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2022/4/3 BiSH COLONiZED TOUR @山梨 ~いつか終わりは来ちゃうから 後悔しないように~

2021年12月、BiSHは2023年をもって解散することを発表。
このnoteでも何回も取り上げてきたぐらい、久々に本気で好きになれたグループだっただけに、正直ショックだった。

普段はロックバンド好きで、女性アイドルやダンスボーカルグループはほとんど通ってこなかった自分が、本当に好きになって本気でぶつかりたいと思ったその類いがBiSHだった。
彼女たちは"楽器をもたないパンクバンド"と謡っているけれど。

だから今年はできるだけ、BiSHに捧げたい。
解散と同時に発表された4つのプロミス、
・12ヶ月連続リリース
・ワンマン未開催地ツアー
・ベストアルバムの収益を寄付したライブハウスツアー
・BiSHフェス
の2つ目である、BiSH COLONiZED TOUR。

ツアーの特性上、現地の人に極力行ってもらいたいという想いもあるけど、せめて一番近い場所、一ヶ所はもしチケットが取れたら参加しようと決めたのが、初日の山梨公演。
いつか終わりは来ちゃうから 後悔しないように。

そんな気持ちと覚悟をもって臨んだライブについて、これから綴っていきたいと思います。

※7/3に無事ツアーも終了したということで、ネタバレを解禁して改めて再掲!
47都道府県制覇、おめでとうございます!!

山梨は甲府市、YCC県民文化ホール。
4月とは思えない肌寒さと雨が降りしきる中でも、もしかしたら最後のホールツアーになるかもしれないBiSHを見届けるべく、たくさんの清掃員が集まっていた。

入場すると、ステージ上に掛けられた幕には、青い背景の中に大きく"COLONiZED"の文字が。
直訳すると「植民地化」であるが、これはBiSHが今までライブで訪れたことの無い都道府県に足を踏み入れたことを意味している。
どうしても、昨今の世界情勢と重ねてこのワードにネガティブなイメージを持ってしまう人も多いと思うけれど、それとBiSHが決定的に違うのは、そこに愛があるかどうかだということは、強く言っておきたい。

自分はというと、BiSHのツアーロゴを目の当たりにし、思えば解散を知ってから初のワンマンであり、最初で最後かもしれないホール公演がいよいよ始まってしまう…という実感で既に泣きそうになっていた。

そして会場が暗転するや否や、突然聞こえてきたのは、

"いつか終わりは来ちゃうから 後悔しないように"

というチッチの歌い出しである。
まさに、自分の思っていたことに対して語りかけるようなその言葉に一気に心臓を掴まれ、そして次の刹那、幕の向こうで壮大なイントロが始まった。

かくして『FiNAL SHiTS』からライブはスタート。
幕は下ろされたままで、その向こうでメンバーがバンドをバックに歌い踊っているというのは、「REBOOT BiSH」とも似た始まり方。
今回はそれに加え、幕に畳み掛けるような歌詞の輪郭がバーっと敷き詰められており、メンバーが歌うのに合わせてその歌詞が浮かび上がるという仕掛けが施されていた。
これは言葉で説明するのが難しい演出だが、いかにこの曲のメッセージを伝えたいかということが、セトリの1曲目として持ってこられたこととも相まって、強烈に響いてくる。

"何回でも言いたい ありがとう
本当ありがとう
言えるのあと 何回だろ?"

このフレーズとともに満を持して幕が開かれ、ステージのメンバーの姿があらわに。

"サラバ 僕ら出会えたんだ…"

と最後のサビを畳み掛けるBiSH。
自分の目には涙が浮かぶ。
BiSHに会えた感動、でも、これをあと何回味わうことができるだろうか。

初っぱなから感情をノックアウトされそうになっていたが、怯む間もなくピアノのイントロが鳴り響き始まったのは『HiDE the BLUE』。
爽やかな風がパーっと吹くように、会場を明るく染めていくBiSHの歌や輝く表情に、いかんいかん、悲しんではいられない!と、スイッチを押されたような気がした。

そして次に続いたのは、この時点では12ヶ月連続リリースの3作目にして最新作であり、ライブ初披露となった『愛してると言ってくれ』。
ここにきてキャリア唯一とも言える、ド直球なBiSHのラブソングだ。
初めてながら、既にMVを何度も観てきているであろう清掃員たちの、頭の上でハートマークを作る振り付けの一体感で、会場がまるっと愛に包まれていたような気がした。

ここで、恒例の自己紹介へ。
これは毎度お馴染みなのでいちいち文字起こしはしないが、アユニ・DのDは、"ほうとう食べたい"のD。
どこにDが入ってるんだろう…。
たしかに山梨といえばほうとうが有名だが。
ちなみに自分はライブ前にとりもつ煮を食べた。

MCが明けるとガラリと雰囲気を変え、『SMACK baby SMACK』から一気にパンクバンドのモードへ突入。
そのまま『I have no idea.』『ZENSHiN ZENREi』と、激しくも明るく元気な曲たちの披露を通して、メンバーも笑顔が弾けていてとても楽しそうだったのが印象的だった。
そんな様子を観ていたら、こちらも楽しくないわけがない。

