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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第394回 荒磯(高見順)

ほの暗い暁の
目ざめはおれに
おれの誕生を思わせる
祝福されない誕生を
 
 昭和の詩人、高見順(たかみ じゅん、本名は高間芳雄、1907~1965)の「荒磯(ありそ)」の第1連。第2連で祝福されない理由が〝私生児〟であることを明かす。日本海の荒磯でひっそりと生まれた<おれ>は、孤独のうちに世を去ろうとしている。この詩は、高見が食道ガンの手術を受けた後、病室で書いた詩集『死の淵より』に収録されている。
 高見は福井県知事の非嫡出子として三国町で生まれた。母は知事が視察で三国を訪れたとき、夜伽を務めていた。生後1年で母と上京し、麻布にあった父の邸宅近所の陋屋で育つ。一高を経て、東京帝大文学部に進む。
 一高時代からダダイスムやプロレタリア文学に傾倒し、同人雑誌に小説を掲載した。卒業後、研究社やコロンビア・レコードに勤務しながら、プロレタリア作家同盟で活動する。1935年に発表した小説『故旧忘れ得べき』が第1回芥川賞候補になり、一躍名を上げた。


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