Aside Archive

これは何?
どこぞの絵描きの人のDiscordではキヴォトスのオリジナル生徒を作って遊んでるみたいな話を聞いて面白そうだなと思って考えたうちの子で長い話を作ろうかと考えたのですが本編とは関係のないところでこいつらが延々と青春してるのを書く方が面白いのではと思って始めるやつです。今日の話を書くいつもの形式です


登場人物紹介

著莪(しゃが)ムツミ
トリニティから百鬼夜行に潜入してるスパイ。元自転車競技部でストイックな性格。新聞配達のバイトをして食いつないでいるが根がお嬢様なので生活費が高くつき金欠になるとお祭り運営委員会でやってる屋台のバイトに参加している
赤みがかった黒髪。金髪のトリニティモブと同じ髪型。イズナやツクヨ達が着てるのと同じ意匠のセーラー服だがティーパーティモブみたいに腰あたりから羽が出てるので若干ヘソ出し気味。百鬼夜行の生徒としては自称天狗で通している。それなりにデカい。ミカほどではないがカズサよりはある

五島(ごとう)イサカ
ゲヘナから百鬼夜行に潜入してるスパイ。ゲヘナ帰宅部の二人と仲が良いので若干チャラい。蕎麦屋でバイトをしている。休みの日はバイト代でお祭り運営委員会のやってるお祭りで買い食いをしてる
がらがらどん(2号)みたいな感じの角。百鬼夜行の生徒としては自称鬼で通している。銀髪。万魔殿モブと同じ髪型。普段のスタイルは和装。フィーナの服の色違いを着崩さない感じ。あとそんなに乳はない。イオリとどっこいな感じ

プロローグ

 百鬼夜行の朝は早い。修行部の眠り姫が夜警を終えて帰宅しようとする頃には既に私の朝の仕事は始まっているのだ。元自転車競技部の華麗なドラテクで碁盤の目のような路地を駆け抜けながらポストに丸めた新聞を投げ込む。最初は律儀に停車して投函してとやっていたがそんなチンタラやってたら午前の授業に遅刻してしまう事を就業から3日で悟ってからは毎日これだ。要は紙の弾丸で曲芸射撃をやってるのだと思えば意外と何とかなる。実際できてるし
いつもの曲がり角に差し掛かったので自転車のベルを鳴らして存在を知らしめてからポケットから500円玉を取り出して曲がった瞬間に目標を確認して即投擲。大将が機械のような正確さを発揮し右手でキャッチして左手で笹に包まれたおにぎりを放ってきたのでこちらもキャッチ。これも毎日の流れ。朝のルーティーンだ
今日はほぼノーミスで配達区域を全て回れたので公園でお茶を飲みながらゆっくりとおにぎりを食べられる。ミスが多いとおにぎりを咥えながら校舎まで全力疾走をする事になる。先週の木曜がそうだった。黙々とおにぎりを食べていたらむせそうになったのでお茶で流し込む。百鬼夜行の自販機の焙じ茶も悪くはないのだがやはりいつも飲んでいたトリニティの専門店の茶葉が恋しい
「はあ…早く帰りたいなあ…」
「よっ、午前の授業はこれからなのにもう帰りたいの?ムツミちゃん」
「うわっ…イサカさんでしたか。どちらかといえばホームシックですね。田舎の味が恋しい的な」
「なるほどねえ」
深く頷く度に銀髪が揺れる。立派な角を2本生やした彼女の名はイサカ。似たような時期に転入してきた級友だ
「あたしも遠くから越してきたから何となくわかるよその気持ち。学食のカツカレーも美味しいけどシュニッツェルが食べたい日もある。そういうやつだよね」
「そうですね、多分同じやつだと思います。あっ、あんまりのんびりしてると遅刻しちゃいますよ。後ろ乗ってきますか?」
「おっ、サンキュー。じゃあ荷台に失礼して…」
「「Let’s Go!」」
こうして今日も私達の百鬼夜行連合学院での一日が始まる



