現役ケースワーカーが『箱庭のレミング2話』を見た話

先日、なんとなくAbemaTVでやっている『箱庭のレミング 2話』を視聴した。すると冒頭で、「持ち家と車があるからダメってことですよね?」「私たち家族に死ねっていうことですか?」と何とも聞き慣れたセリフが耳に入った。

一瞬で察した。

私「生活保護だ……………………」


私は新卒で公務員になり、1箇所目で生活保護の部署に配属された。公務員になる前から生活保護担当が1番人気のない地獄部署だとは聞いていた。入庁後、周りの先輩職員には「初めての職場がここなんて可哀想に」「よくメンタルやられる人いるから程々に仕事した方がいいよ」なとど言われたりもした。(ドラマの中で主人公の役人が友人に「だから言ったんだよ…生活保護なんて誰がやっても恨まれる仕事やめとけって……!!」って言われててワロタ。ストレートに言うな)

今でこそ少しずつ仕事に慣れ、暖かい職場環境にも恵まれてなんとか生き残れているが、ドラマを見ている途中謎の緊張感で心臓が張り裂けそうだったし普通に泣いた。


※ここからは2話「私刑倶楽部」のネタバレを含むので未視聴の方はブラウザバックでお願いします。

まず、冒頭は区役所内の生活相談係窓口にて主人公の川村という男性職員が何度目かの生活保護申請の相談に来ているであろう女性に「先日もお伝えした通り…」と説得しているシーンから始まる。保護相談に来た女性の主張はこう。『世帯の所得が最低生活費に満たないから保護を受けたい。車と持ち家は生活のために必要不可欠。それが出来ないということは、うちに死ねと言っていることと同じですよね?』である。

う、うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜1日3回は聞いてるセリフだ。その時の私は内心いつも「分かるよ…!とても分かる…!私も車と持ち家を急に手放せって言われたら駄々こねちゃうもん……ただ生活保護法で決まってるからお客さんにだけ特別な対応はできないんですよぉ(;ω;)」と思っている。

そう、法律で決まっているんです。ドラマ中にも「俺じゃなくて法律を恨めよ…」と嘆くシーンがありますが、それを言ったらお終いなんだよね。我々の仕事は全て法のもとに成り立っているので………。しかしお客さんに怒りの矛先が違うよ、と咎めようとも思いません。それを真摯に受け止めるまでが自分の役目だと思っています。(だからといってあんまり役人を虐めないでね)

しかしながら、川村よ。そのまま突き返すのではなく、他施策の案内ができたのではなかろうか……………(話が飛躍するのでここで止める)

このドラマ、ここから主人公が私刑倶楽部によって地の底に落ちていき、さらに目が離せなくなる。

先日保護相談に来た女性が自殺したというニュースがでる。からのクビ(そうはならんやろ)。それからは住所特定、盗撮、親族へ飛び火……追い討ちで友人と恋人をも失う。今の情報社会では一旦標的になれば私刑倶楽部なんてなくともこれぐらいは余裕と思う。

普段馴染みのない方はこのドラマを見て「情報社会こわ」「川村運が悪かったな…」という感想を抱くだろうが、現役でケースワーカーをしている自分はただならぬ恐怖を覚え、吐きそうになった。"法に則って執務をこなしているはずなのにそれが故に人生が狂ってしまう"ことがあるからだ。これまでも保護申請を受けられず命を落とした事件やネットでの誹謗中傷の実例は多々あるがその魔のコラボ。いや、これ普通にあり得るぞ………。(戦慄)

生活保護従事者には地域によって金額が異なるが、特殊勤務手当というものがある。特殊勤務と称するだけあって、毎日罵声&罵声をお見舞いされたりハイレベルな汚部屋を定期的に訪問するのは日常茶飯事だが、稀に暴行事件や流血沙汰になるなど命がいくつあっても足りない部署なので正直手当は少ないと感じる。

そんな毎日命懸けのスリリングなケースワーカーの仕事を、ついこの間まで学生だったペーペーの我々に任せるとはついに人事も思考が狂っちまったか???

ちなみに私は受給者さんの家に行ったとき突然「見てみて〜!」的なノリで刃物を見せつけられたことがある。普通に恐い。

自分の先輩も川村さんのような目に遭って実際に警察に届け出てるし、同期たちだってみんなの見てないところで辛くて泣いたことがあるって言ってた。


書けば書くほどやべ〜。困っている人ひとたちの力になりたいという志に変わりはないけれど、本当に大変だね。たくさん勉強して知識をつけないといけないし、受け入れてもらうのにも一苦労。これが社会!(小並感)


そして衝撃のラスト。

隣人の男「でもアンタが悪いんだよ。夜中に騒ぐから。」

いや、原因それ〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?!?予想外すぎる。川村さんが夜中に騒ぐ描写あったか?否、伏線なし!www 本編があまりにも恐かったので、夜中にしおりちゃんとお盛んだった川村さんを妬んだ童貞の僻みと解釈することにした。  〜完〜