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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第298回 春の祝祭(クロプシュトック)

Ach, schon rauscht, schon rauscht
Himmel, und Erde vom gnädigen Regen !
Nun ist, wie dürstete sie ! die Erd’erquickt,
Und der Himmel der Segensfüll’ entlastet !
(ああ、早くも激しく音を立てて、天と地に恵みの雨が降る。
地は渇きを癒されてよみがえり、天は満ち満ちていた祝福の重荷から解き 放たれる)
 
 ドイツ近代詩の祖、フリードリヒ・クロプシュトック(Friedrich Klopstock, 1724~1803)の「春の祝祭(Die Frühlingsfeier)」から。1759年に発表されたこの詩は当時の青年たちを熱狂させた。
 ゲーテの『若いヴェルテルの悩み』にこんな一幕がある。
- ヴェルテルとロッテが舞踏会で心ゆくまでいっしょに踊る。そこに雷雨が急に訪れ、やがてやんでいく。若い二人は窓際に立ち眺めている。そこで、ロッテが目に涙を浮かべ、一言「クロプシュトック!」とつぶやく。-
 その名を言っただけで、共通の感情を呼び起こせるほど、クロプシュトックは当時の青年層全体の体験になっていた。
 クロプシュトックはザクセン選帝侯領で法律家の長男として生まれた。イエーナ大学、ライプツィヒ大学で神学を学んだ後、文学の世界に身を投じる。そして、ドイツで初めて〝詩人〟として生涯を送る人になる。それまで詩人を本業とした人はいなかった。


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