見出し画像

【ネタバレあり雑感】UNISON SQUARE GARDEN「Patrick Vegee」ツアー@静岡

昨年、UNISON SQUARE GARDENが2020年9月にリリースした8枚目のアルバム「Patrick Vegee」。
特にこのアルバムはこれまで以上に曲から曲への繋がりに快感と感動を覚えるものだっただけに、ツアーが楽しみだったが、昨今の情勢から誰もが気兼ねなくライブに足を運べるようになるまでは、アルバムを引っ提げた従来通りのツアーをユニゾンは封印していた。

そのため2021年に入ってしばらくは、アルバムは引っ提げずにやりたい曲を普通にやるツアー「Normal」や、過去にリリースしたライブ映像作品の通りにライブを再現するリバイバルツアーを2本(「Spring Spring Spring」「CIDER ROAD」)回るという、コロナ禍ならではの試みで各地を回った。

さらに秋には自主企画「fun time ACCIDENT 3」で、普段は交わらない注目のバンドたちを招いて共演したり、合間で投票を募ってセトリを組んだ配信ライブや、各フェスへの出演にも精力的だった。

そうこうしてまでライブを止めずにやり続けたのは、紛れもなくユニゾンがロックバンドだからだし、依然として好転しない状況の中でも、「ロックバンドはライブをする生き物」という当たり前を忘れないように提示してくれていた。

そして10月。
ツアーが発表された当時は、世の中がどうなっているか分からなかったが、これを書いている今、完全にとは言わないまでも、状況が落ち着きを見せ始めた中で無事、1年越しの「Patrick Vegee」を引っ提げたツアーが始まった。

もちろん、マスク着用必須かつ声出し禁止など、感染対策ガイドラインは続けながらではあるが、アルバムを引っ提げて全国を、長い期間かけて回るツアーは本当に久しぶりだったので、ようやく戻ってきた~!という感慨がある。

自分は早速ツアー3本目の静岡公演に参加してきた(トップ画が「さわやか」のげんこつハンバーグなのはそのため 笑)が、声が出せないだけで通常運転のまま繰り広げられたライブにいざ参加してみてより、いつものユニゾンが帰ってきた~!という感じがした。

もちろん先述の通りライブやツアーはやり続けてくれていたが、直近のツアー2本はリバイバルツアーだっただけに次が読めたのに対し、曲間で次に何が来るんだろう…と固唾を飲んで待つ雰囲気や感覚は本当に久しぶりで、裏切られたり裏切られなかったりの連続が楽しくて。

前置きが少々長くなってしまったが、まだ始まったばかりで来年まで続くこのツアー、多くは語れないながらも、今回の感動をまだホットなうちに残しておきたいと急遽思い立ち、ここから先はネタバレありで雑感を書きたいと思う。

まだツアーに参加していない方で、内容を知りたくない場合は、この先ネタバレ注意!




















10月17日(日)、静岡は富士市文化会館ロゼシアター。
3年前にも「MODE MOOD MODE」のツアーでこの場所を訪れたが、それ以来の再訪でこんなに大きな会場だったっけ?と驚く規模のホールにも、たくさんのユニゾンファンが集っていた。

当時とは違う、感染対策ガイドライン下でライブを行うというイベンターからのアナウンスと、まもなく始まりますという言葉に一斉に拍手が起きた瞬間、会場は暗転し、SE『絵の具』に乗せてメンバーが登場。

1曲目はこれまでの定石通り、アルバム1曲目の『Hatch I need』だろうと確信に近い気持ちでいたが、SEがフェードアウトした瞬間、"全部が嫌になったなんて簡単に言うなよ"と斎藤さんが弾き語り始め、初っぱなから度肝を抜かれた。

そう、ライブは『Simple Simple Anecdote』からスタートしたのだ。
去年アルバムで初めてこの曲を聴いたときも、このつらいご時世に気持ちを軽くしてくれる言葉たちが詰まってるなぁとグッときた曲だったので、久々の通常モードのツアーの幕開けと同時に歌われ、感動が倍になっていきなり涙腺がやられてしまった…。

