると、1層目のプリント時にノズル先端がマテリアルをベッドに押し付ける力が弱くなって、横に広がりません。遠すぎると隣のラインとくっつかずに離れた状態になってしまうことも。図の下の部分のようにライン間に隙間があったら遠すぎる可能性アリ(フローが少ない可能性もある)。遠すぎるケースではライン間に隙間が出来るだけでなく同一ライン上に点状にマテリアルがベッドに置かれるような感じになることもあります。

近すぎる場合はマテリアルを押し付ける力は充分で、横にもはみ出るので横のラインとの接合はしっかりする。でも、ブリムを使って反り防止してるときに問題になることが。症例紹介で出したやつのように、1層目が薄いので反りやすく、ABSなどの反りやすいマテリアルでは反って端が浮いて、上の方でノズルがプリント物をはじいてベッドから外れてしまうってことが起きます。

遠すぎる場合はプリント開始時からもじゃもじゃになったりするので、すぐに気が付くのだけど、近すぎる場合は、ある程度まではプリント出来ているけど途中でプリント物がベッドから外れて失敗する傾向があるので精神的なダメージが大きい。

ベッドの汚れ

これは主に人間の皮脂が原因。油脂がベッドに付着しているとベッドへの定着が悪くなります。マスキングテープとか粘着力が強いときに手の甲に一度貼って、皮脂を付けて粘着力弱めたりしませんか?あれと同じ。

ベッドの素材ごとに適した清掃方法があるので、間違った方法で清掃してると知らず知らずのうちに定着力が落ちているなんてことも。

1層目のプリント設定

既にプリントされているマテリアルの上にプリントを積層していくのと違って1層目はベッドに対してマテリアルを定着させる形になります。プリント速度が速すぎたり、冷却が強すぎたり、設定が原因で定着しないということも起きがち。そのためにスライサーは1層目だけ別に設定がいろいろと出来るようになってるんです。

気温が低い

これはABSで顕著です。気温が低いとプリントしたあとのマテリアルが急に冷えて大きく収縮します。このせいで端から反ってベッドから浮き上がってきて、反りがひどいとノズルが浮き上がってきたプリント物をはじき飛ばす形でプリント物がベッドから外れて、もじゃもじゃ様を召喚してしまうことに。

対処法

原因は上にあげたように多岐に渡るのだけど、それぞれ先人たちが考えた対処法がハッキリとしているので、紹介していきます。

対処法その①

まずは簡単に出来るのでベッドをクリーニング!

Anycubic i3 MEGAシリーズのUltrabaseのように特殊な樹脂でガラスがコーティングされていたりするベッドはクリーニングに使う液体は注意が必要です。

エタノールでの清掃が推奨されているんですが、これ特殊なコーティングを侵します。エタノールで脱脂するたびに少しずつコーティングが溶けていって段々ツルツルに。なので特殊な樹脂でコーティングされているベッドは基本的に水拭き。水拭きは頻繁にやってもOK。これでどうしても定着が回復しなくなったら、エタノールでサッと拭いて脱脂をしましょう。普段は水拭き。これ大事。

何かでコーティングされているベッドだけどエタノールで拭いても大丈夫かよく分からないときは、ティッシュにエタノールを含ませてプリントで使わないような端をこすってみましょう。ティッシュに汚れじゃなさそうな色がついたら樹脂が溶けている可能性があるのでエタノールの使用は極力避ける方がいいです。(Ultrabaseは黄色っぽくティッシュに色がつく)

中性洗剤も注意が必要です。樹脂を侵すということはないし油分も除去できるんですが、界面活性剤が入っているのでよーく拭き取ってあげないと逆に定着落ちます。

ガラスだったり金属むき出しだったりする場合はエタノールなりイソプロピルアルコールなりでがっつり脱脂してOK。

PEIシートと言われている定着を良くするシートが貼られているベッドも耐薬品性が高いのでエタノールでもイソプロピルアルコールでもOK。がっつり脱脂してあげれば定着回復します。

対処法その②

基本中の基本だけどレベリングをしっかりと行う。でも低価格プリンタではかなり厳しい。ベッドの下の4つのネジだけでノズルがどこの位置にあってもベッドとノズルの隙間は均一なんてかなり無理があります。

