熱いアイツら、FLOWER FLOWER
前回のnoteでYUIさんについて熱く書かせていただきましたが、今回は彼女がボーカルを務めるFLOWER FLOWERというバンドにスポットライトを当てて書きたいと思います。
これがまためちゃめちゃカッコいいので、ぜひ聴いて欲しい!好きになって欲しい!の一心で。
2012年、シンガーソングライターとしての活動に一旦幕を下ろしたYUIは、水面下でバンド活動を始めることになる。
勿論ボーカルギターはyui(このバンドでは名義を小文字にしている)で、ベース、ドラム、キーボードを率いた4人編成のバンド、FLOWER FLOWERだ。
まず最初に日の目を見ることになった曲は、『月』。
CMのタイアップだったので聴き覚えのある人もいるかもしれないが、新たな始まりを思わせるような開けていく曲調に心を踊らせたものだ。
その後も『神様』を配信リリースし、1stアルバム「実」とコンスタントに曲を放ち続けるのだが、そのどれもが新鮮で、これまでのYUIとは一線を画すものだった。
それを如実に表しているのが曲名で、これまでYUIではすべての曲がアルファベット表記だったのに対し、FLOWER FLOWERでは、『とうめいなうた』『素晴らしい世界』『スタートライン』のように、この時点ですべての曲名が日本語表記なのである。
後に『Sunday』という曲がアルバム収録される例外(?)はあるが、この曲名表記だけでも、これまでのYUIとは明確に違うぞという意志が感じられる。
中でも『素晴らしい世界』はその名の通り、多幸感溢れる名曲なので特に自分も好きな曲。
何が違うのかを自分なりに分析してみると、一つは、歪むギターや時に変則的で様々な音が鳴りまくるバンドサウンドではないか。
一筋縄ではいかないような音と音とのぶつかり合いが目立ち、yuiの歌が中心にあるわけではない。
何よりライブを観ていると、ポップなメロディーというよりも、バンドで音を鳴らすことを楽しんでいる姿がものすごく伝わってくるのだ。
『コーヒー』という曲で暗に吐露されているが、YUI時代はあまりに売れてしまい、シングルをリリースする度にタイアップが付くような状況に、窮屈さを感じるようになってしまっていたのかもしれない。
勿論、彼女自身YUIを否定しているわけではない(これは後でもしっかり書きたい)のだが、本当にイキイキと自由に鳴らしたい音をFLOWER FLOWERでは鳴らしている。
そんなバンド、フラフラを支えているのが、凄腕のメンバーたち。
EGO-WRAPPIN'等でサポートを務めるベーシスト・mafumafu(真船勝博)、レキシ等でサポートを務めるドラマー・sacchan(佐治宣英)、そして昨年に残念ながら脱退してしまったが、キーボードのmura☆jun(村山☆潤)。
この3人の存在は非常に大きく、彼らがずっしりと構えながらも、一緒にバチバチ演奏を楽しんでくれるからこそ、yuiも最大限に自由度を発揮できるのかもしれない。
ただ当初自分はというと、正直YUI時代の残像が大きく、フラフラの自由な音楽に完全にはついていけてなかったように思う。
今だから言えるが「実」の曲も、第一印象はピンとこないものが多かった。
前回のnoteでも書いたが、ずっと追いかけてきたアイドルのような存在だったYUIからyuiへの変化は、容易く受け入れられるものではなかった。
彼らのライブを観るまでは。
そう、それから3年ほど経ったCOUNTDOWN JAPAN 17/18で満を持して、初めてフラフラのライブを観ることができたのだ。
YUI時代にライブに行くことは叶わなかったので、彼女の生歌を聴くのも初めてだった。
中高生時代から聴き始めた歌声を、実に10年以上ぶりにその場で身をもって感じられる念願が実る瞬間。
まずはそれが何より感無量だった。
yuiが、目の前のステージで歌っている。
年越し後の深夜のステージだったこともあり、夢見心地だったけれど、ライブが進んでいくにつれて現実味を帯びていく。
やっと会えた!と。
MCで脈絡もなくマイペースに話す感じもあの頃と変わらない。
そんなyuiを見て歌声を聴いて、昔に戻ったような懐かしさと安心感にまず、心が満たされていった。
そして同時に芽生えた新たな気持ちが。
そう、FLOWER FLOWER、めちゃめちゃいいバンドじゃん!というもの。
それまでYUI像に縛られてしっくりきていなかった自分も、バンドの中でのびのびと、心から楽しんで歌うyui自身を見て一瞬でこのバンドのファンになったのだ。
時にアイコンタクトを交わしながら、時にメンバーそれぞれの持ち場で全力でアツく音を畳み掛ける。
特に、信頼のおけるメンバーどうしで作り上げる演奏に引き込まれる『バイバイ』『ひかり』の演奏には圧倒された。
その後、2ndアルバム「スポットライト」のリリースを経て、「インコのhave a nice dayツアー」が開催され、自分はその日比谷野音公演に参加した。
そう、自分にとって初めてのフラフラのワンマンだ。
そこでもやっぱりyuiはのびのびと歌っていて、MCでもメンバーをいじったりあちこち動き回ったり、自由な感じは昔と変わらない。
でもメンバー3人もそれを楽しんで笑い合っていて、幸せな雰囲気を漂わせながら、だんだん演奏の熱も帯びていく。
そんな中で、「過去があって、今があって、未来がある。そのすべてが愛しいです。」と言ってアンコールで演奏されたのは、なんとYUI時代の曲『CHE.R.RY』。
この瞬間、ライブに行くことは叶わないながらもYUIを追いかけてきた、自分のこれまでのすべてが報われたような気がした。
そして彼女自身、YUI時代の想い出や経験を今も尚、大切にしているんだなぁと分かり、グッときた。
イントロのメロディーを口笛にしたり、フラフラ流のアレンジが施された『CHE.R.RY』。
追加公演として開催されたZepp Tokyoのライブでは、間奏でmafumafu、sacchan、mura☆junのバチバチのセッションも披露され、改めて3人の凄腕っぷりに驚かされた。
そしてZepp Tokyoで行われたこのツアーの追加公演ではなんと、yuiが『Rolling star』をエレキギターを掻き鳴らしながらワンフレーズ歌う一幕も…!