そして、ここで再びMCへ。
「初めてBiSHのライブに来た人ー?」「地元、山梨の人ー?」とのメンバーからの問い掛けに手が挙がるのを見ていると、解散までの期間は残り少ないながらも、まだBiSHを観たことがなかった人たちがこの日出会うことができたという事実に、なぜだか自分まで嬉しくなる。

モモカンはタクシーの運転手さんから前日に雪が降ったと聞いたらしく、「そうなんですか、山梨の皆さん?」と驚いた様子だったが、「そんな寒さの中で食べるほうとうは美味しいだろうなぁ。」と話す。
とりもつ煮も旨かったけど、推しがそう言うならほうとうを食べれば良かった…。

一方アイナは、初めて信玄餅を食べたという。
信玄餅といえば、2019年のエピソードだろうか、アユニが合宿から帰ってきたのを労い、チッチが地元八王子で信玄餅を買ってきてあげたことがあるという。
(八王子は東京都だが、山梨にほど近いため、信玄餅が売っているらしい。)
当のアユニは、「げんしんもち」という名前だと思っていたらしいが…(笑)
こんなふうに、これからツアーで各地を回る度に、ご当地のネタに絡めた微笑ましいエピソードが披露されるのだろうか。

ほっこりしたMCから、またグッと惹き付けるようなパフォーマンスで魅せてくれたのは、『My landscape』。
寝っ転がった体勢から両足を天に向かって伸ばし、左右に開くという独特の振り付けは、ホールという近さで肉眼で目の当たりにすると、改めて衝撃だ…。

そして壮大な雰囲気を纏ったまま『DiSTANCE』へと続く。
この2曲はメンバーの歌唱や表現力もさることながら、バンドの演奏もまたギターが鳴いているようだったり、ドラムも緩急が凄まじいダイナミズムをみせてくれたり、はたまた映像演出も曲の迫力に相乗効果をつけてくれたりと、チーム総動員でカッコいい音楽を届けようとしてくれる気概がバンバン伝わってきた。

そしてさらに『stereo future』『プロミスザスター』と、次々にドライブしていく。
もはや、メンバー全員の姿が眩しかった。
そう感じたのは、曲が始まる瞬間のまばゆいライトに目が眩んだからというだけではない。
メンバーの歌も力を増していっているような気がしたし、一体感もあれば一人ひとりの振り付けを見ても、頭から爪先まで力を込めてそれぞれが懸命に踊る様が伝わってきたからだ。

このように、観る者を圧倒するような「カッコよさ」を纏ったライブはロックバンドにも引けをとらないし、他のアイドルや女性グループには無いものだと思う。

ここで恒例のコントタイム。
しばらくアッちゃん以外のメンバー5人がステージで談笑していると、「あれ、ハシヤスメは?」の言葉を合図に、スーツに蝶ネクタイを着け、ハットを被ったアッちゃんが登場。
すると突然クイズタイムが始まり、「Q.野音のライブ後に私がアユニにしてあげたことは?」「Q.私が今まで奢ってあげた金額は?」といった問題をメンバーに出題(笑)
前者で「あれはステージ上だけのビジネスハグだった」と力説するアユニや、後者は真偽が定かではないが、アイナに叙々苑を数万円奢ったという一方、モモカンに奢った総額はアイス数十円という贔屓、そして他のメンバーには「早く答えろよオラ!」と強目の口調なのに対し、何故かアイナにだけは「ゆっくりでいいですからね」とゴマをすっているのが面白かった(笑)

クイズが終わっても、メンバーが喋る度に「ぴょんぽーん!」「ぴょんぽーん!」と正解音を連呼し、「ほら、早く次の曲いくからぴょ動して!ぴょ動!」と、司会者ハシヤスメ・アツコを演じ切って繋げた次の曲は、『ぴょ』。
MVを見て何度も練習してきたので、皆で"ズッQん ドッQん"できて楽しかった。

そこから『GiANT KiLLERS』『MONSTERS』と続きライブは佳境へ。
こうした激しいブロックにおいても、音響の良いホールだと会場いっぱいに響き渡るメンバーの歌声に聞き惚れてしまう。
特に、"飛び出すモンスター 誰よりも早く…"のアイナの歌い出しは、これまで聞いてきた中で一番ゾクッとした。

そして普段ロック界隈でライブを観ている身としては、バンドメンバーたちが頭を振ったりステップを踏んだりしながら楽しそうに演奏している様がまたグッときた。
満を持して今回のツアーから「FANTASTiC NAO BAND」と名付けられた、バンマスの西村奈央さんをはじめとしたメンバーたちもまた、残り限られたBiSHとの共演を惜しむように、その瞬間瞬間をめいっぱい楽しむようにステージに臨んでいるのだろうか。

我々清掃員も『オーケストラ』で負けじと両手を前にめいっぱい伸ばし、BiSHたちにありったけの想いを届けまくると、続く『スーパーヒーローミュージック』では、チッチやアユニらがとびきりの笑顔で応えてくれる。

