トライアングル・トライアングル・イン・トーキョー

 めぐがいなくなった。理由は何となくわかっている。昨日ホテルの部屋のこずに見えないところでペンライトの電池を確認していたし東京のアイドルのイベントを見に行ってるのだと思う。そのせいで今こずはすごく怒った顔をしながらボクとふたりで街を歩き回っている
「ところで綴理、何で慈の居場所を知っているのかしら。事前にどこへ行くのか聴いていたの?」
「違うよ、『何かあった時のために』るりがめぐの財布にGPSタグをつけて送り出したからそれの位置情報を追いかけているだけ」
「瑠璃乃さん…そこまで上手に機械さんを使いこなしているのね…」
「もうすぐ着くよ、ほらここ」
 指をさした先にはライブハウスがある。入り口にはポスターが貼ってあってそこには今日ライブを行うアイドルグループが写っている。めぐの趣味っぽい格好の人達だ。こずは大きなため息をつきながら財布を開いてふたり分の当日券を買いに行った

「「花菜ーッ!宇宙一可愛いーッ!銀河の宝!もっと可愛いところを見せてーッ!!」」

このグループのライブ自体はいちど地方公演をした時に見ている。いつも最前にメンバーの身内っぽい厄介がいるのも相変わらずだ。それでも私が梢にカンカンに叱られるのを覚悟で今日のライブを見に来た理由はただ一つ。私達蓮ノ空大三角と同い年の怪物玉笹花菜の最高潮を見に行きたかった。そもそもの話として彼女はスクールアイドルではないからラブライブ!で私達とかち合うことは断じて無い。けれども前回のラブライブ!で優勝できなかった私達は更なる高みへ行かなくてはいけない。その為には強力なライバルの研究をし、自分達が目指す最終系の形を見据えなくてはならない。けれども本当に歌もダンスも加入当初より段違いに上手くなってる。要領の良さとかもあるのだろうけどそれだけで済ませていいものではない。強敵の一挙手一投足に対してメモをとっていると後ろから肩を叩かれた。すご〜く嫌な予感がする。無視を決め込むともう一度肩を叩かれる
「慈」
耳元で囁く声がして私は終わりを悟った
「あ、あれー梢じゃん奇遇だねー」
「下手な芝居を打ったところで無駄よ。ネタは上がっているのですから」
「…何でここがわかったの」
「瑠璃乃さんがあなたの事が心配だからってじーぴーえす?って機械さんを使ったらしいの。それを聞いた綴理が迷わずここまで案内してくれたわ」
「るりちゃん…帰ったらこれからについてお話しないと…」
「本当なら自由行動の予定が崩れるから早く帰るわよ。と言いたいところなのだけれど…あの子、前にお茶会をした時に慈が話していた子よね?名前は確か…」
「玉笹花菜。スクールアイドルだったらひとりでもラブライブ!決勝へ来れるレベルの天才だよ」
「私たちと彼女が直接ぶつかり合う事はないけれども、同い年の子がここまで卓越した表現をするのね…」
「そう、そうなんだよ梢。同い年の子がここまでできるって事は私達にもまだまだ伸び代がある筈なんだ。それを知る為に私は今日ここへ来た」
「こず、めぐ。やっと見つけた」
「綴理も中まで来てたの」
「こずもめぐもライブを見てるのにボクだけひとりぼっちだと寂しいよね。せっかくの修学旅行なのに」
 言われてみればそれもそうだ。せっかくなので3人横に並んで歌を聴く。そこそこ長い付き合いだけれどもこんな光景初めてかもしれない。沙知先輩がいた時ですらやった事がない筈
 最後のMCをしている時にふと花菜ちゃんと目があった気がした。気のせいだと思っていたけれども去り際に舞台からこっちに向けて三角形のジェスチャーをしていた。もしかして私達のこと知ってた…!?けれども梢も綴理も気付いていなかったから私の気のせいなのかもしれないなと思いながら3人でライブハウスを後にした

「って事があったんだよるりちゃん。GPSの件に関しては帰ったらしっかり話しようね」
「今の話を聞いてルリの選択は間違っていなかったと確信しました」
「めぐちゃん先輩、今日のるりちゃん先輩本当に良かったんですよまずは(略)」
「スイッチの入った姫芽ちゃん本当に止まらないね…」
「けど公私をしっかり分けているのは本当にすごいとルリ思う。故にルリあり」
「じゃあ本番も頑張ってね。応援してるから!」

「ただいまー」
「おかえりー!今日も可愛かったねえ花菜!」
「みーちゃん、のーちゃん。今日も最前にいたけど何時から並んでたの…?」
「花菜が家を出たのが8時で…彩乃が晩御飯の下拵えをしないとって言って暫く待ったから…10時には家を出てたんじゃないかな?」
「その行動力を他のことに活かせば…」
「何言ってるの花菜!私達の行動力は花菜のためだけにあるんだから!」
「そう言えば花菜、今日帰り際になんかジェスチャーしてたよね。三角形みたいなやつ」
「うん、今日は珍しい人が来てたからつい」
「「珍しい人?」」
「蓮ノ空大三角、ちょっと前にみーちゃんがゲームでマッチングしていたスクールアイドルの人たち」
「あっあの相方が超強かったやつ!」
「彩美が拗ねて親子丼要求した時のやつね」
「そう。いる場所は違うし向こうは向こうで色々大変だったみたいだけれどもわたしと同い年の…負けたくない人達。修学旅行かもしれないけど遠くからわざわざ来てくれたお礼をしたくて」
「そっかあ修学旅行の季節かあ」
「あたし達も修学旅行は東京だったけど花菜の学校ってどこに行くんだっけ。東京は流石に東京に行かないでしょ?」
「ふっふっふ…何と…沖縄です!神楽さんから怪奇調査の依頼もきちんと受けております」
「水着回…!あたし達も行くよ彩乃!」
「私達のどこにそんな予算があるのさ!」
「それは…ほら…ね?」
「いくら甘えたところで出ないからね!花菜も早くお風呂入っておいで、ご飯用意するから!」
「はーい!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?