見出し画像

【受験生・受験考えてる人向け】不動産鑑定士受験まとめ(R6版)

2016年から不動産鑑定士受験の勉強を開始し、実務修習を経て2024年に登録までなんとかこぎつけた者です。
ネットだと古い情報、ペーパーテスト得意勢・苦手勢、ポジショントーク、いろんなのがごっちゃになってるので、直接聞いた情報も加えて、最近の情報をまとめました。

不動産鑑定士になるまで

不動産鑑定士登録までの試験制度は変遷しているので、ネットで合格体験記等検索する際は注意が必要。
現在は、短答式試験、論文式試験、実務修習、修了考査の4段階であるが、その前は、実務修習で提出するものが評価書フルセットではなくシート1枚だったそう。また、さらに前(旧試験)は、一次試験(たしか大卒でない者が受ける試験)、二次試験、三次試験があり、今の試験とは大きく異なる。

I 不動産鑑定士試験

  1. 短答式試験(一次試験)
    毎年5月に実施。午前・午後の各2時間、行政法規と鑑定理論についてマークシート回答。
    合格すると、合格年を含む3年間、論文式試験の受験資格が得られる。
    合格率は、32~35%程度。宅建士試験の倍ほどの合格率があるが、内容は宅建士の行政法規より範囲が広く、難易度は高い。

  2. 論文式試験(二次試験)
    3日間連続、それぞれ午前・午後の各2時間、論文式試験。
    民法、経済学、会計学、鑑定理論(論文)①、鑑定理論(論文)②、鑑定理論(演習)。
    合格率は、15%程度。

II 実務修習

下記の4つがあり、1年コースまたは2年コースを選択する。(2016年ごろまでは3年コースもあったが今は無い。)
指導機関や不動産鑑定士協会連合会へ支払う指導料等が数十万以上発生する場合がある。大手鑑定会社は大抵修習費用を出してくれるが、(中小事務所等・大学・大島鑑定)では基本的に上限値の指導料が必要。大島鑑定では、考査指導も頼むと+αかかる。
1と2は順に行う。3は、1年コースは2と並行し、2年コースは再履修なければこれに集中できる。4は、修習開始から期限までに完了させる。

  1. 物件調査
    鑑定評価書の作成という過程のうち、物件調査(役所調査・実地調査)という一部分のみを行う。提出し、認定をもらう。

  2. 一般実地演習
    通常13類型の鑑定評価書(本文、試算表、その他資料)を作成・提出し、認定をもらう。非認定の場合は、別の期間に最初からやり直し。場合によっては、その年の再履修ができず、来年にやり直しとなるため(修了考査も1年ズレる)細心の注意が必要。

  3. 基本演習
    2~3日(各日9~17時)連続、東京の会場へ集合し研修を受ける。
    終了後7~10日程度で、簡略的な鑑定評価書・試算表の提出を行い、認定をもらう。非認定はほとんどなく、認定されなかった場合は再提出として修正を行ったものをもう一度出すだけで済む。

  4. eラーニング
    PC等でwebの講義動画を視聴し、確認テスト(選択問題)に合格すると完了。

III 修了考査

R5年度(第17回修了考査)までの数年は、合格率が悪く、一発合格は70%程度。それ以前の修了考査は、90%以上が一発合格だった。
1と2は、修了考査受験者はどちらも受験する。

  1. 筆記の考査
    毎年1月下旬に東京で実施される。選択問題(マークシート)と論文問題を2時間で解く。

  2. 口述の考査
    毎年1月下旬~2月上旬、各人が指定された日に東京で実施。25~40分程度。3名のボス vs 受験者1名の面接形式。自らが実務修習の一般実地演習で作成した評価書について問い詰めわれる。

合格発表は3月中旬で、不合格者は、1号再考査と2号再考査に分けられる。
1号再考査は、口述のみ再考査(5月ごろ)である。
2号再考査は、一発不合格である。
考査不合格であった場合は、その後、半分のボリュームの一般実地演習を行い、それらの認定をもらって翌年の修了考査受験の権利を得る。その考査も不合格であった場合は、たしか実務修習を最初からやり直しとなったはず。

IV 不動産鑑定士の登録

身分証明書(本籍地の自治体発行の公的書類)や6万円(!)の登録免許税を支払った領収書、簡単な履歴書、不動産鑑定士試験合格証書等の書類を管轄の国土交通省地方整備局に提出し、登録してもらう。

受験難易度

受験者の属性

働きながら受験している人が最も多いと思う。大学生、一時的に無職となって受験に専念する人、育休中の人、専業主婦もいる。ダブルライセンスを狙う、公認会計士、弁護士、税理士も少なくない(科目免除が使える)。

平成14年までは、合格者属性として出身大学が公表されていたが、今は性別・年齢のみ。
以前の出身大学データを見ると、早稲田大学と慶應義塾大学が30名以上と他に比べて多く、次いで中央大学、その他、というような人数である。これは、OBの鑑定士が出身大学で不動産鑑定についての講義を行っていることも関係しているのだろうか。
受験要件は無いが、意外と高卒・中卒は稀である。試験内容から高卒・中卒が受からないのではなく、そもそも鑑定士の知名度が低く、鑑定士を知る層が大卒に偏っていることも一因ではないかと考察する。


これは私の想像と偏見がかなり入っているのだが、現行制度の論文合格者の3割以上は道府県で上位の進学校、都内名門校出身、小学生の頃から進学塾通いみたいな学力つよつよ層だと思う。そして4割は、そこまでじゃないけど、学校の勉強は比較的得意な方(学歴にかかわらず)。残りが、勉強は得意と思ってないけど根性がめちゃめちゃある層。なお、全員根性はすごくある。

