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BiSHと清掃員、みんなで迎えた満開フィナーレ ~ 2023/6/29 Bye-Bye Show for Never ~

2023年6月29日。

様々なライブに足を運びまくるようになってもうかれこれ十数年、こんなにもその日を迎えたくないような、でも楽しみでもあるような、カオスな気持ちで迎えたライブ当日は初めてだったかもしれない。
始まってしまったら終わりは来ちゃうから。BiSH、夢だった東京ドームでの解散ライブ「Bye-Bye Show for Never」だ。

そんな気持ちは、この4日前に高崎にて参加したPUNK SWiNDLE TOURのファイナルから抱いていたが、解散から1ヶ月が経過しようとしている今でもやはり、楽しくて感動的だった記憶と寂しさが混在している。
(別日ですがPUNK SWiNDLE TOURのレポはこちら↓)

まだ整理もつき切っていない中ではあるけれど、その大切な記憶や気持ちが色褪せてしまう前に、6月29日のことについてここに綴ります。

当日は快晴、その時点で今年一と言われる暑さの中、水道橋には早朝の時点から既にたくさんの清掃員が集まっていた。
自分も例に漏れず、朝8時半には東京ドームに到着し、物販列に並んでいた。

実は自分が東京ドームでライブを観るのはBUMP OF CHICKENの「aurora ark」以来、約3年半ぶり。
かなり久々ながら、その前はよくMr.Childrenのライブを観に行っていた場所でもあるので馴染みは深いのだが、まさかここでBiSHの最後を見届けることになるなんて…と半ば信じられない気持ちだった。

猛暑の中、吹き出る汗を補うように時折ドリンクと塩タブレットを交互に口にしながらなんと5時間、ようやく売場に辿り着いてこの日限定のグッズを買うことができた…。
もはやライブ前に体力を使い切ってしまう勢いだったが、これだけBiSHと最後の思い出を作りたいと思っている清掃員がいて、自分も今日そこに立ち会えるんだなと思ったら、全然苦ではなかった。

ちなみに自分はモモコプロデュースのIDOL Tシャツを購入。
解散してBiSHのモモコグミカンパニーが終わってしまうということを、「GAME OVER」とかけて「GUMi OVER」とポップに表現するあたりに、"あまのじゃく担当"たる由縁とセンスを感じて大好きです。

その後、腹ごしらえをしたりカフェで休憩をしたりして体力を整え直し、いざ出陣。
東京ドームならではのあの回転扉には未だに慣れないが、やはり中に入ってみるとBUMPやミスチルの思い出がフラッシュバックし、懐かしさを感じる。
デカいし、でも近い、独特な感覚。

興奮と緊張が入り混じった空気感の中、ついに迎えた開演時間。
ステージに出てきたのはBiSHの6人…ではなく、なぜかピンクのウサギ。
ゆるキャラのような出で立ちだが、BiSHにそんなマスコットキャラいたっけ?という疑問が浮かぶ中、そいつがダンスをしたり、手拍子を煽りまくると盛り上がる会場。
一体何が始まるのか。

思えばずっとそうだった。
ライブに限ったことではなく、突拍子もないことを半ばゲリラ的に、サプライズ的にやって清掃員を驚かせ続けてきたのがBiSHだ。
自分も時折それに振り回されながらも、常にそこには楽しさと刺激があった。
やっぱり最後の最後までワクワクする。

そしてウサギと入れ替わるように、いよいよBiSH登場!
この日ももちろんこれまでずっとBiSHの背中を支えてきた「FANTASTiC NAO BAND」を従え、生演奏が爆発する『BiSH -星が瞬く夜に-』でライブスタート。
ここでいきなり思い知るのは、清掃員たちの凄まじすぎるパワー。
これまでBiSHのライブに参加してきた中でほぼ間違いなく一番聴いたであろうナンバーであり、声出し解禁下では終始コールが飛び交いまくるのも知っていたが、その音量と勢いはそれまで感じてきたものの比ではとても無かった…。
ラストライブながら、まるで初めて曲を聴いたような驚きと震えの中、自分も早速声を出し、サビでは両腕で踊りまくった。

