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UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022「kaleido proud fiesta」ライブレポ

昨年から続いた「Patrick Vegee」のツアー、そして各地ゲストを招いた対バンツアー「fun time HOLIDAY 8」に続き、既に今年3本目を数えるのが「kaleido proud fiesta」のツアー。

もはや年中ツアーを回っているという通常運転に戻りつつあるユニゾンにとって、このシングルを引っ提げたツアーというのは、他ではあまり無い気がするがもはや恒例だ。
(ちなみにもう次にはまたシングル『カオスが極まる』を引っ提げた4本目のツアー「fiesta in chaos」の開催が決まっている。笑)

自分は今回、結成18周年記念日と重なった7月24日のNHKホール公演と、ツアーファイナルとなった9月27日の東京ガーデンシアター公演に参加してきた。

プロモーターからのアナウンスを合図に会場が暗転し、いつものようにSEの『絵の具』(イズミカワソラ)が流れ始める。
だが少々いつもと違うのは、ステージ上に人影らしいものが現れてもメンバーの姿が確認できないこと。
そう、今回はステージと客席との間に紗幕がかけられていたのだ。

そのままピアノのイントロが流れ始め、幕の向こうでメンバーの影が躍動し始める。
かくして『harmonized finale』からライブは始まる。
斎藤氏が歌い始めても幕は下ろされたまま。
皆が幕に投影された3つの影をじっと見つめながら聴き入っているが、静かながらも演奏は徐々に熱を帯びていく。

そして間奏を経て、
"harmonized finale 星座になるー"
と歌い始めた瞬間、パッとステージがくっきり姿を現し、バックにはまさに星座のように散りばめられたLEDが輝きだした。
まずこの演出にグッときた。

思えば、コロナ禍以降最初の有観客ツアー「USG 2020 "LIVE (on the) SEAT"」では最後に演奏されたこの曲。
当時はあまりにも歌詞と状況がマッチしすぎていてとてつもない感動を覚えたものだが、またそこから2年をかけて通常運転のツアーモードへと返り咲き、"新しい時代へと橋"を架けたユニゾンの演奏で改めてこの曲を聴くと、答え合わせのようでまた感慨深いものがある。

特にガーデンシアター公演では、同じ場所でユニゾンのライブを観たのがそれこそLIVE (on the) SEAT以来だったので、そこから地続きになっているようなストーリーを感じて、もう初っ端から何重にも感動が畳み掛けてきたのだが、浸っている隙を与えてくれないのがまたこのバンド。

ガラリと『箱庭ロック・ショー』へと移り、まさにUNISON SQUARE GARDENロック・ショーの開幕を高らかに宣言したようなモードに入ると、会場の皆も一気に跳ね上がる。
そして間髪入れずに『世界はファンシー』と続いていくのだが、この曲間を設けず次々と迫ってくるスピード感はいつ味わっても気持ちいいし、アトラクションに乗っているような楽しさがある。
特に次の『シャンデリア・ワルツ』が始まった瞬間、会場中が瞬発的に飛び跳ねまくる光景は、記念日のNHKホール公演ではものすごく祝祭感を感じた。

冒頭からハイライトのような盛り上がりを演出した後、いったん静寂が訪れるが、特にコロナ禍以降はより顕著に感じるこの時間、皆が次は何の曲だ?と固唾を飲んで待ちながら、ただペットボトルで水を飲む音だけがあちこちから聞こえてくるのが好きだったりする。
やがて、グルーヴィーな音が鳴り始め、『CAPACITY超える』へ。
昨年の「Spring Spring Spring」再現ツアーではメドレーの中で聴くことができたが、フルサイズでライブで聴けたのが個人的には初めてだった。
ここから、シングルツアーの魅力である自由度の高いセットリストが様相を呈していく。

続く『Silet Libre Mirage』も、「MODE MOOD MODE ENCORE」を最後に最近では演奏されていなかった気がするのでそろそろ…と密かに切望していたので嬉しかった。
歌詞がまたユニゾンには珍しく背中を押してくれる感じで好きなのだ。

そして7曲目にまた「7枚目っ!」と叫んでスタートする、『Own Civilization (nano-mile met)』をもってくるのがまたニクい。
ここからダークな雰囲気を纒い次の『ラディアルナイトチェイサー』へと繋げるのだが、これもまた2019年のB面ツアーを最後にお蔵入りするかと思っていたので、以前ユニゾンの紹介記事でも書いたが、カップリングでも抜かりがないカッコ良さを見せつけてくれるこの曲が来たらそりゃもうテンションが上がる。