学習時間・期間

人によって大きく違うので一概にはいえないが、論文合格までの学習時間は2,500~4,000時間、期間は2~3年が最も多いと思う。(国交省でアンケート取ってて期間2~3年が3割くらいで最も多かった気がするがどっかいってわからん)
1,500~2,000時間合格は、早い方である。4,000時間合格者でも、働きながら2、3年で成し遂げてる猛者は珍しくないため、学習時間と学習期間は別々に考えた方がいいと思う。期間2~3年の割合が多いのは、「三振(短答合格し得られる3回の論文受験チャンスで不合格)したら撤退する」という行動をとる受験生がそこそこの割合いるため(主観)、これを超えて勉強を続ける受験生がかなり少ないからではないかと考察する。
ただし、学習時間のカウントをしていない人も多いし、カウントしてても不正確な場合があるだろう。そのため、合格者の学習期間と平日・休日の勉強スケジュールの方が参考になるかもしれない。

撤退ライン

ある予備校では、「学習期間は1~2年必要です」みたいなことを言っているが、2年で受かったら早い方だと思う。2年以下合格者は少ない。
逆にいうと、2年で撤退するのはそもそも合格ラインに達する勉強量が確保できていない可能性が高く、もったいない。
そうすると、3年は受験勉強に人生を捧げる覚悟がなければ、足を踏み入れるべきじゃないのでは、と思う。

予備校・独学

基本的に予備校を使うべきだと思う。試験範囲が広く、完全独学はリスクが高い。インプットを独学にしても、答練パックや全国模試を使うべきだと思う。

TACかLECか問題

不動産鑑定士試験の予備校は、TACかLECの2択。最近アガルートが出てきたが、実績がわからないのでリスクが高い。
私はTAC生(通信)だったが、鑑定理論の論文・演習のT先生やW先生の教えに従っていれば間違いないと思う(信者)……というように主観的なことばかりで語ってもしょうがないので、いくつか比較すべき点を並べたいと思う。

  • 受講料
    LECが圧倒的に安い。ただし、冊子の紙の質が劣る。

  • 質問対応
    LECが早い。TACは1~2週間くらいかかる。

  • 受講生の人数
    TACが多分すごく多い。全国模試もTACが圧倒的に多い。

  • 教材の内容
    TACは教科書の中の各章末に問題(ミニテスト)が1問~数問付いてる。民法は論証例集のように羅列したものはなかった(今は違うかも?)。LECは問題集(民法は論証例集)的な冊子(「こう書け!」)がある。

  • 予備校のビル
    TACがきれい。LECの某ビルは経済的残存耐用年数が……。

  • 講師との心の距離
    LECの方が近い人多そう。

  • 本試験合格者占有率
    数年前は、TAC生が70%を占めていたという。

  • 受講生に対する合格者の割合
    わからん。周囲のTAC生とLEC生を比較して、大きな違いはないように思う。

  • 歴代本試験1位(外れ値とも言う。)
    TAC生もLEC生もいる。

結論から言うと、お試し講義や教材を見てみて、好きな方。個人的には費用が安いLECがその分TACに劣っているとは思わないので、LECがいいと思う。また、要注意点として、問題を解かないと身につかないタイプの人はLECにすべき。TACは問題を解く練習がLECに対して少なすぎる。私はそれなので、教養科目はすべて市販の問題集や論証例集を買って回した。
※ここ2、3年の教材は知らないので、違うところあったら申し訳ない。

進路・就職

資格取得後、現在の会社でそのまま働き続ける人もいるが、不動産鑑定会社へ転職・就職する人も多い。
鑑定会社への就活は、論文受験直後から合格発表までの間に行われる。

地方と都会で就職状況が全く異なる

大手~準大手鑑定会社は、東京・大阪に集中している。標準的な進路は、ここに就職することである。転勤の有無・エリア、残業の程度、給与水準が異なる。R6現在の修了考査は合格率が低いので、残業が多い場合、修了考査の勉強時間が十分にとれず、実務修習が長引くリスクがある
それ以外のエリアに住んでおり、引っ越しが難しい場合、就職先があるかどうか調べておかねばならない。比較的大きな地方都市であっても、実務修習生どころか鑑定士の就職先が一社もない、ということもある。
鑑定士・合格者・受験生向け求人は以下。ここに載せてないところもあると思う。ツイ(X)でも就活できるらしい。

就職

R6現在は、売り手市場。そのため、30代論文合格者でも大手に就職できたという話を聞いた。人手不足らしい。鑑定士登録すれば、実務未経験でも強い。
論文合格者、かつ大卒であれば、学歴・職歴はあまり関係ないようである。鑑定会社は中途入社が多い。高卒・中卒者についてはそもそもデータが少ないが、家の近くに就職先がないという理由以外で就職に困ったという話は聞かない。
就職し、会社員として働き続ける人と、その後独立する人がいる。

独立

都道府県により鑑定士の数や地価公示等の地点が異なるため、地価公示・地価調査等の公的な仕事を主な収入にする場合、都道府県によって得られる収入が大きく異なる。
公示等の公的な仕事を得るには、一定の要件を満たす必要がある(そのため、登録後即独立する人は少ない)。また、自分が割り当てて貰えるのか、どれくらい貰えそうか、ネットには情報が無いため、ツテを辿るなり都道府県の鑑定士協会に問い合わせるなり、調査した方がいい。都道府県により、公的な仕事の状況は大きく異なるようである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?