ゲゲゲと遭遇⑦

20歳から勤めた会社で、僕は人生の全てを変えてくれた上司と出会った。僕はその人から全てを教わった。その人は本当に僕の親のような存在になった。仕事もプライベートも全てを教わった。仕事、競馬、女、遊び、酒、登山、野球、など色々教わった。そして、それを身につけた僕はどんどん成長していった。

そんな上司は40歳で遅めの結婚をした。結婚して、家族を持って、変わっていく上司を僕は間近で見ていた。そして思った。血の気の多かった上司が日に日に穏やかになり、会話が論理的になり、視野が広がり、優しさが溢れ、そんな中でも現実的な視点で物事を考えるようになっていく。男は家族を持って、子供を持って、成長していく。

このご時世、結婚なんてしなくてもいい。ただ確実にそれは男を成長させてると思った。そして、同時に僕はその事実を間近で見て絶望を感じた。

昔、Yahoo!ブログでも書いたが僕は日に日に親に似てきている。遺伝ってのは確実にある。

僕の家は離婚家系。ジイさん3人の、バアさんが5人いる。バアさんは元芸者。ジイさんはあの時代にパイプカットするほどの遊び人。叔父はバツ4、叔母も離婚している。従兄弟も半分近く離婚している。もっと言うと曾祖母はがっつり男で揉めて自殺してる。さらにオカンも飲み歩く父に辟易して昔、自殺未遂している。。どう考えても僕の血は結婚に向いてない。確実に。残念ながら。

この話をすると、遺伝なんか関係ないと優しい言葉をかけてくれる人は沢山いる。ただ傾向であることは確か。傾向と対策は人生の基本。現実を受け止めて自分なりに対策を練る。結果、僕は結婚を諦めている。向いてない。仕方ない。それが賢明。

さ!暗い話はこのへんで、笑

さて、いよいよサインを貰いに行くクダリを書きますかね。それでは、どうぞ。


バイトのシフトが近づくと、僕はもう一度布枝さんと水木先生に会えるのが楽しみになっていた。こんなチャンスは二度とない。出会いは人を変える。水木先生に会うことで、自分の中で何かが大きく変われるかもしれない。僕はそんな期待感を自然と抱いていた。

しかし、現実はそんなにうまくいかない。僕はバイトの前日に、ついに彼女と大ゲンカをしてしまうのだ。理由なんて本当に些細なことだったと思う。それは今では思い出せないくらいの小さなきっかけだった。でもその小さなきっかけ一つで燃え上がるくらいの大量の要因はずっと溜まってきていたのだ。

前にも書いたけど、僕らは当時、お互いが自分自身に満足していなかった。そして、その要因の一部が相手側にあると錯覚していた。いや、正確に言うと錯覚ではなく、要因の一部が相手側にあることは当たり前である。でも、自分自身に満足していれば、その一因である相手にわざわざ目くじらを立てることもないはずだ。でも未成熟な僕たちは、そこまで考えが至っていなかった。僕たちは自分の不甲斐なさを直視できるほど、お互いが成熟していなかったのだ。

売り言葉に買い言葉で、僕らの衝突はどんどんエスカレートしていった。浴びせかけられた言葉の真意を理解することもなく、額面と表面で真に受けてしまい僕らは互いに傷ついた。そして、その傷で冷静さを失い余計な暴言をまた口走ってしまう。少しだけインターバルを取れれば振り上げた矛を収められたかもしれない。でも、高揚した頭では、そんな簡単なことすら思いつかなかった。