"目が覚めるまでそっとしていて欲しい"と演奏の余韻を残したまま、さらに"I'm sane, but it's trick or treat?"と、まるで1つの曲であるかのごとく隙間なく続けざまに『fake town baby』に入るという流れもゾクゾクっと興奮するほど見事だった。

ここでまた静寂を挟み、印象的なギターリフのイントロから『5分後のスターダスト』へ。
これまたB面ツアーぶりの披露となったこの曲は、ある種ゾーンに入ったかのような秋の夜長の心地よさを歌っている曲だと解釈しているが、まさに自分もゾーンに入ったかのような感覚に浸って聴いていた。
冗談抜きで前述の『ラディアルナイトチェイサー』とトップを張るぐらい好きなB面曲なので本当に嬉しい選曲の連続。

ゆったりとした余韻のまま、続けて『弥生町ロンリープラネット』へ。
この曲もまた、「Patrick Vegee」のツアーでは披露されず配信ライブでしか聴いたことがなかったので、ようやくリアルライブで聴くことができた。
『Silent~』しかり、『fake town~』しかり、B面曲しかり…最近日の目を見ていなかった曲たちをうまく流れの中に落とし込んだ、本当に痒いところに手が届くセットリストだなと思う。
ギターの弦がサビ前に\ピャーーーッ/と鳴るやつ、たまらなく好きです。

そうと来れば次は春が来るか…?と思いきや、おもむろにギターリフを刻み始める斎藤さん。
そして貴雄がリズムに乗り(時にそれをぶっ壊し)ドラミングで続く。
我慢比べのようなギターVSドラムのセッションが始まるが、田淵はその様子をガン見しているという構図。笑

ギターリフの時点で気付いた方も多いと思うが、これは『ワールドワイド・スーパーガール』のイントロであり、そのまま曲に入ると、たとえ声出しNGの状況でも誰もがサビで心の中\Yeah!/と叫んだだろうし、ガタガタ騒いだことだろう。
しかしそんなワールドワイドのテンションが突き抜けてしまったのか、ガーデンシアター公演では大サビに入る直前に貴雄がドラムを叩きながら叫びまくり、それによって斎藤さんが歌に入るタイミングがズレてしまうという、なんとも珍しいハプニングが。
しかしすぐに3人でリズムを合わせて立て直してくるあたりは、さすが18年もの間3ピースのアンサンブルを磨き上げ続けてきただけあり、「あーあ…」というよりも「すげぇ!」という感情の方が圧倒的に勝った。

そのまま何事もなかったかのようにまた斎藤さんがさらにキレ味の増したようなギターリフを始め、無数に並ぶアーチ状のセットにLEDの光が走りまくるという不思議な演出の中、長くアレンジされたイントロを経て『ナノサイズスカイウォーク』へ。
既に3曲目となるB面曲だが何を隠そう『kaleido proud fiesta』のカップリングなので、間違いなくこのツアーの裏の目玉であっただろう。
2番サビを"ナノサイズスカイスカイウォーク"と余韻を残さず巻き気味で歌い切るや否や、ギターソロをはじめとしたセッションがこの日一番かのような高まりを原曲には無いアレンジをもって見せてくれ、まさに飛び回りたくなるように観ているこちらもテンションが上がった。

ここでさらにまたセッションを展開すると、斎藤さんが曲名を高らかに宣言して始まったのは『サンポサキマイライフ』。
ライブもハイライトを迎えているであろうタイミングでまだ、何かが始まろうとしているかのようなワクワクする長いイントロ、そしてそれが明けた瞬間の\ハイッ!/(実際に叫ぶことは勿論できなかったが)に、もう胸の高まりが止まらない。

続く『オリオンをなぞる』では、キラキラと輝きを放ちまくるミラーボールと、「最高ロマ~ン!」と原曲以上の手数で凄まじいドラムを叩きながら叫ぶ貴雄が、"軽くテンションMAX"になった我々の気持ちを演出し、代弁してくれる。
そして、"ココデオワルハズガナイノニ"
と曲が締めくくられ、次に歌われたフレーズは、

"かくしてまたストーリーは始まる"

そう、ここでツアータイトルにもなっている『kaleido proud fiesta』である。
アルバム「Patrick Vegee」でもやっていた、曲の最後の歌詞と次の曲の頭が繋がっているという仕掛けを、ここにきてライブで、しかも最新曲と10年以上前の代表曲を結び付ける形で施してきたのである…!!
もうこれには本当にやられた。
ステージ上部には天井から、

