ランチタイム・エンジェル

「はーい、午前の特訓はここまで!3年生はもう少し自主練するから後輩ちゃん達は1時くらいまで休憩!」
 慈先輩からの号令がくだり徒町を含めたみんながその場にへたり込みました。漸くお昼ご飯にありつける…と思った矢先に誰もが気付きました。あれ、今日早朝に映画の撮影をしたからさやか(先輩)(ちゃん)お昼ご飯用意してないんじゃないの…?という事に
「わたしのミスです…今から冷蔵庫の中身で何かしらを錬成してくるので10…いや20分待ってもらえますか?」
 さやか先輩が据わった眼をしてゆらゆらと別荘へ向かおうとしていて
「ルリ今からおかず釣ってくるから捌くの手伝ってね小鈴ちゃん…」
 瑠璃乃先輩がどこからともなく取り出した釣竿と共にでっかい#LOVE のモニュメントの方へ歩き出して
「吟子ちゃん…あたしの分まで梢センパイのこと、よろしくね…」
「これくらいで死ぬわけないでしょ花帆先輩のだら!」
 花帆先輩が全てを諦めた顔をしていると
「ストップストーップ!さやかちゃん、るりちゃん!私達だって状況わかってるしそこまで鬼じゃないから」
「ヘイメグ、ルリ言ってる事が全くわからない」
「出前をとってあります」
「Megu is God!」
 瑠璃乃先輩と姫芽ちゃんが一斉に慈先輩を讃えひれ伏しました。花帆先輩も生気を取り戻しさやか先輩を振り回して小躍りしています
 少しすると車のエンジン音が響いた後にフードデリバリー特有の四角いリュックを背負ったお姉さんが私達の元にやってきました。少し明るい髪色の、なんとなく花帆先輩を彷彿とさせるお姉さんです
「お待たせしましたー!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブさんですね!こちらご注文の品になります!」
 お姉さんがリュックから取り出して徒町達に渡してくれたのはなんと…カツカレー!デリバリーの容器越しでもとても良い匂いがしてきて徒町に限らずみんなよだれがじゅるりと垂れていました
「お代はアプリ経由で頂いてますしサインもいただきましたのでこれにて完了です!合宿かあ…青春って感じでいいねえ…」
「やだもーお姉さんだって大学生くらいの歳じゃないですかあ」
「私高校の時は文化部だったし卒業していきなり起業したからこういうのほとんど経験がなくてさあ…ちょっと羨ましいなあ…って」
「起業…?」
 雑談をしていた慈先輩が少し眼を凝らすような表情をした後に
「もしかして少し前にTVに出てませんでした?新進気鋭の若社長!みたいな触れ込みで」
「大正解!今は夏休み中なんだけどね、2人いる仲間がひとり西の方の実家に帰省してもうひとりは東の方に遠征に行ったからじゃあ私は北の方!って事で金沢に旅行に来たんだけどたまたま寄ったカレー屋さんが人手不足で困ってたから臨時の手伝いみたいな感じで今日は出前のお姉さんしてるの。そろそろ次の配達行かないといけないからごめんね!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのみんな!がんばろまーい!」
 そう言うと出前のお姉さんは慌ただしく去っていきました。
「がんばろまい。かあ、ほらみんな!しっかりご飯食べてしっかり休憩する!こんなとこで突っ立ってないでちゃんと日陰へ行くんだよ!」
「はーい!」
 今日の午後の特訓は何が来ても怖くない、徒町にそう思わせるほどに元気の湧くお昼ご飯でした

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