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気付いたら現場でも配信でもOver Driveしてた

"気付いたら"で始まるBase Ball Bearのライブレポシリーズ第4弾です。

ついにベボベ、約1年半ぶりのツアー。

先立ってVIVA LA ROCKやJAPAN JAMでファンを目の前にしての演奏を1年3ヶ月ぶりに果たしていて、自分もJAMでその一部始終を目撃したけれど、思えば2020年もYouTubeでの配信や様々な趣向を凝らした配信ライブで楽しませてくれていたので、間が空いた感覚はしなかった。

でもやはり、そこにあった画面という隔たりが無くなると、感じるものは大きく違う。
何よりメンバーが自分たちの姿を見ながら演奏してくれていて、時折笑顔を見せてくれたり、堀くんも度々語っていたが、泣きそうになるぐらい感動してくれていて、それが演奏にプラスアルファで乗っかってくるからだ。

そして、満を持してのツアーだ。
フェスとは違い、よりバンドとファンの結び付きが強い時間をライブハウスで過ごせるワンマンライブは、本当に待ちに待った瞬間だった。
自分が最後に参加した正式なツアーは、2019年の秋~冬に開催された「Guiter! Drum! Bass! Tour」なので、やっとワンマンに行けるというのが本当に楽しみで。

もちろん、まだまだ当時と同じ形でライブを楽しむことができない現状なので、キャパシティを抑えながら、マスク着用や声出し禁止を徹底したガイドラインは前提になる。
それでもワンマンならではのMCや、ライブがハイライトに向かっていくほど帯びていく熱量と、近付いていく距離感、増していく一体感。
これをどうしても味わいたかった。

しかし、緊急事態宣言が延長され、状況はなかなか好転しない世の中。
ついにこのツアーにも影響が出てしまい、渋谷2公演の開演時間前倒しと、大阪公演の中止が余儀なくされてしまった。
ベボベや、大阪の方たちの悔しさは計り知れないが、渋谷2日目に行く予定だった自分も、仕事の関係で確実に開演は間に合わず、途中参戦必至となってしまった。

しかし、年始の有観客ライブ中止の際も悔しい想いをしたし、もうこれ以上は…という気持ち、ここでまた止まってしまったら先に進めないという気持ちがきっとベボベにはあって、それならば今でき得る限りの手を尽くそうと、苦渋の決断を下してくれたのだと思う。
それならば、自分も可能な限りは参加しようと、途中からでも感染対策を徹底して行くことを決意した。

約40分遅れとなってしまったが、『SYUUU』『真夏の条件』『changes』『yoakemae』『ドライブ』『Stairway Generation』、アンコールで新曲(後にタイトルが『プールサイダー』と明かされる)『PERFECT BLUE』と、"Over Drive"というツアー名通り、ひたすら駆けていくようなライブで、途中からでもしっかり乗ることができた。

やっぱりそのバンドの力強さは、JAPAN JAMで観たときと明らかに感じ方が違くて、ライブハウスだからこそ、心臓の奥まで直に伝わってくる感覚があった。

ベボベってこんなにもロックバンドだったんだなぁと改めて感じたぐらい、この1年半、止まるどころかメキメキ力をつけてくれていた。
それでいて、世の中は様変わりしてしまっても、腕を振るタイミング、アンコール前の物凄い手拍子の一体感は、何も変わっていない。

そしてアンコールラストの『PERFECT BLUE』の、"会いたいよ また、君に"という歌詞は、ベボベ3人の想いをそのまま歌に乗せてくれているようだった。
戻ってきたな~!ただいま!おかえり!という気持ちになれた。

そして、名古屋公演も経て、迎えた6月4日ツアーファイナル。
これは元々予定されていたものだが、全編無観客で配信のみのライブとなっていた。
昨年、ベボベは何も仕方なく配信ライブをやっていたわけではない。
新たな可能性として、現場だけではなく、オンラインでも音楽を届けられるのではないか、というポジティブな動機からだ。