心を撃ち抜かれて鳥肌になっている中、一気にギアを上げるような瞬発力で、今度こそ『Hatch I need』を繰り出し、さらにアルバム通り、"…I need Hatch"→"マーメイドの…"と間髪入れずに『マーメイドスキャンダラス』を畳み掛けた。
2曲続けて聴くと、曲と曲の繋ぎの部分で"8枚目"と言っているように聞こえるという、いつもの遊び心溢れる仕掛けをライブでも再現してくれた。

「UNISON SQUARE GARDENです!」と高らかに宣言すると、続いては前作7枚目の「MODE MOOD MODE」から『Invisible Sensation』。
とはいえ4年前のシングルなので、もうすっかりライブでも定着していて、会場中がキタコレ!と言わんばかりに跳ねまくっていた。

そしてお次はさらにその前作6枚目の「Dr.Izzy」から『フライデイノベルス』と続き、これはもしや段々と遡っていく感じか?とついつい規則性を探してしまうが、そんなものユニゾンにあるはずもなく、一気に1stアルバムまで戻って『カラクリカルカレ』へ。
意外な2曲が続き、まさに空を"超えていけよ"と言わんばかりに会場の沸点も上がっていっていたような気がした。

続けて斎藤さんが「新曲っ!」と叫んで始まったのは、先日配信リリースに加え、早くも映像化された「Spring Spring Spring」リバイバルツアーの円盤に特典CDとして付いたばかりの新曲『Nihil Pip Viper』。
先立って初めて聴いたときから中毒性がものすごいなと思ったが、ライブで演奏されると、その一筋縄ではいかない、あっちこっちへ展開する曲調がより際立つ。

そして『Dizzy Trickster』が鳴らされると、「MODE MOOD MODE」ツアーで初披露されたときと違って、既存曲として自然とセトリに組み込まれている中だと、改めて純粋にライブ映えするなぁと感じさせられた。

続けざまに跳ねる曲を畳み掛けきった後、ひと休みするようにここで暗転と沈黙がしばらく訪れるのだが、このときの次に何が来るんだろう…と固唾を飲んで待つ雰囲気や感覚は、冒頭でも書いたが、直近のリバイバルツアーのときとは違って本当に久しぶりだ。

そんな緊張も混じったような静けさを引きずったまま、ギターの弦だけがリフをゆっくり刻み始め、『摂食ビジランテ』へ。
この曲はサビに入ると一気にギタードラムベースが爆発したように鳴り出すのだが、ライブだとその迫力もさらに強い。
そのまま続く『夜が揺れている』でも、激しく畳み掛け続ける。

そして個人的にはここからの3曲の流れが特にお気に入りポイントなのだが、お次は『夏影テールライト』。
直近、ファンクラブで募ったランキングでも早速上位に食い込んだこの曲は、アルバムでも前後を繋ぐ緩衝材のような重要な役割を担っている気がして、そうなると当然次の曲は…と予想するも、それに反して鳴らされたのは『オーケストラを観にいこう』。
そうかそういう世界線もあったか!と、片思いの淡い気持ちが幻に消えずにさらに募っていく展開にグッとくる流れ。

しかし、このままで終わらないのがユニゾン。
ここでまた『Phantom Joke』である。
アルバムの流れに引き戻される、急転直下の展開。
夏の夜、そして30度を超えた日曜にどんどん近づいていった2人の距離は、枯れ葉が舞う頃には結局幻に消え、嘘となってしまったのだろうか…。
ガラっと雰囲気を変え、激しく揺さぶられるような演奏は流石としか言いようがない。

そしてここで、ドラムソロタイムへ。
ワン!ツー!スリー!と半ば雄叫びのようにカウントをしながら貴雄氏が高速ドラミングを披露し、さらにギターとベースのソロリレーも鮮やかに決まると、『世界はファンシー』へ。
その流れるような歌と"fantastic guitar"に圧倒され魅了されているうちに、思わず"ハッピー!"のところでMVのようにピースサインをするのを忘れてしまった…(笑)

そして次にイントロが鳴った瞬間に田淵が拳で虚空を力強く殴ったのは『スロウカーヴは打てない(that made me crazy)』。
会場もそれに反応するようにさらに沸き立つ。
そしてここでも自ずと次に来る曲は…と予想してしまうが、レイテンシーもなく即座に『天国と地獄』へなだれ込んでいく様は、もはや全然直球じゃないです…。
しかし、通常のツアーで演奏されるのはかなり久しぶりな気がする分、会場中のテンションの爆発は凄まじかった。

