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エンドロールはまだ無い

インカレ初戦敗退から約3週間が経とうとしている。

私はぐちゃぐちゃな感情で試合の動画を見返した。

結果は変わらないのに、
何度も見返した。



そうか、終わったのか。



何度も失点のシーンを繰り返し見た。

何度も終わりを告げるホイッスルの音を聞いた。



何度も現実を突きつけられるようで苦しい。



でも本当に納得がいかなかった。

信じられなかった。

信じたくなかった。




12月9日

卒業制作の提出期限11日前。

この日も朝から大学で制作に没頭していた。

お昼をすぎて、いよいよ作業が手につかなくなった。

緊張して速まる鼓動を抑えながら、試合を観戦する準備をした。


午後2時、試合が始まった。

久々の公式戦。あっという間に緊張のドキドキより、試合を観戦できるウキウキ、日本一へのワクワクの感情に染まった。

今日も関大の応援がアツい。

ピッチに立つ11人は堂々としていてカッコイイ。


そうだ、いつもこうやって楽しませてくれた。

あと4回もこのワクワクに連れていってくれる。

そういった期待に胸をふくらませた。


立ち上がり15分以内での失点が課題となった今シーズン。

なんとしてでも先制点が欲しいところではあったが、前半12分、相手チームに先制を許す。

でもまだまだここから。

今シーズン、何度も「ここから」逆転してきた。


しかし相手も九州リーグ無敗の王者。

簡単にゴールネットは揺らさせてもらえない。

相手に押される時間が続く。


そして、あっという間に点差は2点に開いた。

でも今年の関大は強い。

複数得点での勝利が十八番である。

まだまだいける。

失点後、全員がピッチ内で集まり声をかけ合う。

多分ポジティブな声掛けだったのだろう、と試合再開後の勢いを見て思った。

流れを掴んだ関大は魔王こと西村選手が一点を返す。


そのまま流れに乗って勝ち越したい、と思った矢先、


試合前半終了間際、自陣のビルドアップにおいてピンチを迎えた関大は
それに対応した谷岡選手がペナルティエリアで相手選手を倒してしまう。

それに対してレフェリーの厳しい判定が下される。PKの献上、そしてレッドカードが提示された。

私は言葉を失った。


必死に現状を理解しようとしたが、脳の解析が追いつかなかった。

レフェリーに抗議する仲間に背を向けて、谷岡選手は紫紺のユニフォームを脱ぎ、ピッチを後にした。


私は泣いていた。


悔しくて、泣いていた。


カンスポの特別企画やインカレ直前に更新された選手ブログを拝見して、

彼の特別な想いや大会に対する情熱を知っていた。


彼がいなくて、どうやって勝つのだろう、と思った。

彼と戦えないインカレに価値は無い、と思ってしまった。



必死に現状を受け止めようとしたそのすぐ後、審判団の協議がなされ、相手監督もを含めた話し合いの結果、一発退場の判定が覆された。


嬉しかったし、安心したけど、
とても複雑な感情になった。

彼のメンタル面が心配だった。


でもそんな心配はすぐに払拭された。


ハーフタイム明け、いつも通り冷静で広すぎる視野を活かしたプレーをする姿がそこにあった。


思いがけないハプニングも付き物となる一発勝負の世界。


彼の真の強さを垣間見ることができたような気がした。



このシーンは感情の振り幅が大きすぎて、気が狂いそうだったので気になった各選手に焦点を当てて改めて記録する。

まずは谷岡選手。
もちろん彼自身が1番悔しい思いをしたに違いない。
関大の象徴である紫紺のユニフォームを脱ぎ、ピッチを後にする姿には
彼なりの覚悟や、「自分にはこのユニフォームを纏って戦う資格が無いんだ」といったやるせなさがあるように見えた。
それほど、彼自身に関大に対する気持ちがあることを実感できた。

次に西村選手。
前線から駆けつけ、レフェリーに猛抗議。
何をどのように言ったのかは分からないが、とにかく必死な姿があった。
その結果、イエローカードが提示されるほど。
でも、彼のそういった働きかけはこのチームに必要だと感じた。
彼の情熱や責任感の強さは左腕に芝山選手から引き継いだキャプテンマークを巻くのに相応しいと感じた。

次に、真田選手。
正直、彼の立ち回りに1番驚いた。
彼は東山時代から注目していた選手。
印象的には、高校時代から穏やかで冷静なイメージだった。
しかし、その場面において彼は西村選手と並んで必死に抗議していた。
ピッチ内において、先輩も後輩も関係ないことは分かっていた。
でも、唯一1回生でスタメンに入る彼が、ピッチ内で臆することなく、堂々と正義を貫くために声を上げることができる選手だということを知って嬉しく思った。

次に髙橋選手。
みんなが必死に抗議する中、少し離れたところで余裕そうに見ている彼に彼らしさを感じた。
どんな時も冷静で動揺しない。サッカーを、その場を、楽しむ。そんないつも通りの姿がそこにあった。
でも、谷岡選手がピッチに戻る時、そこにいたのは髙橋選手だった。
きっと、みんなの元に戻る谷岡選手にとっても心強かったのではないかな、と思う。

そして、川島選手と三木選手。
彼らは谷岡選手がピッチを去る際に言葉を交わしていた。
もう、仲間に想いを託すしかない彼の気持ちを汲み取り、絶対になんとかする。と強く覚悟を決めたように見えた彼らの姿に頼もしさを感じた。
きっと、来年からの関大も強い。




そんなこんなでPKを決められ、1-3で前半が終わる。

後半の立ち上がり。うん、順調。

勝てる。

確信した。

そして、菊地選手のベッド弾により点差は一点に縮まる。アシストは途中交代で入ったばかりの堤選手。

4回生が姿勢でも結果でも勝利に導く。


点差が縮まった時、明らかにチームに勢いがあるのがわかる。

そのままいけ!