そして今回のツアーも、回れなかった地域に住むファンや、大阪公演の中止、渋谷公演の開演時間変更で行けなくなってしまった人、皆がライブを観ることができる。
自分も全編フルではライブを観られていないため、この試みは本当にありがたかった。

配信フォームにログインして画面の前で待機し、いざ開演時間になると、黒いバンの形をしたミニカーのアップから始まり、そしてカメラの前で揃って座るベボベ3人の画に切り替わる。

また各地を旅したいねという想いや、ツアータイトルにちなんでのミニカーらしいが、それをわざわざUFOキャッチャーに何度も挑戦して用意するという、スタッフの不器用ながらも粋な計らいに突っ込みながら、もはや配信ライブ恒例のユルい雰囲気でステージへ。
配置についてからも談笑しながら、楽しそうに演奏の準備をするメンバー3人。

そんな様子も配信ならではだが、そのユルさのまま「それでは、ツアーファイナルスタートです~。」と宣言され、1曲目に始まったのは『BREEEEZE GIRL』。
一気に風が吹き抜けるように爽やかな雰囲気に切り替わるが、小出氏の手元をよく見ると、先日赤い公園のラストライブのサポート時に弾いていた米咲さんのエレキギターを弾いている。
前回のnoteでも触れたが、「赤い公園と過ごした時間を引き連れてこれからもバンドを続けていく」という宣言を早速体現してくれている姿に、いきなり胸がアツくなる。
そして気付いたら画面の前で、Aメロでいつもやっているように手拍子をして、一緒にライブを盛り上げているような感覚になった。
そしてアウトロのシンガロングも勿論一緒に。
冒頭からもう、こんなにも引き込まれている。

続けて間髪入れずにリズムがガラっと切り替わり、ドラミングは止まらぬまま『short hair』へ。
"それでも僕は、君を待ってる"という歌詞も、歌われる度にその時々で響き方が変わってくる気がする。

ここでラジオ(=MC)に入るが、これまでの公演では既にこの辺で堀くんが感極まっていたという。
久しぶりに集まったお客さんの前で演奏できることに対する感動は、やはりライブが始まってその光景を目の当たりにした直後が一番大きいのだろう。
そしてまた、それを経て配信ライブをやると、また今まで行ってきた配信ライブとはまた違うという。
画面の向こう側に自分たちがいることをより強く意識してくれていたからかもしれない。

YouTube企画・LIVE IN LIVE ~IN YOUR HOME~での演奏も記憶に新しい『GIRL FRIEND』は、3ピースで演奏される度にどんどんソリッドになっていっている気がする。
毎回新鮮な間奏でのギターソロもさることながら、関根嬢のベースの存在感も増している。
配信ということもあるのか、音もかなり耳心地が良い。

続けてギターの歪みを効かせて始まったのは、逆に3ピースでは初披露となる『SCHOOL GIRL FANTASY』。
こうしてライブの度に4人時代の曲に新たにチャレンジし、レパートリーを増やしてくれるのは毎回嬉しさに尽きるが、それ以上に昔の曲というのはリスナーの思い入れも深く、リアルタイムで流れてくるコメント欄でも感嘆の声が多かった。

鬱屈した青春時代に対して、"辛いときは辛いと云えば いいよ"、"すべてのことを好きになれる"と歌ってくれる歌詞は、また今この状況で聴いてもグッとくる。
そしてアウトロのリズムを堀くんのドラムで残したまま、そのリズムに乗っかって"Aiyo ライツ、キャメラ、アクションで始まる僕らの次のセクション"…と小出氏のラップに突入し、『The Cut』になだれ込んでいく。

そしていつもは溜めていたところを、一気に畳み掛けるようにギターを解放させ、サビに流れていく。
もうこの展開には本当に圧倒させられて、ただただかっこよくて、泣きそうになった。
前曲で歌われていたことの流れもあり、憂鬱も辛いことも、全部ベボベが切り裂いてくれるかのようなパワーを感じて。

