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かこつが降ってきた

今朝、電車に乗っていたときのことだ。突然、かこつが頭に降ってきた。かこつ…かこつ…かこつ…え、かこつ…?て何やっけ?
脈略もなく、ふいに頭の中に降って湧いた、かこつ。化骨?…いや違う。「こいつは名詞ではない、まごうかたなき動詞だ」と、ぼくの記憶がそう主張する。
かこつ。と口の中でつぶやいてみる。つぶやく?そうだ、つぶやくみたいな意味やっけ?

「好きだ…」ぼくは彼女に背を向けたまま、低い声で、そうかこつ。

…ウ~ンなんか違和感。もちろんアレだ、スマホとかで調べれば一発なんだろうけど、あいにく今朝の通勤電車の乗車率は満員に近く、周りの他人に肘や肩をぶつけてスマホを取り出さしむるほどのパワーは、残念ながらかこつには無い。そうこうしているうちに電車は駅に到着し、人の波にのってバスに乗り換え、会社に出社する頃には、かこつのことなんてもうすっかり忘れていた。

思い出したのは、帰宅する電車の中。頭にかこつが降ってきた、ふたたび。つまりこうだ。行きの電車に置き去ったはずのかこつが、帰りの電車でかつての宿主の後頭部を見つけ(おそらく天井付近に張りついていたのだろう)、車両の揺れに任せて脳天めがけて降ってきた、というわけだ。伏線回収とばかりに。ちくしょうかこつめ。

だが幸い、帰りの電車には多少余裕がある。他人の肩や肘を気にせずスマホを取り出せるくらいには。ただ正直めんどい。かこつが気にはなれど、仕事終わりのだるさを抱えたままパターン認証で画面のロックを解除するのすらめんどい。でも、たぶんここで調べなきゃ、かこつのことなんてもう一生忘れてしまうだろう。なんとなれば、かこつなんて日常生活で使う機会ぜったいないんだから。それはそれでなんだか勿体ない。億劫だけども仕方ない。ちくしょうかこつめ。

そうしてぼくは、検索窓にでかこつと入力した。託つ。そう書くらしい。なるほどなるほど。
①心が満たされず、不平を言う。ぐちをこぼす。
②他のことのせいにする。口実にする。
(goo辞書より抜粋)

…え、それで?
なんだか意味が分かってもピンとこないし、そもそも過去のぼくはそんなピンとこないような単語をどこで知った?ピンともこないのに、なぜ記憶にとどめた?そう考えたら、だんだん腹が立ってきた。仕事終わりで疲れてるし。

だっる。なんかもう今日一日、だっる。
なんならまだ月曜だし、だっる。

ぼくは帰りの電車に揺られながら、かこつにかこつけて、そうかこつ。

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