7/27


「あーつーいー!死ぬっ!この辺で温泉開発部が暴れたりしたの!?」
「そんな唯でさえ魑魅一座のデカいのとか見てるだけで暑苦しいのに胡乱な組織まで百鬼夜行に来たらこの世の終わりですよイサカさん。こういう時はアレです。屋台で売ってる冷やし胡瓜。安くてよく冷えてて適度に栄養価が虚無なので放課後の間食にちょうどいいです」
「そんなジジ臭い物ばっかり食べてたらあたし達の青春おしまいだよ!?もっと甘くて美味しいもの食べにいこうよ。百夜堂のあんみつとかさあ!」
「『今年もリゾート戦争があり準備期間に入るので暫くお休みします』って貼紙今朝見かけましたよ」
「嘘っ!もうこの世の終わりと言っても過言ではないじゃん。仕方ないから河童に謝ってきゅうりでも食べようかムツミちゃん」
「河童に謝る必要性がよくわかりませんが行きましょう…ああっ!また魑魅一座の変な奴が屋台を!許せません。イサカさん、援護を!」
「おうとも!食べたかった冷やし胡瓜の怨み!」

8/2

「ですから嘘じゃないんですって!さっきトランクを片手に持った痴女スレスレの生脚ハイレグバニーが逃げているスケバンを追いながら私の自転車の前をダッシュで駆け抜けていったから急ブレーキ踏んだんです!」
「冗談も休み休み言いなさいよ。ほらヴァルキューレの人来るから詳しくはそこで話そ」
「お呼びになりましたか。ぴょん」
「うわっ!本当にいた!」
「だから言ったじゃないですか!」
「事情は何となく察しました。指名手配犯を追いかけていた私が行けるだろと交差点を大ジャンプした時にお姉さんが急ブレーキを踏んで『煽り運転かテメー!』みたいな感じで揉めてらっしゃるのですね。ひとえに私の責任です。すみませんでした。ぴょん」
「うーん、本当にいたなら仕方ないよなあ…今度からは気を付けて横断歩道を渡ってよねバニーのお姉ちゃん!」
「肝に銘じます」
 
「って事があったんですよイサカさん」
「萬年参でもこっそり食べたのムツミちゃん…?連日の猛暑のバイトで疲れてるんじゃないの…?」
「だから本当なんですって!」

8/10

「夏休み!リゾート地で稼げるオススメアルバイト!って情報誌に載ってるから来たらこれヘルメット団じゃないですか!しかも何ですかリゾート狩りって!」
「しかもこれ魑魅一座含めたあっちこっちの危険集団と最後の一組になるまでバトルロイヤルする形式みたいだよムツミちゃん」
「勝ったところでキヴォトス中から恨まれる奴じゃないですかそれ!」
「なので私達が取るべき道はひとつ。このヘルメット団をブッ倒した上でこっそり逃げてリゾート客に紛れ込む事。百夜堂の貼り紙にあったリゾート戦争ってこれらしいから残りの夏休みは百夜堂に逃げ込んで毎日あんみつ食べてようよ」
「うう…せっかく夏にバリバリ稼ごうと思ったのにこれじゃあ赤字ですよぉ…」
「なら百夜堂でバイトする?あたしムツミちゃんが『にゃんにゃん』って媚び媚びポーズ取るなら他のところでバイトしながら全力で通い詰めるよ」
「アレができる河和さんはマジの超人なんですよ。一般的キヴォトス生徒はそんな事したら顔を真っ赤にして倒れますよ」
「まあ取らぬ狸の皮算用にならないように目の前のヘルメット団ブッ倒しちゃおうよ。倒した後に飲むサイダーはきっと美味しいよ」
「そうですね。では突撃!」

8/15

「せっかくのお祭りなのに…台風が…リゾートバイトで荒稼ぎの計画が…」
「いくらキヴォトスの生徒が頑丈だからって台風の日にお祭りをやる程頑丈じゃないからねえ。花火とかは火薬が湿気っちゃうし」
「ただでさえここ数日急な雨が降ったり止んだりしながら合間にカンカン照りの挟まる拷問みたいな天候に耐えながら閑古鳥の鳴く屋台で必死に頑張っていたのに…この世に神も仏もないのでしょうか」
「こればっかりは仕方ないし切り替えていこうよムツミちゃん。あっちょうどいい感じの求人見つかったよモモトーク送るね」
「えっと何々…台風でお祭りが中止になったから火薬なりなんなりいっぱい余ってるはずだからブン取っちゃいましょう。依頼元ビュービューヘルメット団…ともうひとつがお祭り会場の警備で強盗退治ボーナスあり。依頼元お祭り運営委員会と…これは警備一択では…?」
「今度こそ荒稼ぎ成功して残りの夏休み遊んで過ごしちゃおうよ!えいえいおー!」
「おー!」

