土岐麻子のライブがエグすぎた

急遽名古屋に行くことにしたのは14日の午前1時くらい。
妻が数時間前の広島クラブクアトロであった土岐麻子のライブに友だちと行ったところ

「本当に凄かった…。なんかもう言葉にならないほど凄かった…。というか高木大丈夫って人が凄い。いや、3人とも凄い。」

と熱弁するものだから、あんまりにも気になって急遽チケットが取れた名古屋公演に行くことにした。

日帰りで行けるのだが、僕も妻もあまり体力がないうえに予定を詰めるとしんどくなるタイプなので、2泊3日のいつものゆったり旅にした。
前日入りしたあと、泊まって帰るパターン。
ちなみに土岐麻子は前日入りしてライブしてそのまま東京に帰ったらしい。
早すぎる…(もしかして普通?)


ちょろっと観光をしたり、妻は論文を書いたりとまぁほどよく旅を楽しみつつ、メインのライブへ。

ライブタイトルは「Sentimental Journey」。
我々もライブに沿って旅をしてきたので、ぴったりのタイトルだ。

開場時間ギリギリに着いたら、かなりのお客さんが待っていた。
座って見れたら嬉しいなぁ〜なんて思いながら入場したら、ちょこっとだけ椅子が空いてたので2人で座った。
ドリンクを引き換え、妻から「広島の公演はこれがこうでよかった…」と事前情報(ネタバレなしで)を頂きつつスタートまでに飲みきった。

開演前に席はかなり埋まり、開演する。





----------以下、公演の内容が含まれます。仙台公演が残ってますのでネタバレは極力控えますが、仙台公演の雰囲気などを楽しみたい方はブラウザバックをお願いします。





暗転したステージに、西原史織(Vn,Vocal)、高木大丈夫(Gt,Vocal)が登壇。

バイオリンとギターで前奏を奏で、その前奏をバックに登壇した土岐麻子。

この時点で雰囲気は最高。心臓の鼓動も落ち着くほどのゆったりとした、でも高揚感で胸は膨らむ不思議な雰囲気。

マイクを通して、大きなスピーカーで聞こえる土岐麻子の声は、今まで聴いたシンガーの中でも技術も表現も、ダントツでよかった。
「上手い」というひと言では片付けることができない。いや、片付けられるのだろうけれど片付けたくない。
ミュージシャン、アーティスト。そんな肩書きを超えて「土岐麻子」であった。

高木大丈夫の弾くギターは、優しさに包まれている。
ガットギターはもちろん、アコースティックの耳に障る嫌な金属音などはひとつも聞こえなかった。
何よりもノリが独特であった。
ジャズ、カントリー、ブルース…?いや、なんだろう…
日本のフォークソングの雰囲気も強く感じる…
グルーヴは楕円で捉えるとよりノリが出てくると思っているのだけど、その要素もしっかり含みつつ日本の独特なノリ方もある…
不思議なギター(弦楽器)を弾くアーティストだと思った。

西原史織のバイオリンは、土岐麻子の声を包みつつ時折しっかりとカウンターで攻めることで存在感が強くある。
ピチカートもリズム心地よく、滑らかに流れるメロディーラインは水のように抜けていく。

約2時間ほどの公演。
MC、10分休憩を挟みつつ、とにかくこのライブを必死に目と耳と感情と思い出に焼き付けた。


----------ここまで公演の感想でした。



ホテルに戻って、妻と感想を話し合った。
もちろん
「とにかくよかった」ということは、前提としてあった。
どの部分がよかったのか、なぜよかったのか、とにかく話し合った。

前述の通り、僕も妻も音楽においてグルーヴを取るのであれば、4拍子の場合「1.2.3.4」というリズムの間を楕円で取ることがいいと思っていた。
間違いとか正解とかはもちろんないのだけれど、なんとなく考えは合致していた。(もちろん曲の部分によってはリズムの取り方を変えたりする)
高木大丈夫のギターは、リズムを楕円で取っているのではないかと感じた。

しかし西原志織のバイオリンはどちらかというとクラシックよりのリズムの取り方であったような気がする。
そして土岐麻子は80年代シティポップ&J-POP&日本歌謡のように、日本独特のリズムで取る。

このように、3人のリズムの取り方は微妙に違うように見えた。
でも、リズムの取り方が違うからと言ってバラバラなわけではない。
微妙なリズムのズレはグルーヴ感を生み出すうえでとても重要なわけで、3人のリズムは微妙にズレつつも調和していた。

とにかく心地よかった。ずっと聴いていられる。
土岐麻子の曲も、高木大丈夫の曲も、カバー曲も。
全てが至高。
時折歌詞と自分の頭に浮かぶ景色を重ねたり、心の目線を別の所へ向けて見てみたり。
本当の"ライブ"とは、これのことだ。
とにかく、僕にとっての"ライブ"はこれだと、確信した。


こんだけつらつら書いておきながら、ボーッと思い出したことがあるので、アンチテーゼ的な感じでおいておく。

細野晴臣(はっぴぃえんど、YMO etc...)が、自身が影響を受けたバンド"Buffalo Springfield"のメンバー"Stephen Stills"の言葉を引用しているのを聞いたことがある。

-Buffalo Springfieldの特徴は何かと聞かれた際に…

細野晴臣「そんなのわからない。アルバムの中でもメンバーのStephen Stillsが書いてたんだけど、

「分析するな。"Something else"(他の何か)だ」
って。」


あぁ、これだ。
何がよかったのか、説明しようとすれば出来なくもない。
でも、しなくていい。
したけど。
この思い出は、これでしまっておこう。

名古屋から帰しの新幹線の中でこれを書いているのだが、ライブ終わりに感じた寂しさはさらに増している。でも家に帰る安心感もある。

あぁ、これが"Sentimental Journey"だ…。
"Sentimental Journey"はずっと続くのだな、もはや日常も"Sentimental Journey"なのではないのか…

そんなことを思いながら、また旅を続けようと思う。
日常も非日常も、すべてを連れながら。

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