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暑い季節に観たい、円山応挙の絶筆「保津川図屏風」

8月はもう終わるけれど、猛暑はしばらく続くようだ。

そんな暑い毎日の中で思い出した屏風絵がある。

江戸時代の絵師、円山応挙の「保津川図屏風」。

保津川の急流を描いた屏風絵で、応挙の絶筆。亡くなる1ヶ月前に完成したという。その頃には視力もだいぶ落ちていたとのことだが、制作時に弟子たちの支えがあったと考えても、衰えを感じない見事な画力と表現力に驚く。

屏風絵なのでとても大きな作品だ。
高さ154cm、幅483cm。それが一対になっている。

初めてこの絵を見たのは10年以上前だったと思う。
他の作品目当てで足を運んだ東博の企画展で、その日まで保津川図屏風という作品は知らなかった。

この屏風絵の前に立った時、まるで目の前にほんとうに水場があるかのように、とても冷んやりとした感覚になった。

円山応挙は写生を重んじる絵師だ。しかし、この保津川図屏風は決してリアルではない。水は糸のように表現されて装飾的でもある。
それでもほんとうに水場にいるような涼しさを覚えたのだ。

同時代に活動した奇想の絵師・曾我蕭白が「画を望まば我に乞うべし、絵図を求めんとならば円山主水(応挙)よかるべし」と皮肉ったエピソードがある。
私も応挙は型にはまった面白みに欠ける絵師というイメージを持っていたが、保津川図屏風を見て覆された。

確かに応挙は写生を、対象を写し描くことを大事にしたが、それに留まらず目に見えたものだけでなく気配まで写し描く絵師だった。

私は大きな屏風絵を目の前にして、応挙の描いた“気配”を体感した。

この円山応挙の保津川図屏風は現在、京都の千總ギャラリーで開催中の「千總の屏風祭2023 見えない水を見る」で鑑賞することができる。

千總ギャラリー チラシ


京都まで観にいくことはできないため、先日、図書館で円山応挙の本を借りて観た。
しかし、本の中ではさすがに小さすぎる。あの涼やかな体感は、やはり実物と対峙してこそのものである。

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