8/18

「いやあものの数日であれだけ跋扈していたリゾート狩りの連中をぶっ倒してショボい海の家レベルだったリゾート地をイケイケの建物に改装までするとは流石シャーレの先生ですねえ…」
「あたし達がその辺のヘルメット団とドンパチしてる間に大騒ぎは全部終わっちゃったねえ」
「はい、建物の改築の作業のバイトに滑り込んだんで夏の終わりまで遊んで過ごせるくらいの地域通貨を貰えましたが激ヤバ納期のガテン系もびっくりな突貫工事でしたからクタクタで一歩も動きたくないです」
「同感。温泉開発部ってマジですごい集団なんだなって認識を改めたよ」
「さっき観光ガイド見てたんですがあっちの島に件の温泉開発部の作った温泉郷があるらしいですよイサカさん。定期便は…もうすこししたら出発するみたいです」
「なら今日はそこで一日遊ぼうよムツミちゃん。クソ暑い中で食べる温泉まんじゅう、かなり乙だよ」
「楽しそうですねえ。さっきから百夜堂の片隅でシャーレの先生が死んだ目で青い石を砕きながらすごい速度でブラック労働してるの見るのちょっと辛かったんでさっさと行っちゃいましょう。触らぬ神に祟りなしです」
「うわ本当だ。くわばらくわばら」

8/22

「もしもしー、あたし。うん、さっき届いた。全部揃えてくれて本当にサンキュー!今度御礼送っとくね」
「イサカさん、このサイズの割にやたら重い段ボールはなんですか…?」
「これはねー、この前やってたコミセンに友達が参加してたから友達と共通する趣味のサークルさんの漫画を買ってもらったりしたやつ。部屋のあたし側の所に台車ごと置いといてもらっていい?」
「はあ…短い付き合いではないですけどまだまだ知らない事が多いですねえ…イサカさんの漫画の趣味とか聞いた事もなかったです」
「世の中そんなもんでしょ。あたしは全部を全部知ってる事がいい事では無いと思うよ。適度な秘密が円滑な人間関係を産むってやつ。うおっ、あのサークルさんのスカート丈やっば。ここまで描いちゃうの…!?ほぼモロ見えじゃん…」
「イサカさんの私服より凄いんですか…?アレいつも目のやり場に困るんですけど」
「ちゃんとスパッツ穿いてるしそこまでヤバい私服じゃないってー。それを言ったらムツミちゃんの私服の方が身体のラインがめっちゃ出てて攻めてるなーって思うよ。同人誌は薄い本って言うくらいだしあっという間に読み終えちゃったけど今のやつムツミちゃんも読む?あたし次の読むからここ置いとくね」
「…お茶を淹れてきます。何か欲しいお茶うけはありますか?」
「じゃあ水饅頭!」

9/5

「暑っつい季節も少し落ち着いてきた矢先に何で私達こんなクソデカ荷物担いだ肉体労働させられてるんですかねイサカさん…」
「百鬼夜行のバスケ部が大きい大会に出るから応援の手伝いのバイトって事で受けたんだけど鳴り物も使うし思ったより本格的だったねえ…」
「にしてもこの気温で長ラン着せられる羽目になるとは思いませんでした。私は羽根のお陰で短ランにしてもらえましたが」
「普段は大変そうだよなあって見てたけど今日ばっかりは羨ましく思うよソレ」
「ウチだけの奇矯な文化だと思ったら向かいの側も長ラン来てる人いますね…ってアレはミレニアムのエンジニア部…!何でも爆発させるやべー集まりですよ命がいくつあっても足りません逃げましょう」
「いくら何でもそんなコト…いやマジで迫撃砲使って花火打ち上げてる…!そんなのアリ!?」
「負けてられないとか言ってこっちも花火使おうとしてるんですけど…!ミチルっちチャンネルで何度も見たからオチが容易に想像できるんですけど…!」
「「爆発オチってサイテーッ!」」

9/18

「ようやく暑くなくなってきたのに体育祭をやるとかキヴォトスの連邦生徒会はアホの集まりなの…!?」
「ほらあの室長いたじゃないですか。去年暴徒に襲われて手足へし折られても体育祭をやるんだ!って言ってた生粋の運動部員根性の持ち主。この前のクーデター未遂の時に軽んじられてたのが相当腹に据えかねたみたいで『あたしの手と足が動く限りは体育祭をやる!』って怒られない範囲で使える権力の限りを尽くしてやってるとか…」
「だからって毎週はバカのやる事だよ…」
「運動バカですからねえ」
「それ言われたら何も返せないってムツミちゃん…」
「ところでここに自転車競技の一位景品で貰った屋台の食券があるんですが一緒に何か食べませんか?ここでしか使えないけどこの量は一人では持て余すので」
「えっ嘘マジ、ラブ!好き!愛してる!」
「無茶苦茶現金ですねえ…まずはアレから行きましょう。山海経の顔面くらいあるクソデカ揚げ鶏。気になってたんです」

