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気付いたら20年 ~Base Ball Bear TOUR「DIARY KEY」~

2001年11月11日、高校の文化祭で結成されたバンド、Base Ball Bear。
そして20年後の同じ日、彼らは変わりながらも変わらず、ステージの上にいた。

メジャーデビュー、2度の武道館、震災、4人から3人へ、DGP RECOADS、コロナ禍…
本当に人の人生のように、良いことも悪いこともたくさん乗り越えてきて、気付いたらもう20年。

とはいえ自分は『ELECTRIC SUMMER』でかろうじて存在を認知し、本格的にハマり始めたのは『changes』、そして初めて行ったライブは1枚目のベストアルバムを引っ提げた「バンドBのすべて」ツアー(2013年)なので、すべての時間を共にしているわけではないけど、それでも20年という節目を共有できるのは嬉しかった。

雲一つない快晴の2021年11月11日。
恒例となっている日比谷野音でのライブは大半が6月開催であるにも関わらず一度も雨が降ったことはなく、出演する夏フェスの日も必ずといっていいほど晴れだった、さすが晴れバンドの結成記念日。

この日に有観客でライブをするのは3年前の「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」の名古屋公演でthe pillowsと対バンしたとき以来だが、今回もニューアルバム「DIARY KEY」を引っ提げたツアー初日という、これまた記念すべき日。

しかも、観客の前でアルバムを引っ提げて全国を回るというのは前作「C3」のときには叶わなかったので、ある意味この日からやっと再出発できるという、感慨深さが何重にも重なった日となった。

会場は中野サンプラザ。
ライブハウスやフェス会場を主戦場としていたベボベがホールでライブをすることは滅多になく、日比谷野音以外の指定席でベボベを観るのが自分は初めてだったので、それがまたさらに特別感を大きくしていた。

仕事終わり、会社から駆け付けた頃にはグッズもほぼ完売して買えなかったが、それだけ他の皆も思い出の品を求め、この記念日を特別に感じていたのだろう。
座席に着くと、ステージには中央に今回のアルバムの象徴ともいえる鍵穴を模したバルーンが据えられた、ビル群のようなセットがあった。

そしてお馴染みXTCの『Making Plans for Nigel』が流れると、そのセットの合間を縫うようにメンバー3人が登場。
ステージは大きくなっても、ドラムセットの前に集まって打ち合わせる様子は変わらない。

そして堀くんがステージ両袖に合図を送ると、リズム隊の音が一気に走り出し、『DIARY KEY』からライブはスタート。
関根嬢のベースはもうこのイントロから力強く、頼もしく、ドラムと共に小出氏の歌を両脇からしっかり支えていた。

アウトロの"To alive by your side"というコーラスは、初めて聴いたときに自分らファンに向けられているようでグッときたが、この日に聴くとそんな3人がこれからもずっと互いに側で音を鳴らし合っていたいというようにも聞こえる。

そして、堀くんのカウントからまたガラっとリズムを変えて『プールサイダー』へ。
このステージ上で呼吸を合わせて「ワン!ツー!」と切り替える瞬間は何度観てもかっこいい。

直後のMCで「緊張している」と聴くまで全くそんな感じはしなかったが、やはり20周年記念日という日の久しぶりのアルバムツアー初日、小出氏は5月に赤い公園のサポートで同じステージに立っているとはいえ、また違う大きなプレッシャーがかかっていたのだろうか。

とはいえ何よりもまずはこの瞬間を楽しみたい!という意思表示もあり、心地よいギターのカッティングと言葉遊びのような歌詞を展開する『動くベロ』は、ライブで聴くとより耳が楽しい。

冒頭3曲アルバムの曲順通りに続くと、馴染みのあるメロディーがゆっくりと奏でられ、ここで『GIRL FRIEND』へ。
メジャーデビュー曲であるこの曲はもう数え切れないほどライブで聴いてきており、3ピースとなってからの演奏もすっかり定着して久しいが、この日は特に明るさを増す照明とともに開けていく感じの間奏が、ステージの大きさと比例して一層気持ちよかった。

