「ご持参下さい」を考える我流表記法

言葉との向き合い方

言葉というのは、それが持つ力を信じて使いたいと思う。
だからこそ、言葉が持つ意味を、なるだけ正しく知り、含む意味、連想される事柄を、なるだけ深く理解したい。

そして、言葉は時代とともに変化するということも、頭の片隅に置いておき、絶えず情報を更新したい。

さらに、少し品のない表現だが、揚げ足を取るような、言葉狩りのようなことにならないようにしたい。
言葉は伝われば良いし、何なら本来の意味とは別の意味を、そもそも意味がないものに意味を持たせることもできる。

「ご持参下さい」は不自然?

よく「持参物」や「ご持参下さい」という言葉を目にする。

「持参」は、本来、謙譲語であって、自分自身が持って行くことに使う言葉である。
漢字をみても、「持って参ります。」を、そのまま縮めれば「持参」となる。
古文の世界では、自敬表現として「~参れ」と命令する形で使うこともあったようだ。
古文の世界ともなると、私もよくは分からない。

他方、文化審議会答申の「敬語の指針」(平成19年2月2日)によれば、使っても問題なしという解釈となっている。
要は使い方によって、言葉の機能が違うということだ。
もし、言い換えるならば、「お持ちいただきたいもの」や「お持ちください。」となる。

付け加えると、「下さい」は、物がほしいときに使う。
丁寧な表現として使うときは、「ください」が適切だ。

この答申に当たるまでは、「ご持参ください」の使用は適切でないと考えていた。
「この言葉が正しいのか」を調べることは、とても大切だ。

「させて頂く」の多用

とかく丁寧な表現にしようと「させて頂きます。」という語尾を見かける。
「させて」は、「相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける」ときに使う。
使用が適切か否か迷うならば「いたします。」などの言い切った方が良いだろう。

加えて、「頂く」のように漢字表記するときは、物をもらうときに使う。
丁寧な表現として使うときには、「いただく」が望ましい。

「とき」「ところ」「こと」「とおり」「ため」「とも」

「このとき」「お忙しいところ」「このこと」「そのとおり」「このため」「~するとともに」は、ひらがな表記だ。

特に限定されるときには「とき」を「時」とすることも良いとされている。
「所」はは、場所を示すときに限って使う。
「事」は、「こと」に統一する。
「通り」は、ストリートを示すときや1通り・2通りなどに限って使う。
「為」は、「ため」に統一する。
「共」は、「とも」に統一する。

いずれも、慣用句で漢字表記が一般的な場合は、その慣例を優先する。

「もの」「物」「者」の使い分け

「もの」は汎用性が高い。
「~するものと取り扱う。」などで使う。
「物」は有形のものについて使う。
「者」は人に対して使う。
「資産を有するものは、」という文章で、「者」としないときは、自然人と法人とを包括したい場合になる。

読点を打つところ

細かなことを言えば、何らかのルールはあるのかもしれない。
都度、そのルールに照らしていては大変なので、ある程度、感覚で打っていく。

誤解を生みそうなところでは、必ず打つ。
文章が長くなるときは、意味が切れるところに打つ。
ひらがな、漢字、カタカナなどが続くときは、良きところに打つ。
文頭に置く接続詞のあとには、必ず打つ。
これまでの慣習で打つところに打つ。
「~に限り、」「適宜、」「関し、」「定め、」「~するとともに、」「~しつつ、」「~するため、」「~につき、」「~のほか、」などなど。
「今日は、晴れだ。」など、あまりに短い文章では、打たない。

気になったら調べる

「この表記の違いはなんだろう」「この言葉の意味って何だっけ」といった気になることは調べる。
使いたい言葉が難しいときは、類義語や同義語を調べてみる。
これによって、言葉の幅が広がるし、実は誤用していたことなどの情報も判る。

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