そんな中で『シュガーソングとビターステップ』がくるもんだから、もうクライマックス感が凄い。
『Nihil Pip Viper』でも"蓋然性合理主義なんてガキの遊び"という歌詞が出てくるが、次に来る曲の可能性(=蓋然性)を無視した選曲群を経て再び同じようなニュアンスのフレーズが歌われると、やっぱり一筋縄ではいかないのがユニゾンの面白さだよなぁと改めて実感する。

踊るように楽しい時間もあっという間に終わり、でも演奏後にも拍手がしばらく鳴りやまない余韻の中、「UNISON SQUARE GARDENでした!」と、『101回目のプロローグ』へ。
アルバムでもラストを飾るこの曲だが、終盤に向けてどんどん高まっていく演奏は、また新たに何かが始まりそうな予感もして感動的だ。
それはライブだとより強く感じられた。

アンコールでは拍手の大きさからか、思わず斎藤さんも「いいお客さんだよ本当に…。」と感嘆の声を漏らすと、貴雄が「バンドがいいからねー!」と、テレパシーが伝わったかのように自分たち観客の声を代弁してくれた。
そう、バンドがいい。
本当にこれに尽きる。

「やりますか~!」と、また一気に演奏にギアを入れるように始まったのは『crazy
birthday』。
「CIDER ROAD」のリバイバルツアーでも、”起承転結結結”な流れを作っていたのが記憶に新しいので、またいきなりぶち上がるような曲をここでもってくる今のユニゾンは本当にパワフルだ。

そしてさらに『オトノバ中間試験』と続くと、観ているこちらも手足が筋肉痛になりそうな勢いなので、本当に"息継ぎがてんでない"斎藤さんが心配になる。
しかしそれは全くの杞憂で、ラストの『春が来てぼくら』では、大サビ前の次のフレーズを、いつも以上に語気を強めて歌ってくれた。

"新しいと同じ数これまでの大切が続くように"

これは久しぶりの有観客フェスとなった春の「VIVA LA ROCK」で歌われたときもそうだったのだが、ユニゾンなりの、今のこの状況に対する切なるメッセージのように感じて、泣きそうになるほどグッときてしまった。

久しぶりにアルバムを引っ提げたツアー。
そして本編のMCでもその喜びを語っていたが、久しぶりに静岡でライブができているこの日。
ライブの楽しみ方は新しい様式に従わざるを得ないが、同じようにこれまであったライブの形も、また再開して続いて欲しい。
田淵もこのフレーズのとき、感情を溢れさせるように、力強い身振り手振りをしたように見えた。
こちらにもその想いは届いたし、みんな同じ気持ちだ。
これまでの大切が続くように、引き続き、ガイドラインなど、守るべきものを守りながらライブに行き続けたい。

-10/17 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021-2022「Patrick Vegee」@富士市文化会館ロゼシアター セットリスト-

01.Simple Simple Anecdote
02.Hatch I need
03.マーメイドスキャンダラス
04.Invisible Sensation
05.フライデイノベルス
06.カラクリカルカレ
07.Nihil Pip Viper
08.Dizzy Trickster
09.摂食ビジランテ
10.夜が揺れている
11.夏影テールライト
12.オーケストラを観にいこう
13.Phantom Joke
14.ドラムソロ~世界はファンシー
15.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
16.天国と地獄
17.シュガーソングとビターステップ
18.101回目のプロローグ
en1.crazy birthday
en2.オトノバ中間試験
en3.春が来てぼくら

「雑感」のつもりで書き始めたが、振り返ってみれば、がっつりなライブレポになってしまった…(笑)
この感動をどうしても今のうちに書き留めておきたかった一心で。
こういうところでも、ユニゾンは一筋縄ではいかないし、蓋然性合理主義が通じない。

でも、依然として声が出せない状況が続く中、どんな曲がこようと一瞬で、飛び跳ねたり拳を振ったりしてぶち上がれる会場のテンションはみんな流石で誇らしいし、いいお客さんだと斎藤さんが言ってくれたのも、きっとそのテンションが伝わってくれてたんだろうなと思う。

それもこれも何せ、バンドがいいからねー!!