続く『A HAPPY NEW YEAR』はアルバムで唯一、関根嬢がメインボーカルを務める曲。
思えば自分がベボベにハマるきっかけとなった要素の一つにはこの人のコーラスがあるので、その歌をたっぷり聞けるのは嬉しいし、このときだけギターに徹してそっと脇を支える小出氏がまたかっこいい。
20周年を経て新たな1年を迎えるという意味でも歌詞が響くし、歌い切って笑顔でガッツポーズする関根嬢を見ていると、本当にこの日は"最高の1ページめ"だ。

そして再び小出氏がボーカルのバトンを受けつつ、ジャカジャーンとまた高らかなイントロを鳴らしたのは『17才』。
この曲もまた、まさに3年前のバンド17才記念日の日に演奏されたときは多幸感満載だったが、それは今も変わらない。
声が出せなくても、サビで\パンッ!パンッ!/とクラップして共に祝うことができるから。

ここでまたMCへ。
20年前の今日もライブをやっていたという事実に改めて感慨を抱きながらも、そういえばライブ当日はメンバー各々何してたの?という話へ。
高校の文化祭でもあった当日だが、堀くんは生徒会に入っていたため、文化祭で使われる金券の換金所の係を担当。
それを「内申点が欲しかったから?」といじる小出氏のクラスは、本場長崎から仕入れた本格的なカステラを出店していたという。

「生徒会」「内申点」「クラス」…というワードはまさに高校生という感じだが、関根嬢はというと、文化祭のステージでライブすることをクラスの誰にも言えず、わざわざ男装してこっそり本番を迎えていたという、一風変わった女子高生(笑)
そうまでして、実は誰よりもライブをしたかったという関根嬢。
男装の理由は初耳だったようだが、前身バンドで共に活動していたこともあった彼女の、そんな秘めたる熱量をずっと見ていて、小出氏が再びバンドに誘ったからこそ、そしてそのときドラマーとして加入していたのが堀くんだいう巡り合わせがあったからこそ今があると思うと、グッとくる。

そしてそんなメンバーたちとこれからも続けていくという決意表明として鳴らされた『ポラリス』では、これまたホールの大きなステージにも関わらず、堀くんがボーカルを務めるパートで小出氏と関根嬢がわざわざドラムセットの台に乗っかってきて、至近距離で向き合いながら演奏していた。
これには思わず自分もマスクの下で顔がほころんだし、そんな"ギタードラムベース輝くフレーズ"をこれからもずっと見ていたいし、聴いていたいと心から思った。

そして激しいドラミングを筆頭に、近年のライブではあまりなかったセッションパートのような展開に、次は何が来るのか想像がつかないワクワクが募っていくと、その盛り上がりのピークで鳴らされたイントロは『LOVE MATHEMATICS』。
めちゃめちゃテンションが上がるとともに、先の『17才』と同じように、"1.2.3.4.5, +1.+2…"の手振りで自分たちもライブに参加できるのは、コロナ禍のライブだからこそ一層嬉しい。

その勢いを引きずったまま続けて演奏されたのは、20周年にして初めて作曲にメンバー3人全員の名前がクレジットされた『悪い夏』。
3ピースとなってからは特に、このバンドはフロントマンである小出氏だけでなく、リズム隊の2人も時に主張し合いながら強固な三角形を成立させてきているなと感じさせられるが、ここにきて3人のアイデアが結集された曲が放たれ、しかもこの記念日にドーン!と演奏されるのはたまらない。
サビでその3ピースサウンドが爆発するような解放感も気持ちよく、今までで最も"3人映え"な曲ではないだろうか。

続く『_touch』では、数日前に出演していたラジオでサビ終わりの「~タッチ」というフレーズをライブでどう歌うのか注目されていたが、マイクがしっかりそのウィスパーボイスを拾ってくれていた。
そして初めて音源を聴いたときからも感じていたが、ラストのサビ前、ギターを歪ませながら畳み掛ける間奏を聴いていると、自分はやはりどうしてもそのオールローズの元持ち主の演奏を思い出してしまう。