9/22

「ようやくバイト代が貯まったよムツミちゃん!これで次の行楽シーズンは旅行の秋だ!」
「ええ、イサカさんから前に話を持ちかけられた時はいつまでそのやる気がもつのかな…?と不躾ながら思っていましたがきちんとやりきりましたね。ところで行きたい場所はあるんですか…?」
「まあお金を集めたとは言えスイートルームに泊まったりみたいな贅沢ができるほどではないからねえ…」
「そこで提案なのですが」
「何何?」
「電車の旅というのはいかがでしょうか。ちょうどこの辺にいい感じの場所がありまして…」
「ふむふむ…」
「ここの宿に泊まってこの辺を巡って…」
「よさそうじゃん!それにしようよ!」
「なら善は急げです。予約を決めちゃいましょう」
こうして私達の秋のバカンスの予定が決まった。ああなるとは誰も思わないって…

9/30

「ハァ…ハァ…死ぬかと思いました」
「いやでも会心のファインプレーだよムツミちゃん。どう考えても悪いのは公共交通機関でテロやらかした温泉開発部の奴らなので」
「よりによって私達の乗り継ぎ電車を邪魔する形でやらかしましたからね…来世くらいまで恨んでも文句は言えないはずです」
「途中停車した駅にレンタサイクルが無ければマジの即死だったねー。これトラベルミステリーのトリックに使えないか秋の文化祭向けの原稿抱えてるミス研の連中に売り込んでみようかな」
「そんな脚力持ったアスリート気質の人間がいる時点で怪し過ぎるから却下だと思いますけどね。それはそうとこれ帰りにあの駅まで返しに行かないといけないですしその分のレンタル料も乗るのであんまり豪遊できなくなっちゃいましたね…」
「ふっふっふこれを見なさいムツミちゃん」
「旅行保険…テロ特約!?あの状況から入れる保険があったんですか!?」
「転ばぬ先の杖ってやつよ。これで緊急時の代替交通手段の費用は全部保険会社持ちになるから心配後無用って訳!」
「ならよかった!気にせずいろいろ食べて良いわけですね。駅員さんすみませんジェット焼売弁当ひとつ!」
「いいねえ!駅員さん私も釜飯弁当ひとつください!」

10/13

「はあ…良かったですねえ。秘湯」
「良かった良かった。あの硫黄感がザ・温泉って感じであたしは好きなんだあ」
「最近流行りのフルーツ牛乳も本当に美味しかったですねえ。身体も心も大満足の最高の休暇でした」
「しばらく見ないうちに少女忍法帖ミチルっちチャンネルが謝罪動画上げてる…」
「また見てたんですかアレ、いや私も忍術研が気になって一度見たけどその…うん。って感じの内容でリピートはもういいや…ってなりません?というか謝罪動画…!?せいぜいボヤ起こす程度のあのチャンネルで?」
「言いたい事は何となく伝わるよ。何かこの前陰陽部の客人を忍術研の入部希望者だと思って忍者流歓待をしてしまってすみませんでした云々だってさ」
「忍者流歓待…また訳のわからないワードが増えましたね…まあどうせニヤ部長が遅刻かましたとかそういうオチがついてるやつですよね」
「正解。最近温泉よりもぬるま湯みたいな日々が続いてたから何かそろそろ動きがあるかもしれないよねえ。百鬼夜行も」
「イサカさんも…ですかね?」
「どうだろ。まあでも私はムツミちゃんとこうやって毎日駄弁ってるの凄い好きだからこうしてたいなあってのは本音だよ」
「それは私もですよイサカさん。今日はいつも行かないあっちの通りのお店を開拓してみましょう」
「いいねえ、let's go!」

