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弁護士解説!【民法改正】特に知っておくべき「消滅時効」を徹底解説!

はじめに

こんばんは。弁護士MIKEです。

弁護士マイク

今回は、120年ぶりに抜本的に改正された民法について解説します。

特に、市民生活に重大な影響のある以下の3つを取り上げて解説します。

①消滅時効の統一(今回)
②個人保証の制限
③法定利率の引き下げ

今回は、消滅時効について解説します。こまで複雑だった消滅時効の規定が統一されました。

特に、交通事故、借金、売掛金の問題に直面している方は、是非最後までご覧ください。

Youtubeでも、この記事と同じ内容でより分かりやすく解説していますので、Youtubeも併せてご覧いただければ、理解が深まります。

▼Youtube▼

それでは、早速、解説していきましょう!

消滅時効の統一

まずは、これまでの消滅時効の立て付けをおさらいしておきましょう。

これまでの民法(取引債権)

スライドに「取引債権」と書いてあるのは、あとで「不法行為」についても解説するからです。

これまでの民法では、166条・167条で「権利を行使することができる時から10年で消滅時効にかかる」と原則を規程していました。

そして、その原則に対し、特則として、商業別短期消滅時効と商事消滅時効が定められていました。

例えば、職業別短期消滅時効には、医師の診療報酬債権が3年と定められていたり、弁護士の報酬金債権が2年と定められていたり、飲食店の飲食代金が1年と定められていました。原則論とは別に職業別・事業別に短期消滅時効が規定されていましたね。

また、商事消滅時効は、会社間の取引や当事者の一方が会社の場合の消滅時効を定めていて、その場合の消滅時効を民法の10年から5年に短縮して規定していました。これは、会社間の取引では、スピードが要求されるため、10年も時効にかからないとしては商取引を迅速に行えないことがあったからです。

これまでの民法の立て付けでは、どのような取引について何年で時効にかかるのかが複雑でした。これまでは、医者の診療報酬は3年、弁護士の報酬は2年、飲食代のつけは1年と、業種などでバラバラの消滅時効が存在していました。

そのため、「どの時効が適用されるか分かりにくい」との問題点がありました。そのため、新法では、消滅時効を統一して、職業別短期消滅時効や商事消滅時効を廃止しました。

では、どうなったのかというと、新民法の下で、「消滅時効が統一」されました。

改正後の民法(取引債権)①

「債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき」「権利を行使することができる時(客観的起算点)から20年間行使しないとき」のいずれか早い方が到来したときに時効消滅するという立て付けになりました。

契約に基づく債権については、その発生時に債権者が権利を行使できることを知っていることが通常ですので、基本的に主観的起算点と客観的起算点が重なることになり、主観的起算点からの短期の時効期間(5年)が適用されることになると考えられます。

なので、原則として、「権利を行使できると知った時から5年」に統一されましたといっていいでしょう。

これによって、飲み屋、スナックの経営者は、ツケ払いの時効が延びるので、支払いを請求できる期間が延びることになります。逆に、客の方からすると、時効にかかる期間が延びるので不利な内容にはなってしまいます。

改正後の民法(取引債権)②

他方、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の客観的起算点からの時効期間については20年とするという特例が定められました。これは、生命・身体が侵害されたときに、財産権が侵害されたときよりも被害者を厚く保護しましょうという趣旨に基づくものです。

例えば、バスの運転手が居眠り運転をしていて事故を起こし、乗客に怪我ををわせたような場合は、この乗客からバス会社への損害賠償請求については、客観的起算点から20年で消滅時効にかかることになります。ただ、この場合、通常は権利を行使できることを知っているので、5年で消滅時効にかかるのが通常でしょうが。

改正後の民法(商事消滅時効)

また、冒頭お伝えしたように、職業別短期消滅時効や商事消滅時効は、廃止されました。

あと、民法以外の法律に定められている時効期間の特則は維持されているものが多いので、すべての時効期間が統一化されたわけではないので、そこは、注意が必要です。

では次に、取引債権ではなく、不法行為について、民法改正を見ていきましょう。

これまでの民法(不法行為)

不法行為の消滅時効についてのこれまでの立て付けは、損害および加害者をしたっときから3年、また損害および加害者をしらずに不法行為のときから20年が経過したら請求できなくなるという立て付けでした。

そして、「不法行為時から20年」という定めについては、除斥期間という解釈がされてきました。除斥期間というのは、消滅時効と異なって、信義則違反や権利濫用の規定がなく、20年が経過したら問答無用で請求できなくなるという硬直的なものでした。

それが、民法改正でどうなったかというと・・・

改正後の民法(不法行為)①

不法行為によって財産が侵害された場合については、これまで通り「損害および加害者を知った時から3年の時効」にかかります。この点に変更はありません。

ただし、不法行為によって生命・身体を侵害された場合は、3年から5年に時効が伸びます。これは、被害者の保護によるものです。

例えば、交通事故を想定しますと、交通事故で車の修理代だけで済んだ場合、その場合は車という財産が侵害されただけなので、3年で時効にかかります。他方で、交通事故によって体に怪我を負った場合については、その時効は5年になるということです。

また、これまで除斥期間と考えられてきた20年という期間制限については、消滅時効であると定められました。これによって、不法行為時から20年が経過しているからといって一刀両断されることはなくなり、個別的な事情を踏まえて信義則違反や権利濫用も主張できるようになりました。

「消滅時効の統一」についての解説は、以上です。

最後に

いかがでしたでしょうか。

消滅時効の期間については網羅的に説明してきました。

さらに民法改正全般について詳しく知りたいという方は、「民法改正の基本と勘所がよーくわかる本」をご紹介しておきます。この本は、民法改正について図などを用いてビジュアル的に分かりやすく解説されているので、一般の方でも分かりやすい本です。

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消滅時効だけでなく、民法改正全般について知りたいという方は、一度手に取ってみてください。

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それでは、また別の記事でお会いしましょう。

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