UNISON
SQUARE
GARDEN

の文字のセットが下りてきたが、まさにUNISON SQUARE GARDENというバンドの歴史をバーンと見せつけられ、特に結成記念日のNHKホール公演では、カラフルな照明とも相まって感動が押し寄せてきた。
しかもまだまだこれから快進撃は始まるというのだから…。

その始まり感を示唆するように、曲後うっすらと、とある曲のイントロのオケが流れ始めたときには愕然としてマスクの中でニヤけてしまった。
そう、さらにここで『to the CIDER ROAD』!
まだ終わらないのか…!!と。笑
どこまでも純粋に次へ次へと進んでいくようなポジティビティー溢れる曲の畳み掛けに、半ば泣きそうになりながらも拳を振った。

そしてドラムがまた違ったリズムで跳ね始めると、ギター・ベースも負けじとセッションを繰り広げ、「UNISON SQUARE GARDENでした!」の挨拶とともに『10% roll, 10% romance』へ。
気のせいでなければこのイントロ部分のセッションは、7月のNHKホールで聴いたときと比べ、ツアーファイナルのガーデンシアターでは長さを増していた気がした。
そして一気にまた飛び跳ねまくる会場中。
昨年の「CIDER ROAD」リバイバルツアーも終盤の畳み掛けが凄まじかったが、今回もそれに引けをとらないんじゃないかというぐらいハイカロリーなセットリストに思える。
それでもあっという間に感じるのは、MCが無いというのも要因としてあるかもしれないが、何より楽しかった~!と心から思えるから。
ここで本編を終えアンコールへ。

ガーデンシアター公演では長い手拍子を経て最初、斎藤氏と田淵氏が袖から登場して、あれ、貴雄氏は?となかなか出て来ずにソワソワしていると、程なくダッシュで登場してきて上着を投げ捨て、ドラムセットに座って、即「…っ午前3時の…」と爆速の『Cheap Cheap Endroll』が始まったのだが、これにはマジで痺れた。
そこに3人が揃いさえすれば、すぐにライブは始まる。
そこにはどんな約束も制約も、"蓋然性合理主義"も要らない!音楽は自由だ!と言わんばかりだ。

続けて『シュガーソングとビターステップ』が始まると、そこはどんな場所であってもダンスホールになるし、アンコールで演奏されるのは初めてに思えるが、今やセトリのどの位置に置かれてもこの曲は会場を踊らせる。
田淵はいつも以上にのびのびとステージを縦横無尽としていた。

そして「ラストッ!」の掛け声とともに『場違いハミングバード』でなお余りあるエネルギーを放出させまくってライブは幕を閉じた。
結局、記念日のNHKホール公演ですらそうだったのだが、ツアーファイナルのガーデンシアター公演でも、ほぼMC無しで約90分を駆け抜けて行った。

- 7/8~9/27 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022「kaleido proud fiesta」セットリスト -

01.harmonized finale
02.箱庭ロック・ショー
03.世界はファンシー
04.シャンデリア・ワルツ
05.CAPACITY超える
06.Silent Libre Mirage
07.Own Civilization (nano-mile met)
08.ラディアルナイトチェイサー
09.fake town baby
10.5分後のスターダスト
11.弥生町ロンリープラネット
12.ワールドワイド・スーパーガール
13.ナノサイズスカイウォーク
14.サンポサキマイライフ
15.オリオンをなぞる
16.kaleido proud fiesta
17.to the CIDER ROAD
18.10% roll, 10% romance
en1.Cheap Cheap Endroll
en2.シュガーソングとビターステップ
en3.場違いハミングバード

新曲は『kaleido proud fiesta』とそのカップリング『ナノサイズスカイウォーク』の2曲だけ。
それ以外は当然既存の曲になるのだけれど、それでも毎回新鮮な感動と楽しさをくれる選曲と繋げ方、その見せ方、演奏力は本当に見事だなと…。

田淵がブログで、セットリストを見てからライブに参加する人がいることに驚いていたが、それじゃあ勿体ないぜと言わんばかりの構成だった。

そして2公演参加したからこそつくづく、ライブに1つとして同じものは無いなぁと。
細かいイントロや間奏のアレンジが変化していた気がしたし、何よりガーデンシアター公演での『ワールドワイド・スーパーガール』のハプニングと、それでも演奏を止めずに見事に乗り切ったという一部始終があったからこそ、

"ココデオワルハズガナイノニ" 

"かくしてまたストーリーは始まる"

の流れがより一層ドラマチックに感じて、もう心の中で嬉し泣きが止まらなかった。
かくしてUNISON SQUARE GARDENの快進撃は始まった。