最低限マニュアルでもいいのでメッシュレベリングくらいは可能なようにファームウェアを書き換えるくらいはやっておきたい。

Anycubic i3 MEGA系だとカスタムファームウェアって言われてThingiverseに公開されてるやつで使えるやつ。

Anycubic i3 MEGA/MEGA-Sなら本体をまったく改造しなくてもカスタムファームウェアは使えるのでとりあえずはメッシュレベリングを出来るようにしてもいいかと。

あるいはBLTouchとか3DTouchと呼ばれているセンサーとかPrusaでも使われてる近接センサーとかを使ったオートレベリングが出来るように改造してしまうのも手。レベリングにほとんど手間がかからないので、かなり楽になります。Thingiverseを探せば、有名どころのプリンタなら大抵センサーを取り付けるためのマウントデータがあります。i3 MEGAとかEnder-3とか。

MEGA/MEGA-Sユーザーはこちらの記事を参考にしていただければオートレベリングが可能です。

対処法その③

ベッドは綺麗に脱脂した。レベリングもしっかりとやった。それでも定着しない部分が出てきたりします。3DBenchyでいうと底面の文字とか。

一層目のプリント速度などの条件を見直してみましょう。Initial Layerのプリント速度はかなり遅め。20~30mm/sくらいを目安にすると定着しやすくなります。またプリント温度やベッド温度も通常時より少し高くしてあげることでベッドへの定着がよくなります。温度が高いことでマテリアルの流動性が上がり、ベッドに定着しつつあるマテリアルをノズルが引っ張って剥がしちゃうことを防げます。

Initial Layer Line Widthを少し増やすとか、Initial Layer Flowを少し増やすなどして1層目のライン幅を太くしてあげても定着しやすくなります。Initial Layer Heightを通常のレイヤーの高さよりも増やすのも効果アリ。

冷却も極々弱め(あるいはInitial Layerだけ冷却なし)にすることで吐出されたマテリアルがゆっくり冷えるので収縮でベッドから浮いてしまうことを防げます。

今までスカートしか使っていなかったのであればブリムの使用がオススメ。プリント物の端だけ反ってしまうなんてときもブリムは効果を発揮します。

対処法その④

外気温対策の一番お手軽なのはDraft Shieldを使う事。大きな効果は見込めまないけど、プリント物の周囲に壁を作ることで温かい空気をモデルの周囲に保持できるようになります。冷却ファンを強く回転させてしまうとshield内に留まろうとする暖かい空気を吹き飛ばしちゃうので、しっかりとした冷却が必要な部分が多いプリントではあまり効果が見込めないという弱点も。

これでもダメだったら段ボールとかを被せたりして外気をシャットアウトした状態でプリント。メンテナンス性落ちるのでいいことばかりではないですけど、室温10℃台でも囲んだ内側は30℃以上にできるのでABSの反り防止にもなり、急激に冷えてベッドから外れるという事故は起こりにくくなります。

IKEAで売っているテーブルをエンクロージャーに改造してしまうのが巷では流行っているみたい。外気をシャットアウトできればいいのでとりあえず効果を体験するだけなら段ボールを被せてしまうくらいでも行けます。実際僕のエンクロージャーはAmazonの段ボールを3個くらい切り貼りしたやつで、内部温度は40℃くらいを保持できてます。

ステッピングモーターの運用気温範囲はだいたいマックス50℃くらいとなっていることが多いので、エンクロージャー内部の温度が上がりすぎないように注意しましょう。密閉状態かつベッド温度100℃で長時間(1日とか)のプリントすると内部は50℃超えることもあるはず。

対処法その⑤

ABSのように収縮の大きなマテリアルをプリントするのに気を付けたいこととして、infillの密度があります。プリント物の強度に影響してくるので、密度を落とせない場合は使えない対処法だけど、さほど強度がいらないのであれば密度を下げてあげることで、内側で収縮してウォールを内側に引っ張ってさらに収縮するという影響を小さくできるので、反りを抑え込めることが多くなります。

対処法その⑥

先人の知恵でヘアスプレーやスティックのりを使うというのも有効な対処法としてよく知られています。定着力を増す目的で使うものなので、まずはクリーニングやレベリングできちんと定着できないか試してみる方が綺麗な底面を得ることができます。あと定着強化のためにこれらを使うとベッドのクリーニングが面倒になるのでどうしても端が反っちゃうとか、そんなときに使うのをオススメします。

まとめ

ベッドへの定着に関してはいろいろな原因があり、一般的なケースは網羅れきたんではないかと思ってます。

もしここにここに書かれている対処でもダメだったってことがあったらコメントください。調べて原因、対処を追記したいと思います。

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