あのときのロックスターが帰ってきた~!という興奮と、ライブを通して最新のバンドサウンドが繰り広げられる様子から、本当にYUIからFLOWER FLOWERは地続きで繋がっているなと感じさせられる。
ついついYUIの曲にスポットライトが当たってしまいがちだが、それこそフラフラの「スポットライト」にも名曲が多い。
ライブではyuiのシャウトやmafumafuが飛び跳ねながら演奏するのが印象的で盛り上がる『踊り』、先程も取り上げたyuiの正直な気持ちが綴られた『コーヒー』もこのアルバムに入っている。
そして何より『時計』。
この曲もまたライブで観ると多幸感が漂っていて、「君を好きになれて良かった」という歌詞も、先述の『CHE.R.RY』演奏前の言葉と通じるところがある。
その後もフラフラのペースは止まらない。
yui自身、出産等を挟んで休むことはあったが、バンドとしてはコンスタントに作品を出し続けながら活動している。
翌年にも秋に「インコのhave a nice dayツアー2019」が行われ、自分はZepp DiverCity公演に参加。
そこではついに、セトリに正式に『Rolling star』が組み込まれ、何の前触れもなくあのイントロが鳴ったので、めちゃめちゃ気持ちがぶち上がった。
『蜜』→『神様』→『Rolling star』→『パワフル』→『踊り』→『バイバイ』という、このライブ終盤の流れが本当に良くて。
もはや、フラフラとYUIの隔たりを取っ払うように流れていくセトリが気持ち良くて、一瞬時が止まったような、ああ、今まさに、ものすごく最高で幸せな時間だなぁと実感して、泣きそうになった。
あまりに良すぎて急遽、翌週の大阪公演もチケットを追加で買って参加してしまったほど(笑)
年末には自分が初めてライブを観て以来のCDJ1920にも出演し、そこでもさらっと『Rolling star』を披露して会場を沸かせていた。
Twitterでもトレンド入りし、別のバンドから繋がったフォロワーさんたちも、その場に居合わせた人たちは感動と興奮が入り交じったようなテンションで呟いていて、改めてYUIはみんなの青春なんだなぁと実感。
そして翌・2020年には、早くも3rdアルバム「ターゲット」が放たれた。
アルバムを経るごとにYUI像から解き放たれてどんどんのびのびとした音楽をやるようになっているなぁという印象で、このアルバムでもよりバンド感と自由度が増していったような印象。
特に、『熱いアイツ feat.ミゾベリョウ(odol)』で"小籠包食べたい"と連呼したかと思えば、『浄化』でバンドサウンドが炸裂し合い、また『ベン』では素のyuiの話し声が入っていたりするユルさがあり…とにかく振り幅がすごい。
とはいえ先述もしたバンド唯一の英語タイトル『Sunday』のようなYUI時代を彷彿とさせる懐かしい感じの曲や、これまでの王道を正面から行くような『夢』で力強く背中を押してくれたりもするので、この時点でのフラフラの集大成を感じさせる。
そんな最高傑作ともいえるようなアルバムを作り上げてしまったからか、何故なのかは定かでないけれど、その後、ここまで明るく楽しいサウンドやMCでバンドを支えてきたキーボードmura☆junの脱退が発表された。
自身もバンドをやっていたり、エレカシ等のサポートも務めている多忙な人だったからなのもあるだろう。
そんな中でも間違いなく村潤は、フラフラの基盤を作ってきてくれた欠かせないメンバーの一人だったので、寂しいけれど、何より感謝したい。
もう一度、フラフラで夢を見させてくれてありがとうと。
時系列が前後する部分もあるけれど、そんな2020年は何よりも、一気に世の中の状況が変わってしまい、「ターゲット」を引っ提げたツアーもすべて中止になってしまった。
ただそんな中でも尚、マイペースに鳴らしたい音を鳴らすのがyuiであり、FLOWER FLOWERだ。
夏と冬に配信ライブを開催したり、シングル「はなうた」をリリースしたり。
この表題曲『はなうた』はクラフトビール「僕ビール君ビール」とのコラボソングで、こんな状況でも気分を軽くしていこうよ!という感じで、とりあえずビールでも飲みたくなってしまうような曲。
そしてついに今年2021年には、前回のnoteでも触れたように、YUI名義のセルフカバーアルバム「NATURAL」をリリースする。
このアルバムで演奏やアレンジを担っているのも、何を隠そうFLOWER FLOWERだ。
そんなことができてしまうのも、自由でのびのびと音楽を続けるこのバンドだからこそであり、この先もどんなことをしてくれるのか、自分も気長に楽しみにして生きていきたい。
YUIとしての活動は一応は2012年に止まったが、あの頃に青春を過ごした人も、今も尚熱く活動を続けるフラフラにぜひ、注目してみてくださいな。