10/24

今回のお話はコラボイベントの終盤の展開のネタバレがあります。こんなところまで見にくる人は筋金入りのブルアカ馬鹿なので読んでるとは思いますが念の為

「カフェでお茶を飲んでたら急に相方だけ消えた…!?寝言も大概になさいよ」
「いやお巡りさん本当なんですって…!『来週はヘルメット団の頭数合わせのバイトに行くんだー』みたいな話しながらお茶飲んでたらマジで目の前から忽然と姿を消したんですよ」
「いやそれ君が気付かない間にトイレ行ったとかそういうやつだよ。暫くしたら戻ってくるって」
「そう思ってトイレ行ったら誰もいなかったからお巡りさん呼んだんですよ…!」
「…あれ?帰ってきた」
「うわっ!急にヘルメット団が出てきた!」
「イサカさん!無事でよかった…!何があったんですか!?」
「いやああたしもよくわかってないんだけどさあ、ヘルメット弄りながらムツミちゃんとお茶飲んでた筈なのに急に変な『施設』の中にいてキヴォトス中の胡乱な連中が集まってておっ、バトルか!?って身構えてたらさ、椎茸みたいな眼をしたリモコンを持った女の子がボタンをポチっとやったらそこにいる連中全員金縛りにあって身悶えてたら急にここに戻ってきたんだ」
「…いなくなってた君の友達変な薬物とかやってない…?」
「いやあ…クセの強い子ではありますけどそういう事はしない筈ですよ…」
「お巡りさんはともかくムツミちゃんまで、言い方!」
「まあ事件じゃ無かったなら本官のお仕事はこれでおしまい。また何かあったら呼んでくださいね」
 
「河岸を変えてもう一軒回りますか…」
「そうだね…あたしもよくわかってないから甘いもの食べて記憶を消したい」

10/31

「一生分カボチャ食べた気分ですね…」
「同感。いくら百夜堂のハロウィンフェアの在庫一掃で食べ放題だったとは言え当面カボチャは見たくないかな…」
「ハロウィンが終わったって事はもうアレですよ、クリスマス商戦がすぐそこです」
「百鬼夜行はそういうのあっさり目ですけど陰陽部のカホさんが色々やりたそうにしているから今年は何かあるかもしれませんね」
「まあでも今日はゆっくり休もうよ…マジで食べ過ぎで動けないから」
「そうしましょう。私はちょっと腹ごなしの散歩に行ってきます」
「うわあ…マジで凄えなあ天性の体育会系」

11/7

「お疲れ様ームツミちゃん!今日も手伝ってくれて助かったよ」
「いえいえ。これくらいお安いご用です」
「いやあ20年ぶりに百鬼夜行燈籠祭やるって決まったからどこもかしこも準備でてんやわんやだから猫の手でも借りたいんだ。その点ムツミちゃんはこういう小口の依頼も受けてくれる鉄腕アルバイターだから良かったよ。…ってあんまり引き止めちゃ次の配達に響くかな、また宜しくね!」
「では次回も御贔屓によろしくお願いしますねー」
 
「おかえりなさいムツミちゃん、これ出かけてる間に『ムツミちゃんに配達頼みたい』って言いにきた連絡先」
「どれどれ、いつもの柴の先生とメカのお兄さんと雀のおばさんと…」
「お祭の準備も大切だけどさ、あんまり根を詰め過ぎて倒れたらそれこそ本末転倒だと思うんだよね。あたしが言えた義理でもないけど」
「まあそうですね。どれも速達依頼ではないですしメールのやり取りだけにしておきましょう。なので今日は店じまい!さてイサカさん何を食べに行きましょうか」
「南区の商店街でお祭に向けて新メニューのお試し会みたいなのやっててなんか色々お安く食べれるらしいからそこ行ってみない?」
「本当ですか!?」
「マジマジ。ほらこれチラシ」
「マジですね…数量限定のメニューもあるし荒事にもなりそうなのできちんと備えてから行きましょう」
「そう思って準備はしてあるよ。ほらこれムツミちゃんの分の弾薬」
「イサカさんありがとう!それでは新メニュー食べ尽くしに行きましょう!
「おー!」

11/12

「そういえばムツミちゃんは知ってる?文化部荒らしの話」
「何ですかそれ。体育会系の部活を荒らすとかならまだしも文化部を…?」
「なんか文化部に体験入部しては『全国を目指すぞ!』みたいなノリを期待しては『ウチはそういう部じゃないんで…』って言われてガッカリしながら帰っていく謎の生徒がいるとかいないとか」
「青春怪人じゃないですかそれ…わたしは決闘魔が最近いる話を聞きましたが」
「そっちの方が気になるんだけど何それ」
「水色の羽織を着た生徒とシャーレの先生があちこちで同じ格好の生徒を探してはドンパチやってるとかやってないとか」
「シャーレ絡みとか近づいちゃいけないやつじゃん…この前の列車テロもシャーレ絡みだったって言うし関わったら命がいくつあっても足りないよ」
「最近シャーレの先生がこの辺によく来てるって話もあるんですが無事に百鬼夜行燈籠祭ができるといいですねえ…」
「イベントが行われるとかに関しては大丈夫でしょ。なんだかんだ言って秩序寄りの人ではある訳だし」
「言った人間が言うのもアレですがこんな事私達が気にしてもどうしようもありません。気にするべきは今、今日も百鬼夜行の経済を回すために買い食いツアーに行きましょうイサカさん」
「さんせー!」