お次はさらにその勢いのまま『風来』へ。
配信ライブ・LIVE IN LIVE ~IN YOUR HOME PARTY~でも唯一「C3」から演奏されているこの曲はやはり思い入れの深さを窺わせるし、ツアーで演奏されるからこそ意義がある旅の曲だ。
ライブハウスでの演奏も相まって映え、早速ハイライトを感じさせる。

直後のMCでも、各地を旅してこの曲をやりたかったし、「C3」のツアーができていないことは未だに悔しいですと語っていた。
それほどアルバムを作ってツアーを回るということがベボベにとって大切なことだったかが分かる。
アルバムの曲が育っていく実感や、訪れた先々で起こる出来事と発見。
これがまた後々の制作やライブの糧になっていくからだ。

今回の唯一の名古屋遠征でさえ、とんでもない事件が起きてしまったりするのだから尚更だ。それは、ライブを終えて久々に乗った新幹線でのこと。
座った座席の通路を挟んで反対側に、某ロング缶のお酒を何本も買い込んで飲んでいるおじさんがいたのだ。

気にしながらも、疲れ切ってウトウトしてしまった小出氏だったが、10数分後にふと気付くと、床の周りを車掌さんたちが思いっきり拭きまくっていて、どうやら例のおじさんがロング缶の中身をぶちまけてしまったよう。
小出氏のリュックは酒びたしに…しかしおじさんは呆然と立ち尽くしている……という画(笑)

一部始終を見ていた堀くん曰く、おじさんも迷惑はかけまいと頑張っていたが、酔いには敵わずこぼしてしまったのだろう…かがんだ体制になるとさらに大惨事になりかねないので、床拭きに参戦することもできずに……と切ない気持ちになったとか(笑)

本当にたった一回の遠征でも引き当てるエピソードが強いので、またツアーの先々でこういう話が聴けるのは実に楽しみだが、笑いも冷めぬ中、ライブは『SYUUU』から後半戦へ。
直前のエピソードの後だと、"フレー! フレー!"という歌詞も何だか違った意味に聞こえてきそうだが、それ以上に曲の持つ本来の切なさが一気に胸に迫ってくるような洗練された演奏は、最新曲ながら流石としか言いようがない。

この『SYUUU』からは会場で自分も体感した流れだが、ここから一気に駆け抜けていく。
続く『真夏の条件』、思わずワオワオ言ってしまいたくなるようなキャッチーさは、たとえ3ピースになろうが、声は出せない中だろうが、配信だろうが変わらないし、逆に『changes』では導入部分にギターのインストが加えられたアレンジで、演奏される度に文字通り、変化を感じさせてくれる。

このイントロアレンジは春フェスでも披露されていたが、最初に聴いたときは何の曲か全くわからず、そこからガラリと『changes』が始まる意外性に驚かされたものだが、思えば過去のライブでこの曲の前に度々セットで演奏されていた『新呼吸』をオマージュしたアレンジのようにも思える。

そして不穏な雰囲気ただようエフェクトをかけたギターから『yoakemae』へ。
3ピースで演奏されたのは2018年の対バンツアーのI HUB YOU以来で、当時は音の隙間を補うように原曲とは全く違うギターリフでイントロを演奏していて、それはそれでなるほど!とテンションが上がったが、今回は原曲に回帰したようなアレンジで、Aメロで歌い始めてからも忠実にあのギターリフを再現している。

サビ、そして「こー…こーー……だっ!」と溜めに溜め切って放たれる大サビでも、歌とギターの手を一切緩めない小出氏。
ひたすら止まらずに太く走り続ける関根嬢のベース。
限界突破しまくってるような叩きっぷりを見せる堀くんのドラム。
アウトロに入っても熱がバチバチと上がっていくこの3ピースセッションは、会場で観ていても画面越しに観ていても、変わらず引き込まれるものだった。

ここで、ファイナルの配信では、これまでアンコール1曲目に披露されていた新曲へ。
ここにきて初めてタイトルが『プールサイダー』であることが明かされ、プールとサイダーだなんて、いかにも夏の曲をたくさん持つベボベらしいなと第一印象で思うが、これは"水際の人=poolsider"という造語だそうだ。