声は出せずともきっと届いているという嬉しい実感と、この尊い時間がまだずっと続けばいいのに…という願いが募る一方で、『サラバかな』が歌われると、無情にも時間が過ぎ去っていくのを思い知らされる。

でも、

"その手を離さないよう"

で会場にいる全員の手が重なったような、一つになったようなあの瞬間の感動は、こうしてレポを書いている今もまだ、温かく実感として残っている。

そしてそんなBiSHと清掃員たちが互いを想い合う愛と愛は、本編ラストとなる次の曲、『beautifulさ』で結実した。
イントロが始まった瞬間、ピンクのペンライトの海が、満開の桜を咲かすようにホールいっぱいに広がったのだ。
この曲の歌詞を書いたリンリンへの、少し遅めのバースデーサプライズである。

トップに上げたのは、会場に向かう前に甲府駅近くの舞鶴城公園で撮った桜の写真である。
そんな本物の桜をも凌ぐような美しい光景だったと言っても過言ではない。
この光景に思わず、曲中でリンリンとアイナが顔を見合わせて嬉しそうに「見て見て!」と話しているような場面が垣間見れた。
本当に美しく、幸せだ!という感動とともに、最後は思いっきりとげとげ踊りまくった。

そしてアンコール、ただ一筋縄では終わらないのがBiSHである。
愛に満ちた余韻を一掃するようなスモークと照明を浴び、6人が横一線に並んで始まった『NON TiE-UP』はまためちゃめちゃカッコよくて痺れた。
壮大な演奏と演出、叫び放つようなメンバーの歌は、冒頭からスーパーハシヤスメタイム、ラストのサビに至るまで、終始ホール映えだった。
"おっ○い舐めてろ チ○コシコってろ"という歌詞ですら、もう超カッコいい…。

そしてメンバー一人ひとり、MCで胸のうちを語る。
リンリンはなんと、ライブ中に足を攣ってしまっていたようなのだが、「あなたたちの『beautifulさ』のサプライズでね、治ったの!」と嬉しそうに語ってくれて、自分まで嬉しくなって泣きそうになってしまった。

アユニはこの世の中の状況を憂い、「戦争反対といくら私が言っても、何も変わらない。私ができることは、一人でも不安の中にいる人たちに笑顔になってもらうように、BiSHとして全うすること。」と語ってくれた。
一方チッチは、「私は、一人ひとりの力が大きくなれば何かが変わるかもしれないと思っています。」と語ってくれた。
どちらも正しいし、一つ確かなのは、BiSHに出会って人生が明るく変わり、このライブを観て元気をもらえた人間がここにいるということ。
戦争は反対だ。
この日みたいな幸せが続くように、平和な日常が失われませんように。

MC後の『ALL YOU NEED IS LOVE』では、かつてコロナ前のライブで行われていたように、実際に隣の人と肩を組むことはできないが、全員が左右に揺れ、確かに心で繋がっていた。
会話は無くとも、初対面でも、そこにいる皆が仲間だと思えた。
そんなノーボーダーな世界が、音楽では実現できるのだ。

そして最後の最後、チッチが、「まだ足りないんですよ!いけますか山梨ー?『BiSH -星が瞬く夜に-』ー!!!!!!」と叫ぶとまた、残るありったけのエネルギーをぶつけ合うように、皆で元気にその瞬間を踊り明かした。

- 4/3 BiSH COLONiZED TOUR @ YCC県民文化ホール セットリスト-

01.FiNAL SHiTS
02.HiDE the BLUE
03.愛してると言ってくれ
04.SMACK baby SMACK
05.I have no idea.
06.ZENSHiN  ZENREi
07.My  landscape
08.DiSTANCE 
09.stereo  future
10.プロミスザスター
11.ぴょ
12.GiANT KiLLERS
13.MONSTERS 
14.オーケストラ
15.スーパーヒーローミュージック
16.サラバかな
17.beautifulさ
en1.NON TiE-UP
en2.ALL YOU NEED IS LOVE
en3.BiSH -星が瞬く夜に-

ツアーの特性上、初めてBiSHのライブを観る人も多いだろうことを想定した、新旧とりどりの優しいセットリスト、優しい振り付け。
でもその中にもメンバーの歌や一挙手一投足は洗練されていて、何より時折見せる笑顔が、一瞬一瞬を全身全霊で楽しんでるんだなと伝わってきた。
その尊さに時々泣けた。

かくして、BiSH COLONiZED TOURはスタート。
ツアータイトルとは裏腹に、ひたすら愛に溢れた幸せな空間だった。
静岡出身のリンリンがエンディングで、「富士山は静岡のものだと思ってたけど、山梨のものでもある。仲良くしましょ!」と言っていたぐらいに(笑)

ツアー初日という、たいへん貴重な日に立ち会わせてもらったけど、歌も、振りも、演奏も、演出も、初日からすべてが最高だった。
あれからツアーは終わってしまったけど、他にもライブハウスツアーや各地夏フェスへの出演がたくさん予定されている。
この一瞬の瞬きが消えないうちに、みんなマジでBiSHのライブを観に行った方がいい。

いつか終わりは来ちゃうから 後悔しないように。