見出し画像

ガジェット考「Windows CE の思い出」

前回の記事を書いてからガジェットについての思い出を語りたくなったので、書いてみることにした。

 

私のキーボード付き端末の歴史といえば、最初に勤めていた会社をやめたときの退職金で購入したWindows95のノートパソコンや、もっと昔に社会人になってすぐに初めてローンで買った中古のPC98noteなどもあるが、ここではパソコンではなくそれ以外の機器を思い出してみたいと思う。

画像1

携帯電話がまだ通話しか出来ない時代、私はCasioのWindowsCE機であるCasiopaire A-51という手帳サイズに縮めたノートパソコンのような端末を予約して発売日に購入した。
池袋のビックカメラに展示されていたデモ機をみて惚れ込み、発売日の2ヶ月前から予約した。
WindowsCEとはその名が示しているとおり、まるでWindows95のような外観を持つモノクロ液晶の端末だった。
元々は電化製品などの組み込み用OSとして開発されたが、これをPDA用途にキーボードを付けたのがA-51だった。
その後、OSのバージョンアップが行われ、カラー化したりWMAのオーディオ機能が標準搭載されたりしていった。
手帳型のPDAは当時シャープのザウルスが大きな市場を持っており、このWindowsCEのキーボードが影響したのか、ザウルスもキーボードを搭載したモデルへと主流が変わっていくことになった。

当時のPDA系ガジェットには単体で通信する機能はなく、Air H"というPHSのCF通信カードを刺してそれをモデムとして通信していた。
といっても、メールをしたり、ネットで調べ物をしたり、ホームページの更新をしたりする程度だ。
基本的にはパソコンに繋いでデータをやりとりするのが一般的だった。
ノートパソコンに比べて性能がいいわけではないが、このサイズ感と乾電池で動作できるという軽快さが私にはとても合っていた。
電車の中でも、シナリオを進められるので、オフィスや自宅のパソコンの前だけが仕事場ではなくなった。特にアイデアの試行錯誤が行われるプロット段階では絶大な効果を発揮したし、常に持ち歩けるので会議の議事録や、不意にアイデアが浮かんだときにはすぐにタイピングできた。
おそらくここが私のガジェッターの原点といえるのではないだろうか。
A-51はタッチタイプがキツいキーボードだが、その後は普通にタッチタイプできるHP-620LXなどを購入してから、どっぷりとWindowsCE機に浸かってしまった。今で言うと「沼」である。

画像2

このWindowsCEは時代の流れとともに、一度はキーボードがなくなりザウルスのようなフルタッチのPDAスタイルになったものの、さらに時代の流れで携帯電話(PHS)と合体した姿になって戻ってきた。
シャープのW-Zero3という傑作機の登場だ。

画像3

それまでのテーブルにおいてタイピングするスタイルではなく、両手で挟み込み親指でタイピングするスタイルだが、考えられた構造で本当に使いやすかった。
最初は大きなボディだったが、W-Zero3[es]でぐっと小さくなり、AD[es]では、サイズ、重量、デザインのすべてにおいて完成度の頂点になったと思う。

Windowsの文化ともいえる勝手アプリも大量に出たおかげで、かなり市場が広がった。
特に私にとってうれしかったのが、愛用するWZ-EditorのCE版も発売されたことだ。
PCと同じ執筆環境が得られるとなれば、ライターにとっては何よりだ。私はかなり長い間、WindowsCE(後のWindows Mobile)を愛用し、乗り換えるときもこのシリーズを好んできた。

しかし、AppleがiPhoneを出し、GoogleがAndroidを出すと、時代の流れはまた「画面フルタッチ」へと戻ってしまった。
せっかくPDAから物理キーボードへと戻り、ザウルスもLinuxによってキーボードが標準になったというのに。
こうしてWindows Mobile 6は時代の流れに淘汰され消えていくことになる。
業界でキーボードを備えた端末は、Blackberryが我がみちを行く程度になっていた。

ゲーム業界に身を置いたのは、はるか昔…… ファミコンやゲームボーイのタイトルにも携わりました。 デジタルガジェット好きで、趣味で小説などを書いています。 よろしければ暇つぶしにでもご覧ください。