なんだこれは、すごすぎる…。
こんな東京ドームでのライブは味わったことない…。

これがこの日最初に抱いた感想だ。
そうしていきなり面食らってる自分をよそに手を緩めようともしないBiSHは、『ZENSHiN ZENREi』でさらに飛ばしていく。
ここでも\ハイっ!ハイっ!ハイっ!ハイっ!/と叫びまくる清掃員。

そしてアイナが「東京ドーム、上がってこうぜ~!」と煽って始まった『SMACK baby SMACK』では、皆の頭上にたくさんの○と✕が溢れ、ジャンプで東京ドームを揺らす。
スクリーンに映し出されるBiSHの表情もめちゃめちゃイキイキと動いている。

自己紹介ではアユニが「アユニ・DのDは、東京ドームのDです!」と、もしや初めからこの日のために付けられた名前だったのか?と言わんばかりの伏線回収ぶりに盛り上がる会場。
すぐ「違います」と否定されてしまったが、まさかこんな自己紹介を聴く日が来るとは。

そんな感慨に浸りながら、『HiDE the BLUE』でさらにライブはさわやかに駆け抜けていく。
"青春ビリーバーです"のところで6人が肩を組んで変顔をするのがお馴染みだが、ここで巨大なスクリーンにハシヤスメの変顔がどアップで映されたのにはちょっと笑ってしまった。
本当にこの人はコミカルにいろんな表情を見せてくれる。

続く『FOR HiM』は、モモコが渾身の"ひっくり返りそう 内臓"を見事にかまして心臓を掴まれ、『JAM』では6人揃って手を繋ぎ合ったり、"ずっとずっとずっと"と清掃員たちと手を差しのべ合う、感動的な時間が続き、『デパーチャーズ』とモモコ作詞曲が続く。

この後も数曲出てくるが、やはり作詞の面でBiSHを支えてきたのはこの人モモコグミカンパニーであり、振付ではアイナ、シャウトや表現力ではリンリン、コミカルさではハシヤスメ、ダイナミックな動きと体力ではアユニ、そして彼女らを安定した歌唱とリーダーシップで纏めるのはチッチ…と、誰1人として欠かすことはできず、6人が揃ってこそBiSHであることを最後の最後まで思い知らされる。

そんな6人だからこそ掴んだ東京ドームという夢の舞台だと思うが、続くMCではすぐ近くにあるTOKYO DOME CITY HALLでライブをした際、遊園地のアトラクションから東京ドームを見下ろし、「あそこに立てたらいいね!」と語っていたというエピソードがリンリンから出てきた。
自分もまさに当時のそのAGESTOCKのライブ直後に、「次は東京ドームでBiSHが観たい!」と思っていたので、やはり思い続けていれば夢は叶うものなのだなと実感して嬉しくなる。

そしてメンバーが中央に集まって身体を折り重ねると、突然シャウトしまくって一番上のアユニが"Make Chance そこ そのバカ はめれたら 即死だ つら"と吐き捨て『遂に死』へ。
死体の山をイメージしたその始まり方と尖った歌詞、キョンシーのように両腕を上げ左右に振る振付は唯一無二で楽しいが、こんな魅せ方をするグループはもう二度と出てこないであろうだけに、こうした曲でさえ一抹の寂しさを感じさせる。

そして『stereo future』へ。
FANTASTiC NAO BANDがBiSHと初めてステージで演奏したこの壮大なロックナンバーは、東京ドームのような巨大な会場ではよりライブ映えを感じさせるが、1番のサビに入った瞬間、ステージから花道を駆け出していくBiSH。
そう、まさにNAOバンドと出会い、かつて幕張メッセで初めて1万を越える清掃員と対峙した「THE NUDE」1曲目の再現である…!

当時のライブには参加していないが、もう何度もこの映像を見てはそのカッコよさに震え魅了され続けてきたので、その瞬間を生で体感し、感動が全身を走った。

そしてそのままドーム中央の、360°清掃員たちに囲まれたステージで数曲続いていく。
スクリーンに広大な空や山々の美しい景色のアニメーションが映し出される中、奈央さんの伴奏でしっとりと始まった『My landscape』。
アリーナのやや前方にいた自分はしっかり確認することはできなかったが、おそらく中央ステージではBiSHの6人が寝そべりながら歌っており、静かに曲が進んでいく。
そして、「マーーーーーーイランドスケイプッ!!!!!!」とアイナが叫んだ瞬間、メンバー皆立ち上がり、バンド演奏が一気に炸裂するラスサビへ。
そう、今度はコロナ禍332日の時を経てBiSHと清掃員が再会を果たした代々木ワンマン「REBOOT BiSH」でのアレンジの再現だ。