そしてこのブロックのMCでは、「20年という時間が長かったか?短かったか?」必ずと言っていいほどこの質問をされてきたということで、この20年という時間がどれだけのものかを語る。

「気付いたら20年経っていた」と何気なく言うこともできるが、東京の街一つとってもめまぐるしく景色が変わり(未だに渋谷駅は変化が激しい…)、この20年の間で会えなくなってしまった人もいるし、逆に堀くんにはお子さんが生まれたりと、新たな出会いもあった。

個人的にもベボベを聴き始めた頃から振り返ると、高校生から大学生へ、大学生から会社員へ、そして3回もの転職をしていて、合間には愛知に移住して、また東京に戻ってきて…と、本当にいろいろなことがあった。
出会いや別れもたくさんあり、楽しかった想い出もあれば、地獄のように感じた日々もあった。

気付いたら20年と言いながらも、そのうち半分と少しの期間だけでもかなりめまぐるしく人生が変わっていったので、やはり20年という年月はものごい時間なのではないか。

そんな20年間バンドを続けてこれたのはやっぱり幸せなことだし、これからまた10年後…47歳は一番キツい時期と言われるけど…30周年も、そして40周年も繰り返し続けていけたら!と、決意を新たに演奏されたのは『新呼吸』。

まさにこの曲も朝から朝へ…を何度も何度も繰り返して生まれ変わっていくことを歌った曲だが、それを20年間もの間ずっと止まらずに繰り返してきたのがベボベだし、その重みがそのまま乗っかった演奏からものすごいパワーが流れ込んできて、涙腺がこじ開けられた。
あのMCの後にこの曲でそんな演奏をされたら、そりゃ泣いてしまう…ズルい……。

アルバムにも特典CDが付属されている「LIVE IN LIVE ~IN YOUR HOME~」のときとはまた少しアウトロのアレンジを変え、余韻を残すか残さないかといったところでまたガラリと新たなギターリフが初まると、「ここでゲストを紹介しましょう!」と呼び込まれたのは、女性ラッパーのvalknee。
そう、『生活PRISM』だ。
おそらくこの日限りのスペシャルなコラボ。
歌詞に合わせた彼女の身振り手振りがノリノリで見ていて楽しくて、ベボベへの愛とリスペクトを感じるラップだった。
そして小出氏もリフを刻みながら畳み掛けるようにラップしているから凄い。

この曲も24時間を週7回繰り返す、すべての生活者に向けて歌われているが、この「24×7」を繰り返した果てに今日みたいなおめでたく感慨深い日があるのなら、人生悪くない。
そんなことを思いながら次の『ドラマチック』でも、これまでの日々を走馬灯のように思い出した。

ここまで来るともうライブも終了か…と思いきや、『海へ』と続く。
この曲がまたその瞬間の状況や照明演出とも相まってかなりグッときた。
歌詞の通り、まさにツアー初日。
始まったばかりでまだまだ終わりたくないという想いと、まだまだ続いていきそうな予感とがステージ上で渦巻いていたように見える。

そして本編を締めくくるのは『ドライブ』。
些細な日常にも生きている喜びを感じさせてくれるこの曲では、ミラーボールがグルグルと放つキラキラした光の放射が、そんな日々の素晴らしさと、今日まで生きていて良かったと改めて教えてくれた気がした。
本当に今年入ってからも続いた苦しい期間に寄り添ってくれた曲なので、こうして集大成のライブで聴けたのは嬉しい。

そしてアンコール。
せっかくだからと、バルーンのセットの周りをグルっと遠回りして配置につく小出氏。
もう数え切れないほどステージに立ってきたであろうが、20年経った今でもその瞬間瞬間を楽しむ様は素敵だ。