11/29

「はいムツミちゃん。今日のバイト先で貰った肉串。2本あるから分けっこしよ」
「ありがとうございます。当面お互いにバイト漬けでしょうねえこれだけよく焼けたら」
「そうだねえ。荒事系のバイトも百花繚乱が復活して不良が軒並み取り締まられるようになったからやりようが無いもんねえ」
「それにしても真っ当な銃弾の効かない魑魅魍魎、何とかなったからよかったけどアレ本当にどうしようもなかったらキヴォトスおしまいでしたね。シャーレの先生様々です」
「下っ端の傘みたいなのは倒せたけどクソデカい虎みたいなのはマジでどうしようもなかったもんねえ」
「この前シャーレの先生が復興の視察に来た時『アレ倒さないといけないんだよなあ』って歩きながらぼやいてましたけどまさかまた出るんですかねアレ」
「まさかあ!あんなやつ出たって勝てないって。しょっぱい物食べたら甘いもの食べに行こうよ。ぜんざいとか」
「いいですねえ。肉串のお礼に今度は私が奢りましょう」
「サンキュームツミちゃん愛してる!」
「褒めても何も出ませんよ…お礼くらいしか」

12/5

「氷海調査のバイトぉ!?」
「はい、ミレニアム系列のバイトなんですがシャーレ絡みの案件で猫の手でも借りたい感じらしいのでどこの学校の生徒でもいいから来てくれってノリで私のところまで情報が来たんですよ。交通費も向こう持ちです」
「羽生えてる系の生徒って寒いの弱いんじゃないの…?ムツミちゃん死ぬ気?」
「大丈夫ですって氷海って言っても暑いから水着で作業してる生徒もいますってチラシにホラ」
「隅っこに『撮影モデルは特殊な訓練を受けています。防寒装備完備でいらしてください』って書いてあるよムツミちゃん」
「マジですね。いくら何でも凍死はゴメンです…シャーレ案件だから先日のお礼も兼ねて手伝いたくはあるんですが…」
「『港の荷運びも募集してます』ってさ。こっちなら私達でも行けそうじゃない?」
「それですイサカさん!善は急げですよさっさと支度しましょう」
「ちょ、痛いって引っ張らないでって!」

12/27

「いやあやっと落ち着いたねえ」
「港の荷運びの後はクリスマスのバイトして新年合わせのバイトまでやりましたからねえ…純文化系の生徒だったら倒れてますよ」
「文系で思い出したんだけどミレニアムの野球部って凄いらしいね。クマ殺し位してないとレギュラーになれないらしいよ」
「…冗談ですよねイサカさん」
「マジマジ。ミレニアムのトレーニング部って部活があるんだけど野球部のスラッガーがまだまだ未熟だと自分を鍛えにそこへ仮入部したらクマ殺しになって帰ってきたって前に応援のバイトの時に知り合ったミレニアム生が言ってた」
「マジなんですか…」
「その話を横で聞いてた忍術研のイズナちゃんが『イズナ達も修行の旅に出てクマを倒せるようになりましょう!』って言って飛び出ていったけど百花繚乱に止められて怒られてた」
「それが賢明でしょうね…しかも百鬼夜行のクマって他のところより凶暴でしたよね」
「そうそう。忍術研を怒ってた百花繚乱の人の横にいた新入りが『そう言う危険な事は身共の様なえり〜と!に任せてください!』って言ってたけど百花繚乱ならクマ位余裕で倒せるのかもね…」
「それ勘解由小路のお嬢様ですよね。逆にボコボコにされて帰ってきたら勘解由小路の力で百鬼夜行のクマが絶滅するのでは…?」
「あーそういう…クマの話してたらお腹空いてきた。百夜堂にパンケーキ食べに行かない?蜂蜜たっぷりかけてさ」
「そうですね。今年も一年頑張りましたしご褒美という事で行きましょう」

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