これらBiSHの歴史を辿っていくような演出やアレンジが、これまで共に歩んできた我々清掃員にとってはたまらない…。

続く『サヨナラサラバ』は、昨年の12ヶ月連続リリース曲の中では個人的に最も衝撃と興奮を覚えた曲だが、この曲を提供してくれたTakaもこの2ヶ月ほど前にONE OK ROCKとして東京ドームに立っている。
ワンオクもまた大好きな自分はここでもさらなる感慨を抱かざるを得ないが、モモコもまたワンオク好きが高じその「LUXURY DISEASE」のライブを東京ドームへ観に行っていただけに、どんな気持ちで冒頭のセリフ部分を歌っていたのだろうか。
間違いなく自信に満ちた声色だったことだけは確かだ。

そして『NON-TiE UP』ではスーパーハシヤスメタイムが発動すると、5万人が中央ステージに向かって指メガネを掲げる。
東京ドームで"おっぱい舐めてろ チンコシコってろ"と歌うアーティストは後にも先にもBiSH以外に現れないだろう…もうこの時点で既に伝説だ。
だがそんなことよりも何よりも、何度もピークを繰り返すように突き進んでいくこの曲の強さはドームの大きさに一切負けておらず、今まで観た中で一番カッコ良かった。

再び花道を引き返し、BiSHが前方のステージに戻ると、スクリーンにはマスターハンドのような手が部屋に家具を配置していくというアニメーションが流れ始める。
これは昨年のBiSH FESで3組目に登場したBiSHのライブでも使われていた映像だが、その際にも披露された『スパーク』へ。
3人ずつ手を繋いで花いちもんめをするシーン、エモーショナルに高まっていく間奏、何かを振り払うように皆で腕を振り回すあの振付、どれもこれもこれで最後か…と思うと、その一瞬一瞬が愛おしい。

続く『Life is beautiful』はリンリンとアユニが夫婦のように寄り添う振付が印象的で、曲の終盤でパートナーのアユニと死別してしまったリンリンが倒れ込み途方に暮れるも、やがて天国で2人が再会するという、何ともグッとくるストーリーを感じさせるものとなっているが、曲が終わっても、最後に出てくるはずのアユニが一切姿を現さない。

するとスクリーンに映された部屋はどんどん荒廃していき、変わり果て、実際のステージ中央には椅子が配置される。
そう、『FREEZE DRY THE PASTS』だ。
この、アユニと再会を果たせなかった世界線のリンリンが椅子に座り狂いまくるという流れはやはりBiSH FESの再現だ。
BiSHは前日にベストアルバムをリリースしたばかりだが、コンプリート盤を除くと人気曲が厳選されている。
解散ライブとなれば、そうした曲や定番曲を中心にセットリストを組んでくるものかと思っていたが、BiSHがBiSHらしく、カッコいい!と誇れるような表現を出し切りたいという気概も滲んでいる今回の選曲。
この『FREEZE DRY THE PASTS』はその極致と言っていいだろう。
リンリンを中心に、彼女を取り巻く5人の振り切りまくった狂気的な表現には一切妥協がなく、めちゃめちゃカッコ良かった。

ここで再びMC…という名のコントへ。
ここまでのライブの体感を各メンバー語る中、どこか不機嫌そうなハシヤスメ。

「あーあ…初めての東京ドームなのに、私たちが出てくるより先にステージに立っちゃうってどうなのよ?あのウサギ!」

そう、オープニング時に登場して東京ドームを沸かせたあのピンクウサギである。
ハシヤスメがそのウサギに対しグチグチ文句を言っていると、やがてスクリーンは楽屋を映したカメラへ切り替わる

するとそこにいたのは、スマホをいじりながら休憩してくつろいでいるピンクウサギ………の着ぐるみを被った渡辺淳之介氏!
(BiSHプロデューサー兼WACK社長)