あんたは東京で何もしてないじゃん。作家なんて無理だよ。才能ないって自分でも言ってたじゃん。努力もしてないし、口ばっかりじゃん。あのまま2人で長野で暮らしてたら良かったんだよ。もう戻れないよ。全部あんたの勝手で壊れたんだよ。私はずっとあんたに振り回されてる。親にも呆れられてる。私のこと好きって言ったじゃん。2人で幸せになろうって言って付き合ったじゃん。私は今、不幸だよ。全部あんたのせいだよ。私はただ好きな人と幸せになりたかっただけ。あんたの小さなプライドに付き合ってる身にもなってよ。自分でも無理なことわかってるでしょ?普通に戻ろうよ。もうこんな馬鹿なことやめて。一緒に長野に帰ろう。それが一番だよ。毎日、あんたの自己中に振り回されて、帰りを待って、ごはん作って、欲しいもの買ってあげて、それでも夢が叶わなくて卑屈になってくあんたと居るなんて、ただ辛いよ。それでも好きだから離れられないのがもっと辛いんだよ。わかってよ。少しは私の身にもなってよ。

こんなど正論と事実を泣きじゃくる彼女から告げられて、僕は返す言葉がなかった。そして、自分が壊してしまったものの大きさに気付かされた。他人の人生に深入りしてしまった以上は責任が付いてくるのだ。愛し合うと言うことは、お互いにリスクを背負うのだ。愛した相手だからこそ、落胆も失望も大きい。そして、それでも離れられない苦しみはまさに生き地獄なのだ。

傷つけ合うだけの不毛な論争は、明け方まで続いた。そして、彼女は疲れ果てて明け方の5時頃に眠りについた。僕は、ベランダでタバコを一服していた。まったくひどい一日だ。あぁ、あと2時間後にはバイトに行かなくちゃ。でも、もう今日はいいかな。疲れたし。休んだら次に行きにくくなるな。いや、もうそのままバックれちゃおうかな。疲れたし、いいよね。まだ対して出社もしてないし、給料も微々たるものだからいいや。今はとにかくたくさん寝たいし。そうだ。バックレよう。

僕は疲れと、眠気と、精神的なショックから、バックれというコマンドを選択することにした。そして、彼女が眠る布団に潜り、眠りについた。そして、とても深い眠りに落ちた。

…と思った瞬間に僕は目覚めた。いや、正確には起こされた。彼女が僕を起こしたのだ。「今日、バイトでしょ」と目の腫れた彼女はぶっきら棒に僕を引き起こす。軽いパニックだった。眠ったと言うより気絶していた感覚だった。時計は8時ちょっと前。今からシャワーを浴びて着替えて出ればバイトに間に合う。

不思議と目覚めは良かったので、僕はそのままシャワーを浴びた。なんだか昨日のケンカを夢のように感じた。いや、もっと言えば上京したこと自体が夢の様に感じるくらいだった。寝不足からか、はたまた昨日のケンカのせいか、とにかく全てが夢の様な感覚だった。

シャワーを浴びて、着替えて、髪をセットして、家を出ようとすると彼女は僕に昨日はごめんと言ってきた。僕もごめんと返した。何も解決してないし、昨夜はただ絶望の夜だった。謝りあったところで今更何も解決しない。それでも謝りあうことが正解の様な気がした。そして、僕は職場に向かった。

形式的な朝礼が終わって、車で現場に向かった。そして、いつものピンポン周りが始まる。序盤に水木先生の家に行ってしまうと、そのあとずっと妖怪辞典を持って現地を回らなきゃいけなくなる。それは荷物になるから非効率的だ。なので、この日は一通り仕事を終えて、午後に水木先生のお宅に行こうと決めた。

午前中にそこそこの成果が出て、昼飯を食って、僕はいよいよ水木先生のお宅へと向かった。昨日のいざこざの精神的な疲れと、サインを貰える純粋な喜びと、このまま東京にいることに対する不安と、眠気と、、とにかく色々な感情を背負って僕は向かった。


はい!!

調子こいて今日は連続でnote書いてみましたけど、集中力も続かないし、眠いので、今日はこれまで!

これで第7話まで書いたのだ、残りはあと2話くらいに収めたいと思います。毎回、思いつきで、下書きなしで書いてそのままアップしてるので、謎の構成だし、誤字脱字だらけかとは思いますが、なんとか読んで頂けると嬉しいです。じゃあ、本当に眠いので、今日はこの辺で、おやすみなさい。

おわり

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