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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第413回 運命の女神(ヘルダーリン)

Doch ist mir einst das Heil’ge, das am
Herzen mir liegt, das Gedicht, gelungen,
Willkommen dann, o Stille der Schattenwelt !
(だが、いつかひとたび聖なるもの、わが心に詩の業が完成するならば、
 喜んで迎えよう、おお、影の世の静寂を)
 
 ドイツの詩人、フリードリヒ・ヘルダーリン(Friedrich Hölderlin, 1770~1843)の「運命の女神(An die Parzen)」から。女神の恩寵により、自分の詩業が成就するなら、この世に思い残すことはない。神学校で哲学を学んだヘルダーリンは、スピノザの汎神論に強く影響された。
 聖職者の家庭に生まれたヘルダーリンは、神学校を経てテュービンゲン大学で同級のヘーゲルやシェリングとともに学ぶ。卒業後は、家庭教師をしながら詩作を続ける。
 イェーナ滞在中は、イェーナ大学でフィヒテの講義を聴き、シラーやゲーテと知り合った。その後、フランクフルトの銀行家の子女の家庭教師をしていて、銀行家の夫人と不倫関係になる。それを夫が気づいたため、家庭教師を辞したが、夫人との関係は続いた。
 それから2、3年後に夫人は亡くなる。ヘルダーリンはこの頃から心身に変調を来すようになった。
 


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