そんな数多あるステージの一番最初、2001年11月11日の文化祭ライブのこと覚えてる?
というMCへ。
実は当時、機材トラブルでライブ中に音が止まってしまったという。
そしてそのライブ後には小出氏と堀くんがケンカして一旦解散という一幕も…。

そんな、一聴すると苦い思い出のようなエピソードさえも楽しげに話す3人を見ていると、ここまで数々の困難をも楽しみつつ乗り越えてきたことが窺えるが、そのすべての始まりとなった文化祭ライブの思い出にタッチ、そう、"_touch"(ウィスパーボイスで)する気持ちで…と演奏されたのは、なんとまさにそのライブで披露したSUPER CARの『My Way』!

そのときだけ20年前に戻ったようなステージ。
なんだか物凄い瞬間に立ち会ってしまった…という興奮を抱えながら、まるで未だに青春真っ只中にいるような3人のハジける演奏をただただ目に焼き付けた。

そして、「僕ら"永遠の文化祭バンド"みたいだよ堀之内さん!だからこれからもずっと文化祭バンド続けてこうぜー!」と小出氏の投げ掛けに応えるように、「ジェ、ジェ、ジェジェジェ、ジェネレーション!!!!!!!!!!」と堀くんが叫び『夕方ジェネレーション』へ。
この曲もまた初期からずっと演奏され続けているが、いつライブで聴いても全く色褪せず楽しいし、今思えば"人類の進化だって夕方あたりだっていう"というフレーズはまさに、幾つになってもその瞬間を楽しみながら進化し続けるベボベをまさに体現しているなと思える。

普段ならアンコールは2曲が通例だが、1曲目にこの日限りかもしれないスペシャルなカバーをやったので、「20年ぶりの文化祭にお越しいただきありがとうございました…」と加えてもう1曲演奏されたのは『祭りのあと』。
"20年ぶりの文化祭"とは粋だなぁと思いながら、最後は思いっきり拳を振った。

-11/11 Base Ball Bear「DIARY KEY」@中野サンプラザ セットリスト-

01.DIARY KEY
02.プールサイダー
03.動くベロ
04.GIRL FRIEND
05.A HAPPY NEW YEAR
06.17才
07.ポラリス
08.LOVE MATHEMATICS
09.悪い夏
10._touch
11.新呼吸
12.生活PRISM feat. valknee
13.ドラマチック
14.海へ
15.ドライブ
en1.My Way(SUPER CARのカバー)
en2.夕方ジェネレーション
en3.祭りのあと

緊張してると言いながらも、″永遠の文化祭バンド″と自ら言っていたように、照明を浴びるステージ上の3人がめちゃめちゃハジけてて、輝いて見えたステージだった。
今日ばかりは、誰より自分たちが楽しむぞ!っていう感じが溢れてた気がした。

ツアーのセトリの中に組み込まれると、「DIARY KEY」の曲たちの良さがより際立つし、既存の曲たちとの化学反応も良かった。
何よりやっぱり生演奏で聴いてなんぼ!
アレンジしかり、照明との相乗効果もしかり、配信では味わえない最高の時間だった。

そして今日12月19日、広島にてこのツアーも無事に終了したとのことで、お疲れ様でした!
ツアー初日でこれだけの感動を覚えたものだから、セトリが育っていった果ての今日のライブは、それはそれは素晴らしいものだったことだろう。

小出氏も本数を重ねていくごとに「セットリストが成長してる」「これだよこれ!!!!」とツイートしていたのが印象的だったので、やっぱりライブで何度も演奏してこそなのだなぁと。
本当に「C3」でそれができなかったのは悔しそうだったし、自分も今回は初日のみの参加で、そうしたツアーを経ていく醍醐味というのを完全には味わえていないので、来年以降はまた各地、ベボベと一緒に旅ができたらいいな。

気付いたらバンドは20周年を迎えていたけど、25周年も30周年もその先も、それを繰り返していきたい。
それまでまた自分なりに24×7の生きる活を回していく所存!