学生時代、泳ぐのが苦手だった小出氏は、水泳の授業をいつもプールサイドから見学していて、皆が楽しむ輪に入れないことに対する切なさがあったが、このことからやがて「皆が好きなものもどうせ自分は好きになれない」という思考になり、流行りものにも手を出さなくなってしまったそうだ。

しかし、世の中の状況も鬱屈し何が起こるかわからなくなってしまっている中で、もういい加減、その考え方はやめようという考えに変わったという。
JAPAN JAMでも、今までは恥ずかしくて掛けてこなかったサングラスを掛けていたように、自分のテンションが上がることをしよう!と。

歌詞にも"キラキラに飛び込む"というようなワードが出てきたのが印象的だったが、『SCHOOL GIRL FANTASY』で飛び込みたいと思っていた"あのキラキラ"に、いよいよプールサイドから飛び込む決意をしたのだ。
そう思うとまた今回、セットリストに久しぶりに『SCHOOL GIRL FANTASY』が組み込まれていたのも納得だが、『プールサイダー』は本当に心も身体も軽くなったように、軽快に弾むような曲調だった。
来る6月30日に配信リリースされるそうなので、音源にも注目したい。

そしてそのまま『ドライブ』へ。
こうして続けて演奏されると、テーマも近いだけに、日常の些細な出来事にも幸せを感じようとする歌詞により説得力が生まれるし、この2曲のようなモードだからこそ、今のベボベは肩肘を張らず、怖いもの知らずというか、とどまることを知らずキレッキレな演奏ができるんだろうなと思う。

「Base Ball Bearでした!」
と宣言すると、緩やかな雰囲気からまたガラっと変わるように関根嬢のベースがうねり、ラストの曲『Stairway Generation』へ。
思わず小出氏のボーカルが裏返ってしまう場面があったが、それほど一瞬一瞬の歌に全力を込めてくれているであろうことは、先述のMCを振り返ってもわかる。

ライブ序盤の、これから上がっていくぜ!という場面で披露されることが多い気がするので、今回この本編ラストの位置でこの曲をもってきたのは珍しいが、最後にしっかりとロックバンドであることを見せつけてくれるベボベのパワーは、またこれからテンション上げて頑張っていこうと思わせてくれるかのようだった。

-Base Ball Bear TOUR「Over Drive」ファイナル(配信) セットリスト-

01.BREEEEZE GIRL
02.short hair
03.GIRL FRIEND
04.SCHOOL GIRL FANTASY
05.The Cut
06.風来
07.SYUUU
08.真夏の条件
09.changes
10.yoakemae
11.プールサイダー(新曲)
12.ドライブ
13.Stairway Generation

このあと、ベボ部会員限定でアンコール的なエクストラライブも配信されたが、こちらの詳しい内容は割愛させていただく。
(打ち上げ感満載でユルユルで、それはそれは楽しいライブでした。笑)

個人的にはこの配信ライブは20代ラストのライブだったのだが、そんなタイミングで観られて本当に良かった。
ベボベと一緒ならこの先、30代以降も大丈夫だろう!と背中を押してもらえたような感覚。

この直後に関ジャムでも取り上げられたが、1年半ぶりのツアーというブランクも一切感じさせず、3ピースバンドとしてすっかり板に付き、どんどん力を付けているBase Ball Bear。
ライブを経るごとに、『SCHOOL GIRL FANTASY』~『The Cut』のように曲間を鮮やかに繋ぐアレンジができるのは、バンド感が増していっている証拠だし、よくライブでメドレーを入れたり間髪入れずに曲を畳み掛けるTRICERATOPSやUNISON SQUARE GARDENといった往年の3ピースバンドにも、もはや遜色なく渡り合えているような気がする。

だからこそ現場でも配信でも、どんな状況でも一切ライブ感を損なわず、観てるこちらも気付いたらテンションが限界を越えてOver Driveしてしまうのだろう。