都道府県議会の選挙区定数の配分について

 

 都道府県議会の選挙区について書きたいと思います。具体的には、都道府県議会の選挙区定数の配分です。そんなもの人口比率によって配分されているだけではないか、と思う人もいるでしょう。でも、研究していくうちにわかったのですが、人口比率どおりに配分されていないのです。

 なぜでしょうか。いくつか理由がありますが、理由のひとつとして、政令指定都市の存在です。政令市、あるいは指定都市とも呼ばれます。政令指定都市は、都道府県と同格、同じ権限を保持している市です。そのため、ほとんどの道府県議会では、配当基数よりも少なく定数を配分しています。筆者はそれは問題だと思います。おいおい触れていきたいと思っていますが、さしあたっては、この辺にとどめておきましょう。

   ここで基本的なことに少し触れておきましょう。まず、選挙区の区域ですが、市と郡、区が基本です。ですから、政令指定都市では市全体が選挙区ではなく、区ごとに選挙区が設定されています。

 だだ例外もあります。その市、郡、区の人口が少ないと単独では選挙区を設定できず、隣接する選挙区に合区されます。具体的には、配当基数が0.5人未満の場合、強制的に合区されます。また、0.5人~1.0人未満の場合は任意で合区できます。

 ちなみに配当基数とは、議員一人当たりの人口÷その選挙区区域の人口で出される数値のことです。議員一人当たりの人口は、都道府県の人口÷議会の総定数で出ます。ただ、この定数配分の基本原則は、ある時期からこのルールを逸脱してもよいことになりました。詳しくは別の機会に触れたいと思います。

    この配当基数の全選挙区の整数部分を加算していきます。当然、総定数の数よりも少ないですので、小数点以下の数値が大きい選挙区から繰り上げてゆき、総定数に達するまで行います。個々の選挙区の定数は、このように決められます。

  では誰が、個々の選挙区の定数を決めているのでしょうか。それは、当の都道府県議会議員自身です。選挙区の定数を変更する場合、条例を制定して変更します。法治国家ですので、都道府県議会に限らず、国会や市区町村議会の定数も法律や条例によって決められています。議員自身、つまり政治家が定数の作成過程に関与するのは、当然のことです。ただ都道府県議会には、その前段階、第三者による諮問機関はありません。国会や海外の議会には、あります。

  選挙区の定数を、政治家自身で行うということには、問題もあります。定数が増える場合はいいのですが、定数が減らされる選挙区もあります。パイが減ることは、政治家にとって死活問題です。そうした場合、変更せずに放置されたことも、多々ありました。また、党派的な思惑から放置されたこともありました。

 放置された結果、選挙区間の定数に不平等が発生し、1970年代から1990年代にかけて訴訟が多く起こされました。その多くの判決で、定数を是正するように命じられ、ようやく選挙区間の定数不平等が改善されるという状況がありました。

 また21世紀に入って、多くの道府県で市町村合併、いわゆる平成の大合併によって、市や郡に大規模な区域の変更が生じた結果、道府県議会の選挙区も、区域の変更を余儀なくされた。また、これより少し前から、大部分の議会で、総定数も削減されました。

  このように様々な要因が絡み合って、現在の選挙区定数の状況が存在します。言い換えれば、時系列的な変化が、都道府県議会の選挙区定数にもあるのです。

 さらに都道府県議会の立地も様々です。大都市を抱える都道府県が存在する一方で、過疎に悩む県も存在します。そのため、立地によって都道府県議会ごとに差異が生じているのどうかを比較することも可能です。換言すれば、様々な角度から分析ができるのです。今後、色々な角度から都道府県議会の選挙区定数について、具体的な例を取り上げて、記事にしたいと思っています。

 

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