「「「「「「お前かい!」」」」」」

と声を揃えて突っ込むBiSH6人。
爆笑に包まれる東京ドーム。笑

ハシヤスメ「最後まで出たがりだなぁ渡辺は。」

モモコ「実はあのウサギがオープニングで踊ってたダンス、私が教えたんだよね~。」

ハシヤスメ「お前かい!」

そんなこんなで謎のウサギの正体が分かったところで続いてのブロックへ。
いったんBiSHメンバーがはけたかと思いきや、今度は「美醜繚乱」と書かれた、何やら巨大なお神輿のようなセットが2つ、アリーナの両端に登場!
よく見るとそこにメンバーが3人ずつ乗っていて、神輿が動き始めると「盛り上がってますか東京ドーム!」とモモコが煽り『ぴょ』へ。
よく他のアイドルのライブ等でそうした移動式のステージが出てくる映像は見たことがあるが、どの座席にいる人の近くにも来てくれるので、特にこれがラストライブとなるBiSHや清掃員にとっても大切な演出であり時間だ。

この神輿タイムはさらに『ぴらぴろ』『DA DANCE!!』と続いたが、東京ドーム中を派手に移動するBiSHの6人とひたすら躍り狂うお祭りみたいなこの時間は、もう最後だと分かっていてもめちゃめちゃ楽しかった。

メンバーの乗った神輿がはけると、ステージのスクリーンには画面いっぱいに星が散りばめられた、夜空のような映像が映し出されている。
ゆったりとしたピアノの音が流れる中、5万人の清掃員みんなで星空を眺めながら天体観測をしているような束の間の時間。
思えばこの8年間…いや、自分は僅か4年間だったが、こうして星を眺めるように輝き続けるBiSHの姿をずっと見つめてきた。

やがてBiSHの6人が再びステージに姿を見せると、チッチの腕を掴む他5人。
そう、ここで『プロミスザスター』だ。
それこそ、自分が星のようにひときわ輝くBiSHを見つけたきっかけとなった曲。
あのときたまたまMステを観ていなかったら、皆で1つの腕を掴んで星を描くあの独特の振り付けに目を引かれなかったら、きっとこのとき自分は東京ドームにいなかったかもしれない。

"きっと巡り合った僕らは奇跡なんだ"

この歌詞にこの日もメンバーと一緒に胸に手を当て何度も頷いた。
ライブの度に頭の上で"待って 待って"と惑星の公転軌道のように腕を回した瞬間の数々、紅白歌合戦での晴れ舞台を固唾を飲んで見守ったあの日…この曲がくれた思い出はこれからも一生忘れないだろう。

そして次に流れてきた壮大なイントロには驚いた。
メンバーの頭上にミラーボールが現れて始まったのは、なんとここにきて『LETTERS』。
先述の332日ぶりワンマン「REBOOT BiSH」ぶりにライブでこの曲を聴くことになるとは…。
ラスサビでメンバー全員がユニゾンし、6分割のスクリーンいっぱいにその姿が映されるというのも当時の再現だ。
しかし、"絶対距離は遠くないんだ 今も近くにあるんだ"という歌詞や、バイバイと振る手をギュっと止める振付は、コロナ禍に聴いた当時と全く違う響き方をして胸に刺さってきた。

解散しても離れることはない。
バイバイじゃない。

そう言ってくれているようでめちゃめちゃ感動的だった。

リンリンが「イエイ!イエイ!イエイ!イエイ!お前らの喉ちんこ、焼き殺してやるからなぁ~!」と煽った『GiANT KiLLERS』からいよいよライブも佳境へ。
ちなみにこの煽り文句も幕張ワンマン「THE NUDE」の再現だ。

この映像にもまた何度も観て興奮するほどBiSHと清掃員たちが作り出すパワーの凄さを感じていたが、この日5万と6人で作り出したそれは、その日叩き出していた2023年の最高気温よりも、ステージから吹き出していた火柱よりも、何よりもアツかった。

その熱を帯びたまま突入した『MONSTERS』で飛び跳ねてはヘドバンを繰り返し、さらに『サラバかな』で声を出しまくり、もう汗だくになりながらそこに全てを置いていくつもりで、全力で、夢中になって自分もBiSHに臨んだ。

"その手を離さないよう"

で5万と6人が1つになった瞬間、やっぱりまだ解散して欲しくないと思ってしまったが、解散してしまっても共に時を縮められると信じているからこそ、喉ちんこが焼き殺されるくらい全力で叫び切った。

