ブルーミング・ウィズ・ユー

「梢センパイ梢センパイ!」
「あらあらそんなに慌ててどうしたのかしら花帆」
「それがですね…あたしの部屋宛にこれが届きまして…」
「これは…とても素敵な花器とアレンジメントね…どなたかから頂いたの?」
「その…大変言い難いのですが…センパイの御実家からです。御手紙によると花器は私の誕生日祝いとして人間国宝の方に作って頂いてアレンジメントは有名な生け花作家の方の作品らしくて…この前センパイの御実家で色々良くしてもらった上にこんな立派な物まで頂いちゃってあたしどうすればいいのかわからなくなっちゃって…」
「お母様…!花帆、ちょっと電話をかけてくるから私の部屋の中でしばらく待って欲しいのだけれど構わないかしら?」
「はい…よろしくお願いしますセンパイ」

正確に測ってはいないけど十数分くらい経っただろうか。ガチャリとドアが開いてセンパイが戻ってきたので玄関へ向かう

「お待たせしてごめんなさい花帆。お母様も悪気があった訳ではないの。私が事あるごとに花帆の事を話していたのを聞いて気になっていた所にこの前の件があって大層気に入ってしまったとかで…花帆がよく言っている『花咲きたい』というフレーズをテーマにあの作品を作って貰ったと言っていたわ」
「言われてみると確かにあたしっぽさがあるような…」
「高校生への誕生日プレゼントとしては分不相応な品かもしれないけれども娘の人生を賭けた夢を支えてくれている御礼として贈らせてください。と言っていたわ」
「正直に言うと畏れ多いんですけれどもセンパイのお母様にそこまで言って頂いたからにはもう退く事はできない感じですね…!あたしセンパイの事一生支えます!今年だけじゃなくて卒業してからもずっと!」
「花帆…とても言い難いのだけれども…ドアが開いたままなので廊下中に聴こえてしまっているわ…」
 廊下のあちこちからセンパイの方を見ている視線がいくつかあって、パシャリとシャッターの音もした。メモ帳片手に駆け寄ってきた先輩は新聞部だと言う。そこからの事は気が動転してしまってあまり覚えていないが暫くの間色んな人に会うたびに「結婚おめでとっ!」と言われ続けて顔が真っ赤になっていた事だけは確かだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?