ゲゲゲと遭遇④

2018年11月に書いたブログです。

大いなる反省の果てに僕は言い訳をやめてみようと思う。

昨日一昨日と2夜連続で同級生と酒を飲み、僕はあることに気がついた。32歳になった僕たちの会話には言い訳ばかりだ。

若い頃は理想を語り合った。不出来な大人を嘲笑して「ああなったらおしまいだ」と笑い話にした。自分のことに夢中でいても社会がそれを許してくれた。差し伸べてくれる手を振り払うことすら許された。でも32歳の現実は違うのだ。

自らの巻き起こした不始末は消えることのない刺青のように刻まれる。転んだら誰も手を差し伸べてくれない。自力で起き上がった時には周りはずっと先に進んでいる。もう諦めてもう一度腰を下ろしてしまいたくなる。そんな時に後ろを振り返れば、既に座り込んでいる人間たちが暖かく迎えてくれる。彼らは落伍者である。でも今の社会では落伍者の方がマジョリティなのだ。

例えば、先を歩む人が落伍者達にむかい「いい年してまだアイドル(アニメでも、お笑いでも、スポーツ観戦でも可)とか言いってんのかよ」と至極まっとうな言葉をかけたなら彼らは狂気乱舞して集団で罵声と酒瓶をぶん投げるのだ。

だから先駆者は口をつぐみ、ひたむきに一人で先を目指す。落伍者は孤独を埋めるようにたむろう。何か対象を崇めたりすることで不安を薄めて、結束して、カテゴライズされたなかに身を潜める。不安な気持ちも誰かといるだけでだいぶ休まるのだ。

今の日本の社会ってこんな感じなのかな?って昨日の酒の席で僕は思った。どっちが正しいとかではなくて。ただ落語者たちはどんな言い訳をしても、心のどこかで先駆者を羨ましく思っていることは確かだと思う。だから、自分の息子が歩むなら先駆者の道であってほしいと願うのだろう。

じゃあ、自分はどう有りたいかというと、、、まだまだ僕は自身の身の置き方すら定まってない小僧だなって思う。子供のために働くわけでもなく、親にしてあげたいことがあるわけでもなく、まだまだ何かを学ぶ段階なんだなって思う。

あっ、そういえば「ホモ・デウス」ってすごくいい本でしたね。こういう考えさせられる本に出会うたびに僕の道は続いていくし、先はまだまだ長いなぁと思う。

今日は前置きが長くなりましたが久しぶりに「ゲゲゲと遭遇」の続きを書きましょうかね。

それでは、12年前の8月のお話です。

夏は年々暑さを増していく。中学、高校と部活に人生を捧げた僕を持ってしても12年前の夏は暑すぎた。

汗だくで個人宅を営業周りする。炎天下にお客さんから冷たい言葉であしらわれて僕は辟易としたいた。僕は割と営業成績は優秀だった。でもこの仕事は断られることが基本だった。滴る汗をぬぐって地道にピンポンを押す。楽しいことは楽しいのだが、飽きっぽい僕には繰り返される押し問答が苦痛になってきていた。

家に帰れば彼女がメシを作っていてくれる。正直家賃だけ払っていれば僕は暮らしていけるのだ。だから、あえてこんな辛い仕事をすることはないのだ。そもそも俺は作家を目指して上京してきた。昼下がりの住宅街でババァに「うちは結構です」とか怒られてる場合じゃないはずだ。

だけど、働かなきゃいけない理由があった。それは自分への言い訳のためだった。この頃僕は生まれて初めて小説を書き始めた。はっきり言ってそれがうんこ漏らすほどのひどいデキだった。わざとつまらなく書いてもこうはならねぇだろって位の、もう本当に散々の内容だった。

そりゃそうだと今ならわかる。そもそも当時の僕に何かを書けるほどのバックボーンがなかった。そしてそれを文章で表現するほどの語彙力もなかった。まぁ今もないけど。笑

だから何かを書こうとしても一文目からつまずいてしまうのだ。それでも馬鹿だから何かを書こうとしてパソコンに向かうわけだから、そりゃもう地獄だった。

彼女に小説かけてる?って聞かれるたびに僕のプライドは袈裟斬りされてるようだった。僕はいっちょまえに「ちょっとスランプかな?」とか言って泣き出しそうな心を隠して仕事に出かけた。そして仕事が大変だって言い訳で書けない体裁を保っていた。今の僕は自分が無能だとよく知っている。当時の僕は無能に若干気づいていたが、それを認めることができなかったのだ。

そんなつまらないプライドから僕は、その日も炎天下にも関わらず仕事に出かけた。

暑い、もう帰りたい。でも帰ったら帰ったでまた辛い。なんかすべてが嫌だ。そんな気持ちで仕事もはかどらず、僕は疲れきっていた。だけどノルマもある。仕事はやらにゃ終わらないのだ。僕は諦めて力なくピンポンを押した。すると人の良さそうなおばあちゃんが出てきた。

この人が水木しげる先生の奥さんである、いわゆる「ゲゲゲの女房」だった。

ただ、僕はこの時点では全く気づいていなかった。単純に人の良さそうな人だなと思い早速商品を説明していた。僕の売っていた商材はだいたいインターホン越しに断られるが、対面すると買ってもらえる商品だったので僕は気合が入っていた。

しかし、この奥様は僕の話を聞きながら「うちはあんまり・・・」とか言いながら、なぜか困っていた。。

・・・てか、あまり僕はパーソナルなことは書きたくなかったんですが、うまく伝わらないのでちゃんと書きますね。僕は宅配牛乳の営業をやってたんですよ。

だけど、水木先生の家はあまり牛乳を飲まないらしくて困ってたんですね。てかこの奥様は本当にいい人で、「ゲゲゲの女房」見てた方ならわかると思いますが、マジで優しい方なんです。田舎者丸出しの僕が空気も読まず、延々と商品の説明しているけど、そもそも飲まないからどうしようってなってたんですね。

今の僕なら空気読んで帰りますが、当時の僕は世間知らずだったんで何でもかんでも押せばいけると思ってたんですよ。そんな感じで僕があれこれ喋っていたら、ふと家の奥からおじいちゃんが「うちはいらないよ!」とか言い出したんですよ。

その時僕は「あ?何だこのジジィ。俺は今奥さんと喋ってんだよ」と思い、ちらっとそのおじいさんを見たときに、僕は雷に打たれたんですね。

えっっっ!!!まさか!!!???

僕はその瞬間に冷静になって初めて周りを見渡した。するとよく見れば見覚えのあるキャラの絵が飾ってあったり、庭には石でできた妖怪の石像が並んでいた。。

そして確かめるように、奥のダイシングテーブルにいるおじいちゃんをもう一度見た。おじいちゃんはコーンフレークを食べていた。(いや、牛乳飲んでんじゃん)と心のなかで軽いつっこみをいれたあと、奥さんに向かって「もしかして、ここって水木しげる先生の家ですか?」
と聞いてみた。

奥さんは相変わらずの困り顔で「えぇ」と小さく頷いた。。

つづく

・・・はい!眠いから今日はここまで!!

本当はここで保存して、明日続きを書いて一気にアップしようと思ったんですが、そうなると、また今日書いた文章が気に入らなくなったりして、結局ウダウダしてまた書かなくなりそうなのでここでアップします。

このあと僕は厚かましく妖怪大百科にサインしてもらおうと、再び水木先生のお宅に行くのですが、その辺の話は近々書きます。誤字脱字があったらすみません。

今日はおわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?