チッチが名残惜しさと晴れやかさが入り交じったような表情で「最後の曲です。愛を込めて…」と語り、本編を締めくくったのは『ALL YOU NEED IS LOVE』。
ここではスクリーンに歌詞が映される演出が毎度お馴染みだが、この日はメンバー各々のパートの歌詞を自ら直筆しており、それが次々と映し出されるので、まさに愛を手渡して貰っているようでグッときてしまった。
そして曲のクライマックスでは、両隣のお兄さん・お姉さんと肩を組んで揺れる。
元来人見知りな自分は終始BiSHの現場でこの日までぼっちを極めており、コロナ禍も手伝ってこの曲での肩組みを味わったことがなかったのだが、最後の最後にみんなで繋がれた気がして嬉しかった。

"行かなくちゃ"と始まり、あっという間に駆け抜けた本編24曲。
それはこれまでのBiSHの活動を象徴しているようだった。
でもまだ終わっていない。
やがてドームのあちこちから響いてくる、

\アンコール!!/\アンコール!!/

の輪唱。
5万人がただただ手を叩き、叫び、BiSHの6人を待ち続けるこの時間。
最後の最後まで、少しでも共に過ごしたいという一心が5万通りに飛び交い、1つになっていたあの瞬間ほど尊いアンコール待ちは今まで味わったことのないものだった。
早くBiSHの6人に会いたい、でも、始まって欲しくない…。

それでも、やがて訪れたよね、いよいよBiSHとさよならをする最後のアンコール。
登場した6人の身を包んでいたのは、白いドレスにたくさんの羽根が付いたような衣装だった。
BiSHのライブ衣装といえば、パンクな見た目だったり、動きやすいパンツスタイルのものが多い。
しかし最後の晴れ舞台、一見するとウェディングドレスのようにも見えるその衣装を纏った6人を見ていると、結婚式で娘を送り出すときはこんな気持ちなのだろうか…と思うほど、その美しさと切なさにグッときてしまう。

奈央さんのキーボードが優しく鳴り、チッチがマイクを構える。
静まり返る5万人の視線を一心に受け止め、そして覚悟を決めたように、

"見上げたあの夜空に…"

と『オーケストラ』を歌い始めた。
昨年、富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催されたワンマン「OUT of the BLUE」でチッチは、「この曲がここまで連れてきてくれた。」と語っていた。
この東京ドームに立つ前の時点では、そのコニファーフォレストでのライブが史上最大キャパであり約2万人だっただろうか。
それが今や、5万人。
そもそもアユニが加入した直後、初めて日比谷野音を埋めたときもこの曲が会場を1つにしており、「オーケストラ新規」という言葉が生まれるほど、このライブや映像を見てBiSHを知り好きになった人の数は計り知れない。
一時は他のグループにこの曲が獲られてしまう事件もあったが、BiSHは『オーケストラ』と共に扉を開き、育ってきたと言っても過言ではない。

そしてまた1つ、歴史を塗り替えたこの曲。
東京ドームに響きわたった清掃員たちの爆音コールが生み出したオーケストラは、野音やコニファーのそれを優に超えていたことは言うまでもない。

そして6人最後のMCへ。
アユニは直前の高崎公演でも涙ながらに語っていたが、清掃員からのSNSや手紙の言葉に眠れない夜も支えられていたということを今度は泣かずに堂々と語ってくれた。

リンリンはライブが進んでいくうちに「ここが東京ドームなんだ!」と実感できたことを誇らしげに語るとともに、「SEE YOU!」とエアーで清掃員5万人全員と握手を交わしてくれた。

ハシヤスメは、BiSHが8年間で数々の壁を壊してきたが、ついに東京ドームという壁を壊した!と晴れやかに語った。
また、チケットが即日完売してしまい買えなかったり、各々の事情でこの日東京ドームへ来れなかった清掃員たちに向けても、これまでの感謝を述べた。

そしてここで最も意外だったのがモモコ。
カッコ悪くても何でも、モモコグミカンパニーとして生きて来れたこと、たくさんのライブのステージに立ちBiSHをやり切れたことを振り返り、これまでの活動でほとんど見せて来なかった涙を流したのだ。
これにはこちらも少しもらってしまった…。BiSH加入前から既に他の活動をしてきた経験者も多い中、全くの素人から始まった彼女。
それでもがむしゃらに、時に辞めようと思い至っても諦めず、言葉を紡ぐことで自分の居場所を見つけ。
そうした生き様が結実し、今ではたくさんのモモコ組(かく言う自分も!)を味方に東京ドームに立っているのだ。
本当に勇気や元気をもらった人は多いはず。