と心の中で何度も何度も叫んだ。



しかし、右サイドから攻め込まれ、そのままオウンゴールにて失点を喫する。

点差はまた2点に開く。


でもまだ70分。残り20分もある。

私は諦めない。

絶対に諦めない。


なぜなら、


主務が、関大の主務が、


「私は選手じゃないし試合にも出れません。

だけど、関大の勝利をいつだって諦めない。


たとえ、後半40分、
0-2でリードされてても、

最後の5分で3点決めて逆転することを諦めない。


結果がふるわなくて、
今年は弱いとどんなにバカにされても、

シーズンが終わる最後の最後まで、

私は、私だけは、
関大の勝利を信じ続ける。」

こう宣言して始まった、今シーズン。


私が、

私も、

関大の勝利を信じなくてどうする、

そう思った。


本当になにもできない自分に不甲斐なさを感じながらも

私は関大の勝利を信じ続けた。


90分間、信じ続けた。


強く強く、関大の勝利を望むと共に
初めての感情が沸き起こった。


「なにしてんねん!」


素直に、そう思った。思ってしまった。


今年こそ日本一獲りにいかんくてどうするん!?

また、初戦敗退!?

勝とうよ!!なにがなんでも勝とうよ!!

勝って、勝ち続けて、日本一獲ってでしか証明できない関大の良さを全国に轟かせようよ!!



私も本気だった。

もう、綺麗事で丸め込むのは無理なほどだった。



私の性格上、争いごとは苦手だ。

でも、私が本気になれたそのスポーツは勝ちか負けが明確になる。

そこで、かつて無いほどに「勝利」に執着した。

このチームは
私を、
こんな私を、本気にしてくれた。




そして、90分が経った時、

関大の日本一への挑戦の終わりと

私とこの大好きなチームとのサヨナラを告げる

ホイッスルが鳴った。




悔しい、寂しい、悲しい

感情はぐちゃぐちゃだった。

そこで、無情にもYouTubeでの配信は終わった。


画面が変わり、無神経に流れる広告を見ながら、
私は溢れる想いを抑えるのに必死だった。



この大好きなチームとのお別れは突然訪れた。

直接、ありがとうも言えないまま突然訪れた。


正直いうと、すぐには実感はわかなかった。


なんなら、負けた気すらしていなかった。


また、もう一度、
紫紺のユニフォームを纏った11人の戦士たちの

あっついプレーを見れるような気がしていた。



でも、後日KISERSの公式YouTubeに配信された
動画を見て、本当に終わったということが現実味を帯びた。


涙をこらえる選手、涙を流す選手たちにつられて
私もつられ涙した。

私が泣くのは違うかな、と思いつつも
溢れる感情を抑えて涙を止めることはできなかった。


言葉に詰まらせながら挨拶する芝山主将。

彼が紡いだ言葉には今シーズンに対する感謝と、
それと同じくらい
来シーズンに向けた激励の言葉があった。


このチームは、このメンバーは、
終わるけど、

関大サッカー部は終わってなんかいなくて、

これからもずっと
この先もずっと

このチームを繋ぎ続けて、今がずっと過去の先頭であり続けることを思い知った。


私は映画館のエンドロールで登場人物たちの"続き"
を考えるのが好きだ。

ストーリーはここで終わっても、彼らの生活や人生は私の知らないところで続いていく。

それを想像するのが好きだ。


でも、この関大の物語にはエンドロールは無い。


しっかりと現として、私のこの目に素晴らしい景色を映してくれる。

そう思えた。




涙を必死に堪えようとする選手が多い中、
どうしても顔を上げられない選手がいた。


3回生のオールラウンダー川島功奨選手。

ポジションは右SB、SH、左SB、SHコンプリートしてるし、
プレーも攻守において大活躍。

体を張った守備ももちろんのこと、

相手が絶対について来れない深い切り返し、
正確なクロス、それでもってキッカーも務めることができる。

そしてなによりタフすぎる。
90分間どころか120分間、パワフルなプレーで相手を翻弄する。

本当に才能豊かで見ていて楽しい選手。


もちろん、この試合どころか今シーズンもチームに大貢献していた。


そんな彼が誰よりも涙を流し、悔しがっていた。


そんな彼に対して軽率に私が「悔しかったよね」とは言えない。


でも、本気で、チームの勝利に貢献したこと、
チームのために流した涙は彼の糧になり続けると思った。


浦和レッズ戦でも見せた
やり切って清々しい涙を流す選手と対照的な
彼の悔し涙は印象に残っている。


本気で悔しがれるということ。

まだまだ強くなれる。ということ。

来シーズン、川島選手がいるから、
絶対に強い、来年も強い。

一緒に日本一めざそう。


そう誓う。



本当に、欲を言うならば
このチームでの日本一が見たかった。


今年の4回生は同級生ということもあり、
やはり少し贔屓目に応援していた部分はある。



このチームが日本一になったところで
私のステータスになるわけでもないし、
私の価値があがるわけでもない。


でも、彼らが本気で目指すその頂点からの景色を一緒に見たかった、と思う。

彼らが悲願の夢を叶えて、喜び合う姿を見たかった、と思うのだ。


彼らの悔し涙ではなく、嬉し涙が見たかった、と思うのだ。



それでも、やっぱり、
1番は本当に感謝の気持ちが大きい。

これは綺麗事なんかじゃない。

このチームに、選手たちに
つられっぱなしの1年だった。

本当にありがとう。



長くなりすぎたので、また別のnoteで今シーズンまとめます!

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