アイナは8年間ずっと清掃員の姿をイメージしながら振付をしてきた日々や、たくさんの清掃員に愛されてきたことを振り返り、「幸せの前借り」と表現した。
そして80人キャパ(初ライブは中野のライブハウスheavysick ZEROだった)から東京ドームへ辿り着いたBiSHと清掃員は最高です!と称してくれた。

チッチは、「まだ解散したくない」という気持ちと闘っていることを正直に吐露しながらも、東京ドームという夢の舞台に立てたことを誇り、後悔はない!と真っ直ぐに話してくれた。
そして、「アイナ、モモコ、アユニ、リンリン、ハシヤスメ、出会えて良かったです!」とメンバー1人1人の顔を見ながら噛みしめるように語った。
「そしてあなたさん、BiSHを愛してくれて、ありがとうございました!」
と最後は涙声ながらも堂々と、BiSHを代表して清掃員1人1人に向けての感謝で締め括った。

自分はこうして涙を見せながら自分をさらけ出せるセントチヒロ・チッチの真っ直ぐで純粋な姿を何度も羨ましく思い尊敬しているが、彼女も昔は「猫を100匹かぶっていた」と言うほど、自分をさらけ出すのが苦手だったという。
それが今や、5万人の前でしっかりと裏表の無い姿でぶつかってきている。

時にはアツく、
「まだここで終わりじゃない!今日はみんなで優勝しに来ました!最高のトゲトゲを見せてくれますか?」
と煽るのもまた威風堂々としていてカッコいい。
かくして『beautifulさ』が始まり、メンバー各々自由にステージを端から端まで、花道も使いながら歌うのだが、やはり涙が溢れてたまらなくなるチッチ…。
そんな彼女を両脇から支えるように微笑むリンリンとアイナ。
ずっとリーダーのような役回りでBiSHを引っ張ってきたチッチを、このときはアイナが姉のように「ほら、顔を上げて!」と顎を支えてあげている。
そんな一幕にグッときまくりながら、我々清掃員は全力で、東京ドームの屋根を突き刺しまくって穴ぼこだらけにするくらいトゲトゲ踊った。

そして、「これが本当にラストです…!!」
とチッチが叫び、ステージに姿を表したのは、これまでBiSHの数々のライブをサポートしたミュージシャンたち一同!
FANTASTiC NAO BANDのみならず、直近の高崎公演まで代打を務めてくれたメンバーや、過去BiSHと一緒にツアーを回ったメンバーなど。
中にはツアー真っ只中のRADWIMPSでサポートを務めて国内外を飛び回っているドラマー、エノさんの姿も。

そんなオールスターズでクライマックスを飾るのは、この日二度目となる『BiSH -星が瞬く夜に-』、やはりこの曲!
13回連続で演奏されたり、フェスのセットリストが全曲この曲だったりと、懲りずに何度も演奏されてきたBiSHの代名詞的テーマソングなので、今回も一度じゃ終わらないと思っていたが、やはりここで来た。
自分もこれまで足を運んできたBiSHのライブ現場では一番多く聴いた曲だが、この日2回目に聴いたこの曲が、断トツでベストアクトだった。
これはもう既にライブ映像が公開されているので観てもらった方が早いが、もう、このときのヘドバンの一体感と盛り上がりときたら…。
自分も再びお兄さん・お姉さんと肩を組み、ひたすら叫んで首を振り、拳を上げたが、筆舌しがたい感無量の瞬間だった。
今改めて映像を観てもグッときてしまうが、こんなにも泣けるヘドバンがあっただろうか。

ラスサビをセンターステージで歌い踊り、ラストは6人全員で肩を組んで一緒に花道を走ってメインステージへ戻っていくあのシーン。
それは、この8年間の有終の美を飾るゴールテープを切ったように見えた、本当に輝かしい瞬間だった。

未だに書きながら思い出しては目に涙が滲んできてもう語彙が出てこないが、まだ終わりではない。
BiSHとバンドメンバー全員がはけて、あれ?ここにきて、ここまで大切に育ててきたあの曲をやらないなんてこと、無いよね?と思いながら再びアンコールの手拍子を贈り続ける5万人。

そう、まだあと1曲、この場所で最後に鳴らされなくてはならない曲が残っている。
やがて、今度はバンドメンバーを従えずに生身の6人のみが登場し、ダブルアンコールとして始まった正真正銘のラストナンバー『Bye-Bye Show』。
THE YELLOW MONKEYの吉井和哉氏が、まさにこの日に歌われることをイメージして作ってくれた楽曲だ。

もちろんこの解散ライブのタイトルもこの曲からだが、既に春先から始まったツアーやフェスで「みんなと育てていきたい」という想いのもと、ほぼ毎回演奏されてきた曲でもあるためすっかり浸透しており、曲の至るところで5万人が両手を花びらに変えヒラヒラさせる壮観が出来上がっていた。
だがそれほど何回も歌われてきたこの曲でもこの日初めて、

"心の中のBiSHと清掃員はForever!"

とモモコが歌詞を変えて叫ぶサプライズを。
これにはまたグッときてしまうじゃないか…。
しかし、最後の最後に我々清掃員からもBiSHへ贈るサプライズが。
"花びら落ちる中…"と落ちサビに入った瞬間、東京ドーム中から無数のピンクの光が輝き出したのだ。
桜をイメージして、ピンク色のペンライトやサイリウムを皆で点灯しようというもの。
自分もその1つになり、東京ドームを満開にしようと努めた。

アイナも触れていた通り、80人キャパから始まったBiSHが作り出した、美しすぎる5万の桜。
まさに、"ほら、あんなに小さなiが大きくなった"の証明だ。
そしてスクリーンにも巨大な桜の木が映し出され、満開の花びらが大量に散り始める。
やがて、曲が終わるとメンバー6人は言葉を発することもなく、花びらを模した紙吹雪が舞う中フェードアウトするように姿を消して行った。

「ばいばい」

6人の直筆サインとともにスクリーンにはそう一言添えられ、かくして絆はほどかれた。

- 6/29 BiSH Bye-Bye Show for Never セットリスト -

01.BiSH -星が瞬く夜に-
02.ZENSHiN ZENREi
03.SMACK baby SMACK
04.HiDE the BLUE
05.FOR HiM
06.JAM
07.デパーチャーズ
08.遂に死
09.stereo future
10.My landscape
11.サヨナラサラバ
12.NON-TiE UP
13.スパーク
14.Life is beautiful
15.FREEZE DRY THE PASTS
16.ぴょ
17.ぴらぴろ
18.DA DANCE!!
19.プロミスザスター
20.LETTERS
21.GiANT KiLLERS
22.MONSTERS
23.サラバかな
24.ALL YOU NEED IS LOVE
en1.オーケストラ
en2.beautifulさ
en3.BiSH -星が瞬く夜に-
wen.Bye-Bye Show

回転扉から吐き出されるように東京ドームの外に出ると、昼間の快晴が嘘のように雨が降りしきっていて、まるで空も別れを惜しんで泣いているようだった。
晴れ女とも言われることが多かったBiSHなだけに、本当に解散してしまったんだな…と思い知らされる。

寂しさと同時に、4年間、特に解散が決まってからのこの約1年半は駆け抜けるように全国各地、至るところに自分もライブを観に行った日々があり、そのどれもが想い出深く、だからこそ、この東京ドームでのラストライブ直後は充実感と、心から「楽しかったー!」と思う気持ちにも包まれていた。

『ALL YOU NEED IS LOVE』前のMCでチッチは、「私たちは東京ドームが似合うグループになれましたか?」と我々に語りかけてきたけれど、その場の誰もが頷き、賞賛の拍手を贈っていた。
自分はむしろ、BiSHは東京ドームが似合うなんてレベルではなく、Mr.ChildrenやBUMP OF CHICKEN、その他映像なども含め、これまで観てきた東京ドームでのライブの中で最も東京ドームを味方に付け、使いこなし、東京ドームに愛されていたと思う。

本当にあの5万と6人から放出されるパワーはこれまでに味わったことのないものだった。
あんなドでかい声援は、コールは、BiSHに限らずすべてのライブ後にも先にも聞けない気がしている。
自分も今までで一番、声の限り叫んだけれど、最後にもう一度。

BiSH、今まで本当にありがとう!!!!!!
BiSH iS FOREVER!!!!!!